著者
水野 直治 堀江 健二 水野 隆文 野坂 志朗
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 = Journal of the science of soil and manure, Japan (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.529-534, 2001-08-05

超ニッケル集積植物であるタカネグンバイThlaspi japonicumは植物体中の多くの成分含有率が大幅に変動する植物である。超塩基性岩質土壌で生育したタカネグンバイの葉身中のニッケルは1553mgkg-1と高いが、カルシウム含有率は2000mgkg-1と低くなるなど他の植物に見られない特徴がある。また、植物体中のニッケル化合物は結晶として存在することが明らかになった。これらの結果はつぎのとおりである。 1)超塩基性岩質土壌のタカネグンバイのカルシウム含有率はニッケルが検出されない安山岩質土壌で生育したタカネグンバイのほぼ1/5であった。また、この植物は亜鉛、銅の含有率が高く、特に安山岩質土壌の植物体中亜鉛含有率は一般植物の約10倍に達した。 2)植物体中のニッケル化合物は棒状の結晶体で、特に表皮細胞や導管内に存在する。気孔周辺では多量の棒状結晶が扇状に分布する。 3)ニッケル化合物の結晶は室温で乾燥した植物体でも観察されるが、70~80℃以上で乾燥した試料では消失することから、結晶水な持つ化合物である。 4)安山岩質土壌で生育したタカネグンバイのカルシウム含有率は10000mgkg-1と高いが、ニッケル化合物の結晶は観察されない。 5)超塩基性岩質土壌と安山岩質土壌を混合した土壌で育てた植物体中のカルシウム含有率は10000mgkg-1と高くなるが、ニッケル含有率は255mgkg-1と低くなる。しかし、ニッケル化合物の結晶は観察される。 6)ニッケル含有率の高い(100~400mgkg-1)他の植物では、植物体内にニッケルの結晶を観察できなかった。
著者
坂 志朗
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
日本エネルギー学会機関誌えねるみくす (ISSN:24323586)
巻号頁・発行日
vol.96, no.3, pp.331-335, 2017-05-20 (Released:2018-03-30)
参考文献数
12

Global warming and depletion of fossil fuels are recently causing many problems. Under such a situation, a special attention has been paid to plant biomass for useful energy and chemicals. Therefore, in this study, phylogenic evolution and diversity of lignin in various biomass species in plant kingdom were first introduced so as to discuss topochemistry of lignin in plant cell walls such as chemical structure and distribution of lignin. In addition, chemical composition of various plant species on the earth were introduced to characterize taxonomically different biomass species. The lignocellulosics were then defined from a viewpoint of a role of lignin in plan kingdom.
著者
坂 志朗 宮藤 久士 河本 晴雄 石山 拓二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

固体バイオマスは石油や天然ガス等と比較してかさ高く、輸送や貯蔵等の取り扱いには不便である。このため、林地残材や廃木材などの多くが未利用のまま廃棄されており、これらの有効利用が望まれる。一方、超臨界流体は新たな化学反応場として注目を集めている。物質は温度と圧力条件により、気体、液体、固体で存在するが、臨界点を超えると超臨界状態となり、気体分子と同等の大きな分子運動エネルギーと液体に匹敵する高い密度を兼ね備えた高活性な流体となる。また、超臨界流体では化学反応の重要なパラメータであるイオン積や誘電率を温度、圧力によって大幅に制御できる。そこで本研究では、超臨界流体のもつ特異性を活用して、バイオマス資源をバイオアルコールに可溶化させることで、新規な液体バイオ燃料を創製することを試みた。これによってかさ高く取り扱いにくい固体バイオマスを、取り扱いやすく貯蔵しやすい液体バイオ燃料に変換することが可能となる。すなわち、各種超臨界アルコールの温度、圧力、処理時間と液化物への変換率の相関について検討し、超臨界流体による最も効果的な高効率液化条件を見い出し、アルコール可溶部を液体バイオ燃料として分離回収する方策を検討した。その結果、メタノール、エタノールおよび1-プロパノールのような低分子量のアルコールでは、350℃、20-30分の処理で95%程度液化物が得られた。一方、1-オクタノールや1-デカノールのような比較的高分子量のアルコールでは、350℃、数分までの処理で液化がほぼ完了した。しかし、液化物の分子量が大きく、液体燃料としての利用には何らかの付加処理による低分子化が必要であることが判明した。本液化機構については、ほぼその全容が明らかとなり、今後アルコール可溶部の液体バイオ燃料としてのポテンシャルを明らかにして行く。
著者
河本 晴雄 坂 志朗
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

木質バイオマスからCOとH_2(合成ガス)を製造することができれば、従来天然ガスベースで行われている触媒での変換を組み合わせることで、現在石油より製造されている燃料、ケミカルスを木質バイオマスより製造することが可能になる。本研究課題は、一番のネックとなっているクリーンガス化(特にCO生産)に着目したものである。平成22年度の研究では、以下の成果が得られた。木材多糖より生成する代表的な揮発性熱分解物であるレボグルコサン、グリコールアルデヒド、ヒドロキシアセトン、蟻酸などはコーク(気相での炭化物)を生成することなく、CO、H_2、CH_4へと変換されることが昨年度の研究で示された。本年度は、これらのガスへの変換機構について検討した結果、水素の引き抜きにより生成するラジカル種の崩壊(β-開裂、α-開裂)による経路が重要な機構であることが示唆された。また、これらの熱分解物をガス状物質として気相に保つことで、脱水反応やグリコシル化反応などの酸性条件で進行する反応が抑制されたが、これについては、これらの反応を触媒する水酸基間の水素結合が気相では抑制されることによる機構が提案された。さらに、気相で効率的にCOとH_2へと変換するためには、本研究で使用してきたPyrexガラス管製の反応器の最高温度である600℃よりも高温での反応、あるいはラジカル生成を目的とした触媒の利用が有効であることが示された。これらの研究成果を基に、2台の管状炉を用いることで熱分解物を与える一次熱分解過程とこれら一次熱分解物の二次分解過程を異なった温度で加熱でき、なおかつ二次分解過程を触媒を作用させながら1000℃までの高温域で検討可能な二段階加熱装置を設計・試作するに至った。