著者
藤原 辰史
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.26, no.12, pp.12_28-12_31, 2021-12-01 (Released:2022-04-22)

コロナ禍の中で人文社会科学の担い手たちの発言が目立った。歴史学も例外ではない。たしかに、歴史学研究者が他の時代の感染症を紹介したり、現在と比較することも有意義である。だが、本来、このような全般的危機の状況においては、何が起こったかよりも、何が隠蔽されたのか、何が強調されなかったのか、という方が重要だと思う。新型コロナウイルスによる感染爆発以降、新聞では感染者と死者が毎日記されるようになったが、では、それ以前から、コロナよりも多い自殺者や孤立死の人数はどれほど意識されてきただろうか。以前からあった構造的暴力との関連を無視しては、今回のパンデミックの位置づけを掴み損なってしまうと考える。
著者
藤原 辰史
出版者
京都大学図書館機構
雑誌
静脩 (ISSN:05824478)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.13-16, 2006-06
著者
山室 信一 小関 隆 岡田 暁生 伊藤 順二 王寺 賢太 久保 昭博 藤原 辰史 早瀬 晋三 河本 真理 小田川 大典 服部 伸 片山 杜秀
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究においては、女性や子ども更には植民地における異民族までが熱狂をもって戦争に参与していった心理的メカニズムと行動様式を、各国との比較において明らかにすることを目的とした。そこでは活字や画像、音楽、博覧会などのメディアが複合的に構成され、しかも複製技術の使用によって反復される戦争宣伝の実態を明らかにすることができた。そして、このメディア・ミックスを活用する重要性が認識されたことによって、外務省情報部や陸軍省新聞班などが創設されることとなった。戦争ロマンの比較研究から出発した本研究は、戦争宣伝の手法が「行政広報」や「営利本位の商業主義」に適用されていく歴史過程を明らかにすることによって、総力戦という体験が現代の日常生活といかに直結しているのかを析出した点で重要な成果を生んだ。
著者
藤原 辰史
出版者
京都大学図書館機構
雑誌
静脩 (ISSN:05824478)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.13-16, 2006-06
著者
小野塚 知二 藤原 辰史 新原 道信 山井 敏章 北村 陽子 高橋 一彦 芳賀 猛 宮崎 理枝 渡邉 健太 鈴木 鉄忠 梅垣 千尋 長谷川 貴彦 石井 香江 西村 亮平 井上 直子 永原 陽子
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2022-06-30

野良猫の有無とその消滅過程に注目して、人間・社会の諸特質(家族形態、高齢化態様と介護形態、高齢者の孤独、猫餌の相対価格、帝国主義・植民地主義の経験とその変容、動物愛護思想、住環境、衛生意識、動物観など、従来はそれぞれ個別に認識されてきたことがら)を総合的に理解する。猫という農耕定着以降に家畜化した動物(犬と比べるなら家畜化の程度が低く、他の家畜よりも相対的に人間による介入・改変が及んでいない動物)と人との関係を、「自由猫」という概念を用いて、総合的に認識し直すことによって、新たに見えてくるであろう人間・社会の秘密を解明し、家畜人文・社会科学という新しい研究方法・領域の可能性を開拓する。
著者
藤原 辰史
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

伊藤永之介の描いた東北地方の農村分析によって、わたしは、近代日本の開発政策におけるある重要な性質について明らかにすることができた。それは、開発を進める日本政府が、単に、農村住民の生活世界を破壊しただけではなくて、農村内外の非合法的な世界に対する農村生活者の柔軟な対応力に頼っていた、という点である。たとえば、農村住民たちは、開発政策と不況で苦しむなかで、非合法でどぶろくを作り、販売して苦境を凌いだり、軽犯罪をおかしてわざと逮捕され、一時的に苦境から脱出したりしていた。伊藤文学は、いかに農村住民たちが日本のダイナミックな開発政策を生き延びたのかについて、生き生きとかつコミカルに描いているのである。
著者
山室 信一 菊地 暁 坂本 優一郎 谷川 穣 藤原 辰史 早瀬 晋三 早瀬 晋三
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

専ら時間軸上で構築されてきた従来の学的パラダイムを空間軸に沿って見直し、これまでの空間把握の営みの成果を取捨選択しつつ、人文・社会科学における諸概念を再構成していくための基底的研究を進めた。文献会読、フィールドワーク、個別研究を通じて、政治学・経済学・農政学・地政学や、景観・海域・宗教・戦争で問題とされた空間に関する思想や実践のありかたを明らかにしつつ、従来前提とされていた諸概念を再検討した。