著者
溝尾 良隆 菅原 由美子
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.300-315, 2000-06-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
32
被引用文献数
6 4

The purpose of this paper is to clarify how and why the conservation of Kurazukuri buildings increased the number of tourists and re-vitalized a shopping street in Kawagoe City, Saitama Prefecture.Kawagoe City is located about 30 Kilometers from the central part of Tokyo with a population in 1998 of 324, 879. Ichibangai Street was planned as an area for craftsmen and merchants about 300 years ago. Since then, Ichibangai Street continued to be the center of commerce in Kawagoe City. However, the center of commerce in Kawagoe moved to the south of the city in the early 1960s. This is mainly because Japanese National Railways and three private railways built terminals there, and supermarkets and department stores moved to or were newly-opened nearby. As a consequence, commercial activities in Ichibangai Street declined.Fortunately, a lot of Kurazukuri style warehouses, houses, and stores with their invaluable historical heritage remained as the original buildings. These buildings were constructed to make them fire-proof structures after the great fire of 1893. Following the advice of external architects, the local administration and the inhabitants have become deeply committed to the conservation of these buildings.The local administration took the following steps: 1) providing a subsidy for the restoration of buildings; 2) enforcing landscape regulations; 3) constructing small parks along the street; 4) laying a more attractive pavement; and 5) burying the electric power lines.Inhabitants of Ichibangai Street organized the Kura-No-Kai (Association of Kurazukuri buildings) for the re-vitalization of commerce and conservation of Kurazukuri buildings. One more important action by the inhabitants was to design the Machinami Kihan (Standards for House Conservation) which is applied in the case of house restoration.Today, many tourists visit Ichibangai Street with the number of people visiting Kawagoe amounting to 3.5 million persons per year. Visitors to the Kurazukuri Museum, for example, increased 3.6 times between 1982 and 1997. Tourists make up nearly 100per cent of the customers at shops in Kashiya Yokocho Street and tourists make up at least half of the customers at almost 40per cent of the shops in Ichibangai and Kanetsuki streets. Between 1975 and 1997, almost 60per cent of the shops changed their function, with restaurants and coffee shops for tourists especially increasing in number.A large increase in consumption by tourists has resulted and shops and bustling streets have been re-vitalized. It follows that the inhabitants gained in confidence to conserve the Kurazukuri buildings and to maintain a landscape featuring a row of well-conserved buildings.
著者
高橋 ともみ 久保 克弘 篠原 由美子 野沢 桃世 吉崎 美紗 早川 博章 岡 夏樹 西崎 友規子
雑誌
2016年度 情報処理学会関西支部 支部大会 講演論文集 (ISSN:1884197X)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016-09-16

本研究は人とエージェントがより良い関係を築くことを目的に、ミラー(同調)効果に着目し、人がエージェントに対して親しみを感じるのに適した同調の割合を調査した。また、個人差を考慮して視点取得による検討も併せて行った。
著者
小原 由美子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.8-21, 2002

ニコルソン・ベイカー著『ダブル・フォールド』は,議会図書館はじめ多くの米国の図書館が,19世紀後半以降の新聞原紙をマイクロフィルム化後廃棄していることに端を発し,図書館の資料保存政策全般を痛烈に批判した書である。マイクロフィルム化・デジタル化よりも現物資料の保存を最優先するよう訴えるベイカーに対し,図書館側は,資料の内容保存と利用者の利便性を考えると,媒体変換は必須であると反論した。その一方,図書館情報資源振興財団(CLIR)は「図書館資料の現物保存タスクフォース」を公表して現物資料の重要性を見直す提言を行った。日本でも書庫不足により現物資料廃棄を行わざるをえない状況にあるが,国立大学図書館協会や医学図書館協会では,廃棄基準の設定や資料の共同収集・分担保存に取り組みつつ,国立保存図書館の設立を模索している。
著者
江原 由美子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.553-571, 2013

本稿の主題は, 現代フェミニズムと家族との関連性を考察することである. まず, 第1に, 現代フェミニズムの家族に関する主要な論点を明らかにする. それは「家族の否定」ではなく, 「性別分業家族」批判であった. 「性別分業家族」においては, 女性の過重な家庭内役割のゆえに, 女性の経済的自立が困難だったからである. 次に, 現代フェミニズムの家族批判の根底にある公私分離規範に関する論点を, 「家族領域」を社会から切り離す公私分離規範批判と, 女性の「身体の自由」権を認めない公私分離規範批判の, 2点で把握し, それらがいずれも, いわゆる「近代家族」への批判につながることを示す. この観点から「近代家族」類型を位置づけると, 「近代家族」とは, 女性の人権を認めない前近代的要素を含んでいる家族類型と位置づけることができる. 最後に, 現代フェミニズムの公私分離規範批判から導かれた論点に関連する家族変動要因を, ハビトゥスの水準と, 社会制度的水準において把握し, 「ジェンダー秩序論」の視点から, 「これからの家族」を考える.
著者
七沢 潔 原 由美子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.42-70, 2018

2017年、NHK放送文化研究所は北米の4つの大学でNHKのアーカイブ番組を使った実験授業を行った。対象はアメリカのプリンストン大学、ハーバード大学、ダートマス大学、カナダのトロント大学の学生136名。「東京大空襲」「満州国」「アメリカの日系人部隊」など戦争に関係した番組や、「サラリーマンのランチタイム」や「東京多国籍街の八百屋」など日本の現在の生活や風俗を伝える番組、「サイボーグ型ロボット開発者」の人間ドキュメントなどが、学生と教員にだけ限定的にネット配信され、学生たちはそれを事前に視聴して授業に臨み、教員のリードで活発な議論が行われた。その結果、少なくとも3つの目的でNHKの番組がアメリカの大学でテキストとして待望されていることがわかった。 1)日本について学ぶことに役立つ 2)日本語学習に役立つ 3)世界共通の社会問題の理解に役立つ 当初日本を研究する知日派の大学教員の授業に役立てば、との観点で始めた実験授業だが、2)、3)のようなより幅の広いニーズの存在に気づかされ、NHK番組の国際発信を活性化する端緒となる可能性も見えた。実験授業の概容を、視察結果を中心に学生のアンケート調査結果を交えて報告し、番組の教育用配信の事業化の現在と未来についても考える。
著者
中原 由美子
巻号頁・発行日
2018-09-21 (Released:2018-09-26)

平成30年度国立大学図書館協会東京地区協会・関東甲信越地区協会合同フレッシュパーソンセミナー, 平成30年9月21日(金), 東京大学総合図書館 会議室1
著者
江原 由美子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.54-69, 1981-12-31 (Released:2009-10-19)
参考文献数
55

シユッツのレリヴァンス概念は、彼の理論において重要な位置を与えられている。だがその理解は非常に困難である。おそらくその一因は、彼が文脈によって意味を変えて使用していることにあると思われる。この観点から本稿では第一にレリヴアンス概念の多様な文脈を整理する。次に、従来のシユッツのレリヴァンス概念についての解釈を手がかりに、レリヴァンスの意味が、 (1) 個人が選択された側面に帰属する属性、 (2) 個人の選択機能、又は選択する作用、 (3) 類型や知識の関連性という相異なる三様に解釈できることを示す。さらにレリヴァンス (体糸) の共有という論点においても、シユッツの記述に矛盾が見出せることを示す。次にレリヴァンスの問題とは何かを考察し、それが、自然的態度においてはけっして問われない、常識的思考そのものを成りたたしめている諸前提を明らかにするという問題であったことを把握する。しかしシユッツがそれを論じる視点は一様ではなく、 (1) 現象学的反省の視点、 (2) 観察者の視点という相異なる視点から考察していたのだと考えられる。ここから先に述べたレリヴァンス概念の三様の解釈の意義を明らかにする。すなわち、彼は、 (1) 日常生活者の視点、 (2) 現象学的反省の視点、 (3) 観察者の視点という三視点のそれぞれに応じてレリヴァンス概念を別の意味で使用したという仮説を呈示する。以上の考察に基づき、レリヴァンス問題の特異性を論じた上で、レリヴァンス論の継承方向を検討する。
著者
鈴木 圭 玉井 康将 浦出 伸治 伊野 和子 菅原 由美子 片山 直之 星野 有
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.9, pp.792-798, 2010-09-15 (Released:2010-11-09)
参考文献数
16

一般にアルコール性ケトアシドーシス(alcoholic ketoacidosis: AKA)はアルコール依存のため食事摂取が不十分な患者が,何らかの理由でアルコール摂取すらしなくなることで細胞内飢餓が生じ,遊離脂肪酸からβ酸化を経てケトン体が産生された結果発症し,消化器症状を主体として医療機関を受診することが多い。我々は,高脂肪食摂取翌朝に意識障害と脱力を来し脳卒中疑いで搬入された,発症様式,症状とも非典型的なAKAの症例を経験したため報告する。症例は61歳の男性。ビジネスホテルに単身滞在中,焼き肉とビールを摂食し就寝した翌朝に四肢脱力を自覚し当院に救急搬入された。来院時意識障害があり,詳細な病歴は不明であったが,原因不明の低血糖とアニオンギャップの開大した著しい代謝性アシドーシス,脂肪肝がみられ,他に代謝性アシドーシスを来す疾患を同定できなかったことからAKAを強く疑い,チアミンと糖質を含む急速輸液を行ったところ,意識障害,代謝性アシドーシスとも速やかに軽快した。後にアルコール依存の病歴と血中βヒドロキシ酪酸の著明高値が判明し,AKAと確定診断した。本例では慢性的な糖質不足状態にあるアルコール依存患者が,短期間に高脂肪食を摂食したことにより多量の遊離脂肪酸が血中に流入し,β酸化を経て産生されたアセチルCoAが過剰となり一気にケトン体が産生され発症したと推察される。即ち,本例からは高脂肪食はAKAのリスクとなることが示唆される。本来,AKAの初期診断は病歴に依存する部分が多いが,意識障害を有する患者では詳細な病歴を聴取できないことも多く,非典型的な発症様式,症状の場合にAKAを疑うことは容易ではない。しかし,本例のごとく原因不明の低血糖にアニオンギャップの開大した代謝性アシドーシス,脂肪肝の合併がみられた際にAKAを鑑別診断に加えることは,救急医にとってきわめて重要と考えられる。
著者
菅原 由美子 飯塚 千晶 土居 一哉 松﨑 研一郎 長岡 正範
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.88-97, 2021 (Released:2021-04-13)
参考文献数
15

【要旨】 症例は84歳男性で、心原性脳梗塞後に繰り返し他人を自分の家族・友人と誤認した。視力・聴力は正常、視野障害や半側空間無視を認めなかったが、担当のリハビリテーション職員の顔を覚えられず、他患者の面会者やリハビリテーション職員を自分の家族・友人と繰り返し誤認し、その誤りに気付かなかった。長谷川式認知症スケールは25/30点。視覚による物体失認を認めず相貌認知では、家族や有名人の熟知相貌識別に重度の障害、未知相貌の異同弁別・同時照合は中等度障害を認めたが、相貌の独自性の認識を求めない課題である表情の叙述、性別・老若の判断は比較的良好であった。家族・友人の人物意味記憶は保たれており、連合型相貌失認に似ているが、人声失認を合併している点が一般的な連合型相貌失認とは異なっていた。MRI病変は、右後頭・側頭葉でなく、視覚(顔)だけでなく聴覚(声)を含む多モダリティー人物認知障害(multimodal people recognition disorders)が生ずるとされる右前側頭葉を含む前頭・側頭葉に限局した。この相貌認知障害に加えて、右前頭葉が側頭葉に及ぼす探索(モニター)機能が障害されていることも本症例の誤認に関与している可能性がある。
著者
澤畠 康仁 小峯 一晃 比留間 伸行 伊藤 崇之 渡辺 誓司 鈴木 祐司 原 由美子 一色 伸夫
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.587-594, 2008
被引用文献数
4

We investigated the relationship between viewer comprehension of a TV program and the direction of his or her gaze in a real experimental TV educational program involving 26 elementary schoolchildren. The aim was to observe the correlation between TV program comprehension and entropy of gaze distribution. Gaussian Mixture Models (GMM) are estimated using statistical methods and assumed to represent the distribution of many subjects' gaze. The results indicate that variances in gaze direction tended to be lower for scenes for which the subjects had better comprehension. The tendency was further noticeable after keywords were uttered that were related to the answers of correponding questions. A gaze-model-estimation method and the theretical accuracy are also described in the paper.
著者
江原 由美子
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.20, pp.13-24, 2007
被引用文献数
2

The subject of this paper is to consider the influence of Gender Free Bashing (GFB) on present-day Japanese society. GFB means that there are certain political groups which oppose a gender-equal policy in Japan. Those who advocate GFB think that people who use words such as ‘gender’ or ‘gender-free’ are extremists who deny the existence of natural sex difference and family. Past researches has shown that GFB had influenced many young men who had supported nationalistic view. In this paper, I try to show the influence of GFB from the viewpoint of various people in connection with GFB. And I also try to show that the main aim of GFB is to achieve a invisible change in gender-equal policy through a supply of voluntary alignment of a member of administrative occupation.
著者
小寺 洋一 石原 由美子 武藤 大志郎 黒木 健
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 = Journal of the Japan Society Waste Management Experts (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.35-43, 2008-01-30
参考文献数
21
被引用文献数
1 3

既存の廃プラスチック類の油化技術および油化リサイクルの進展を阻害した要因を分析し,油化リサイクルの普及に必要な,次世代型油化技術の基本的要件の調査研究を行った。従来の主な油化技術はバッチ式タンク反応器をもつ小規模油化プラントによるもので,炭化物障害による処理能力の不足から油化事業は経済的に成立困難であった。廃プラスチックの発生量・流通量の実態調査と試算から,油化リサイクル普及に必要なプラントの仕様・性能は,油化能力日量3~7ton,装置コストは処理量1tonにつき0.5億円,油化コスト約40円/kgであった。既存技術は,日量1ton程度と過少かまたは,日量20ton以上の過剰設備で,いずれも企業の事業規模に適合しなかった。油化リサイクルの促進には新型式反応器の開発,実用化が必要で,その基礎となる事業性と技術的鍵となる反応器の伝熱効率の評価を通じて,次世代型油化技術の具備すべき基本的要件を明らかにした。