著者
坂本 優紀 渡辺 隼矢 山下 亜紀郎
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.43-57, 2020 (Released:2021-02-28)
参考文献数
20

本稿では,長野県上伊那地域でみられる筒系噴出煙火の三国を地域文化として捉え,三国の伝播と利用形態の変容を明らかにした。伊那谷における三国は江戸時代に三河地方から伝わったとされ,各地域の神社の祭りで奉納されるようになった。現代でも駒ヶ根市以南では,主に神社の秋祭りで奉納され神事としての役割を担っている。第二次世界大戦後になると三国の利用地域が拡大し,それまで三国の北限であった駒ヶ根市より北にある宮田村と箕輪町で三国が放揚され始めた。宮田村では1962年に在来の祭礼に組み込まれる形で三国が奉納されるようになった。当初は祭礼を盛り上げることが目的であったものの,現在では神事としての意義づけがされている。一方,箕輪町では2000年代に地域イベントで放揚され始め,現在も神事としての役割はない。このように三国の拡大過程においてその意義づけは対象地域ごとに異なり,各地域それぞれの選択と解釈がなされていることが明らかとなった。
著者
坂本 優紀 池田 真利子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p>1.研究背景と目的</p><p></p><p> 観光庁の政策と関連し,東日本大震災後よりインバウンド観光客数が増加していることは周知の事実である.2020年にはインバウンド観光客数4,000万人を目標に掲げ,また国内旅行消費額における同割合が2019年で17%に達している現状を考慮すると,観光産業における比重は大きい(矢ケ崎2020).こうしたインバウンド観光客を対象に,近年,観光庁が積極的に取り組んできたのが夜間経済支援事業である.「夜間帯を活用した観光コンテンツの造成」(2020年3月)では全国13事業体の取り組みが報告されたが,その多くは東京を中心とした都市部で実施されている.夜間経済に関しては都市部と地方部の格差が指摘されており(池田2017),こうした事業が今後さらに地方部へと拡大していくことが期待される.そこで本発表では,現在までの観光動態を踏まえつつ,地方部におけるインバウンド観光客の動向を夜間経済の実態とともに捉えることを目的とする.その際,インバウンド観光客増加に伴う地方の経済再編の鍵としての音楽に着目する.</p><p></p><p>2.インバウンド観光客の動向</p><p></p><p> 2019年の都道府県別インバウンド観光客の割合を日本政府観光局統計資料で確認すると,東京都(28%),大阪(16%)と都市圏が多い.一方,三大都市圏を除いて集計すると,北海道(24%),沖縄県(16%),福岡県(11%)と続く.観光客の国籍別割合ではアジア地域が多く,それ以外はアメリカとオーストラリアからの観光客が多い.国内の訪問地域は国籍別に異なる傾向を示しており,本発表で注目するオーストラリア人観光客は,北海道(32%)と長野県(15%)が多い.北海道と長野県が上位となる理由として,冬季のウィンタースポーツ需要がある.彼らは,冬季のみ来日し,スキー場周辺で長期滞在することから,スキーやスノーボードを楽しむだけでなく,アプレスキー(スキー後の観光アクティビティ)としてナイトライフも重要視する傾向がある.特に冬季にオーストラリア人観光客が来訪する地域では,海外地域と同様に夜の飲食店が集積し,音楽関連施設(クラブおよびライブバー)の立地もみられる.他方で,ウィンタースポーツの特性と併せて,地方の夜の観光コンテンツは季節性の高いものが多く,ホスト社会である地域社会との関係性において検討の余地がある.</p><p></p><p>3.白馬村における夜間経済と音楽</p><p></p><p>白馬村資料によると,2019年の村内外国人旅行者延宿泊数は約28万人であり,国別ではオーストリアが約60%と過半数を占める.月別では1月(41.7%),2月(34.4%),3月(8.7%),12月(7.5%)と,年間旅行者数の92.3%が冬季に集中する.特にオーストラリア出身者の訪問は2005以降に顕著に増加した.白馬村のクラブやライブバーは,オーストラリア人観光客の訪問を機に始まったと考えられ,リゾート開発された「エコーランド」およびその周辺に分散して立地する.そこで,本シンポジウムでは,現地・オンライン調査に基づき,クラブやライブバー等の音楽関連施設の立地状況や営業形態を報告し,白馬村のゲスト社会においてそのインフラが支えられる夜間経済の実態を通常であれば旅行者数が大幅に減少する夏季の運営状況とともに報告する.目下,COVID19により冬季観光の先行きが不透明ななか,ホスト社会の観光ディスティネーションとしての重要な意味を担っていたウィンターリゾートが地域としてどのような戦略を取るのか,あるいは音楽を通して地域が日本人および外国人社会といかに関連し,新しい経済を形作るのか,当日はフィールド調査と事例報告に基づきながら既存の枠に囚われずに議論を展開する。</p><p></p><p>文献</p><p></p><p>池田真利子2017.世界におけるナイトライフ研究の動向と日本における研究の発展性.地理空間10(2):67-84.</p><p>矢ケ崎紀子2020.訪日外国人旅行の意義・動向・課題.国際交通安全学会誌45(1):6-17.</p>
著者
川添 航 坂本 優紀 喜馬 佳也乃 佐藤 壮太 渡辺 隼矢 松井 圭介
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.47-62, 2018

本研究は茨城県大洗町におけるコンテンツ・ツーリズムの展開に注目し,ツーリズム形態の転換に伴う観光空間への影響,及びその変容の解明を目的とした。大洗町は観光施設を数多く有する県内でも有数の海浜観光地であり,2012年以降はアニメ「ガールズ&パンツァー」の舞台として新たな観光現象が生じている地域である。大洗町においては,当初は店舗・組織におけるアニメファンへの対応はまちまちであったが,多くの訪問客が訪れるにつれて,商工会の主導により積極的にコンテンツを地域の資源として取り入れ,多くのアニメファンを来訪者として呼び込むことに成功した。宿泊業においては,アニメ放映以前までは夏季の家族連れや団体客が宿泊者の中心であったが,放映以降は夏季以外の1人客の割合が大きく増加するなど変化が生じた。コンテンツ・ツーリズムの導入によるホスト・ゲスト間の関係性の変化は新たな観光者を呼ぶ契機となったことが明らかとなった。
著者
坂本 優紀 渡辺 隼矢 山下 亜紀郎
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.43-57, 2020

本稿では,長野県上伊那地域でみられる筒系噴出煙火の三国を地域文化として捉え,三国の伝播と利用形態の変容を明らかにした。伊那谷における三国は江戸時代に三河地方から伝わったとされ,各地域の神社の祭りで奉納されるようになった。現代でも駒ヶ根市以南では,主に神社の秋祭りで奉納され神事としての役割を担っている。第二次世界大戦後になると三国の利用地域が拡大し,それまで三国の北限であった駒ヶ根市より北にある宮田村と箕輪町で三国が放揚され始めた。宮田村では1962年に在来の祭礼に組み込まれる形で三国が奉納されるようになった。当初は祭礼を盛り上げることが目的であったものの,現在では神事としての意義づけがされている。一方,箕輪町では2000年代に地域イベントで放揚され始め,現在も神事としての役割はない。このように三国の拡大過程においてその意義づけは対象地域ごとに異なり,各地域それぞれの選択と解釈がなされていることが明らかとなった。
著者
佐藤 壮太 渡辺 隼矢 坂本 優紀 川添 航 喜馬 佳也乃 松井 圭介
雑誌
筑波大学人文地理学研究 = Tsukuba studies in human geography
巻号頁・発行日
vol.38, pp.13-43, 2018-04

本研究にあたり,2016~17年度科学研究費(挑戦的萌芽研究)「聖地共創時代におけるオタクの癒し空間に関する応用地理学的研究」(研究代表者:松井圭介)の一部を利用した.
著者
喜馬 佳也乃 佐藤 壮太 渡辺 隼矢 川添 航 坂本 優紀 卯田 卓矢 石坂 愛 羽田 司 松井 圭介
雑誌
筑波大学人文地理学研究 = Tsukuba studies in human geography
巻号頁・発行日
vol.38, pp.45-58, 2018-04

本研究には平成28年度科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究:課題番号16K13297)の一部を利用した.
著者
山室 信一 菊地 暁 坂本 優一郎 谷川 穣 藤原 辰史 早瀬 晋三 早瀬 晋三
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

専ら時間軸上で構築されてきた従来の学的パラダイムを空間軸に沿って見直し、これまでの空間把握の営みの成果を取捨選択しつつ、人文・社会科学における諸概念を再構成していくための基底的研究を進めた。文献会読、フィールドワーク、個別研究を通じて、政治学・経済学・農政学・地政学や、景観・海域・宗教・戦争で問題とされた空間に関する思想や実践のありかたを明らかにしつつ、従来前提とされていた諸概念を再検討した。
著者
坂本 優 木村 元一 黒沼 昭宏 宮川 直子 村山 弘
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, 1993-02-01
被引用文献数
1

測定する部分の直径4mm以外はIPを黒く塗って測定した結果、散乱線含有率が低下した。強いX線が照射された場合はレーザー光が散乱し、測定している近傍から出る発光があると報告されているが、そうでない場合も同じ現象が起きていると示唆される。純粋に散乱線含有率を求めるのであれば、蛍光量計を使用した方が容易で値も真の値に近い。CR法では散乱線以外の因子も付加されるのでグリッドの評価には不向きである。しかしCR画像の評価を行う上では、直接線以外の散乱線、システムノイズ等は画像を劣化する因子であるとすると、実際に画像が作られるのと同じシステムで測定した値が重要であろう。尚ここで述べた散乱線含有率は本来の定義から外れているが適当な用語が無く画像上の散乱線も含む直接線以外のノイズが含まれる割合として用いた。