著者
小林 幸子 坂本 元子 飯淵 貞明 内田 雅人 三橋 洋子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
no.40, pp.107-116, 2000-03

朝食摂取が知的作業に及ぼす影響をみる目的で実験をした。女子大生18名を対象に,適正食および不適正食の朝食を,同一人に交互に摂取させ,昼食前に知的作業を実施した。また知的作業と同時に,注意の持続性,集中力,精神的耐久性をみるためにクレペリンテストも実施した。朝食の給与は,女子大生の1日の平均摂取エネルギー量を1,500kcalと考え,その約30%を朝食とし,500kcalを適正食,100kcalを不適正食とした。朝食の食材は大学で調達し,秤量区分けした各食材を実験前日に被験者に渡し,実験当日の朝8時までに摂取させた。前日の夕食は午後9時までに済ませ,それ以降の飲食は禁じた。知能テストは田中式知能検査様式Bのテストから3種(置換,異同弁別,抹消の各問題)に計算問題,創造性問題を加えた5種類を平成10年10月20,21日,27,28日に実施した。置換問題は「図形記号に働く知覚速度と記憶の能力」「視覚的弁別あるいは判断の速さ,正確さと記憶の確かさ」をみる。異同弁別問題は「記憶・注意力に関係する視覚体制の確立度」「短期記憶と注意の維持の確かさ」をみる問題。抹消問題は「視覚的弁別の確かさと判断・反応の速さ」「注意の持続,弁別・判断・反応の速さ,確かさ」をみる問題。計算問題は「演算処理の正確さ,速さ」をみる。創造性問題は「拡散的思考の豊かさ,柔軟な思考」をみる。適正食群において視覚的弁別の確かさ,判断・反応の速さ,記憶・注意力・演算処理の正確さ,速さ等に有意に高得点がみられた。クレペリンテストの評価は,朝食の適,不適食の摂取が短期間では行動のバランスを乱すことや,心身の不安定に影響していないと思われる。
著者
池上 幸江 山田 和彦 池本 真二 倉田 澄子 清水 俊雄 藤澤 由美子 由田 克士 和田 政裕 坂本 元子
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.285-302, 2008-12-10
被引用文献数
3 7

食品成分表示・栄養教育検討委員会ではこれまで栄養成分表示に関する調査を行い,報告書として発表し,また栄養成分表示や健康強調表示に関するシンポジウムなどを開催してきた。前期の委員会では栄養成分表示と健康強調表示に関する意識調査を多様な対象者について行った。今期はこの調査結果を以前の調査と比較しながら,報告書としてまとめることとした。また,今後は新たな調査も加えて,栄養教育の観点から栄養成分表示や健康強調表示のあり方について,一定の見解をまとめた。本調査では,栄養成分表示,健康強調表示については,特定保健用食品や栄養機能食品,「いわゆる健康食品」について,認知,利用,情報源などについて調査した。その結果,<br>(1) 栄養成分表示は広く見られており,健康維持や増進のために利用されている。しかし,現状の表示は分かりにくく,また対象食品が限られていることから,消費者は改善を望んでいる。これらの結果は前回調査と同様であった。<br>(2) 特定保健用食品の認知度はきわめて高く,利用もされていた。とくに若い世代,学生での認知や利用が高いが,高齢者や生活雑誌読者での利用は低かった。他方,関心のある保健の用途は「体に脂肪が付きにくい」や「お腹の調子を整える」,「腸内環境を整える」などであった。しかし,保健の用途の関心と成分の関連には十分な認識がなく,消費者への情報提供が十分ではないと思われた。<br>(3) 栄養機能食品に対する認知や利用は特定保健用食品に比べると低かったが,世代間の傾向は(2)の特定保健用食品と同様であった。<br>(4)「いわゆる健康食品」の利用については特定保健用食品の利用とは異なる傾向を示した。すなわち年齢階層による差異が少なく,高齢者による利用も高く,特定保健用食品とは異なっていた。<br> 「いわゆる健康食品」に関する情報源はテレビや知人・友人からのものが多く,科学的な根拠の入手が困難な状況にあることを反映している。今後「いわゆる健康食品」の有用性や安全性の確保についてどのような制度を作るかが課題と思われる。
著者
坂本 元子 杉浦 加奈子 香川 芳子 池上 幸江 江指 隆年 倉田 忠男 斎藤 衛郎 鈴木 久乃 八尋 政利 吉池 信男
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.311-317, 2001-10-10
被引用文献数
5 1

食品に含有する栄養成分についての表示が国際的な流れの中で, 急速に, また複雑な形で市場に出回ってきている。そのため, 厚生労働省では「栄養成分表示基準制度」を平成8年に発足し, 国民の普及啓発がすすめられている。食品表示制度の発足と市場にあふれる食品表示情報に対し, 消費者はどのような対応をし, どのように活用しているのか, さらに表示の内容, 方法, それに対する意識について調査をし, 消費者の現状について検討した。表示があることは約70%の人が認知しているが, 毎日の使用はまだ低率である。表示栄養素のニーズは, 主要栄養素を中心に女子ではエネルギー, 脂肪が多く, 男子ではミネラル類が多い。しかし, 日本人に不足している栄養素, カルシウムや鉄分, 過剰なもの, 脂肪やコレステロールについては表示へのニーズが高く見られた。表示の活用目的では男女, 年齢を問わず, 健康上の理由や食べ物に注意が必要なときが多く, 健康意識の高まりや健康維持のために使用を目指す人が多く, とくに高齢者層に多く見られている。栄養成分表示の利用について主要なポイントは,「自分の必要量がわからない」ために, どれくらいとっていいかが不明であるという指摘が見られた。今後の表示内容・方法の検討に重要な示唆となるであろう。
著者
石川 香子 坂本 元子 宇田川 孝子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.67-81, 2005-03-31

Recent health problems are mainly unbalanced nutrients intake, irregular food intake due to changes of daily life style and disappeared healthy Japanese food culture. On the other hand, according to food balance sheet, the self sufficient rate of food has been maintaining lower level by the over flow of imported foods from the outside countries. Under these situations, Government legislates on "Shokuiku kihon-law (Draft) " and several ministries such as The Cabinet Office, The Ministry of Health and Welfare and Labor, the Ministry of Agriculture, Fisheries and Forestry and The Ministry of Education, Sports and Science will be wrestled with the Law. In this study we discussed about the contents of "Shokuiku kihon-Law (Draft) " which will be legislated by the Government because the educations related to the food and nutrition is the most important role and responsibility of Dietitian. We need to know what responsibilities will be given to Dietitian in this law. We also investigated through questionnaire about how "Shokuiku" is planned in each prefectural Dietetic Associations as their new criteria among 47 prefectures. The results of this survey will be discussed in this study.
著者
伊藤 善也 奥野 晃正 村上 優利香 内山 聖 岡田 知雄 坂本 元子 梁 茂雄 衣笠 昭彦 貴田 嘉一 大関 武彦 本田 悳 村田 光範
出版者
日本小児保健協会
雑誌
小児保健研究 (ISSN:00374113)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.752-756, 1996-11-30
参考文献数
11
被引用文献数
26

平成2年度厚生省身体発育調査結果から得られた身長別体重表を基礎資料として身長に対応する平均体重を求めた。さらに各身長と平均体重の二次回帰分析により体重の身長への回帰を二次相関式として表した。その二次回帰式は男児ではy=1.83×10^<-3>x^2-0.071x+4.43,女児ではy=2.34×10^<-3>x^2-0.157x+7.71(y:標準体重(kg),x:実測身長(cm))である。この二次回帰式を標準体重を表わす標準身長体重曲線とし,これに肥満度?30%,+20%,+15%,-15%と-20%の曲線を加えたチャートを肥満度判定用に作成した。この肥満度判定チャートを用いれば視覚的に容易に肥満度を判定できる。また経過観察や教育指導用の材料として用いることができる。
著者
坂本 元子 藤沢 由美子 石井 荘子 小林 幸子 川野辺 由美子
出版者
和洋女子大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

生体防衛反応に及ぼす無機質・微量栄養素欠損の影響を検討する目的で、栄養素としてマグネシウム(Mg)をとりあげ、Mg欠乏ラットを用いて検討を行った。初年度はMg欠乏時の補体系の動態を、2年目はMgのmarginal欠乏状態時及び欠乏初期の補体系の変動を観察した。更に3年目はMg欠乏時の免疫応答能について検討した。いずれもSD系の雄ラットを用い、Control食(Mg:73ppm)、Mg欠乏食(Mg:10ppm)及び2年目は低Mg食(Mg:30ppm)で飼育し実験に供した。補体系の検討は各飼料で3週間飼育後回復食を投与、各週毎の血中補体C3濃度、補体溶血活性(CH50)等を測定した。Mg欠乏初期の検討は、欠乏食飼育0、1、2、3、5、及び7日目の血液を同様に実験に供した。免疫応答能の検討では、欠乏食飼育1、2週目の脾臓及び腹腔マクロファージ(Mφ)を用い、マイトジェン(ConA、LPS)刺激による幼若化反応及びサイトカイン(IL-1、IL-2等)産生能を検討した。補体系の動態はC3濃度及びCH50がMg欠乏食飼育により著明な上昇を示し、この変化はMgの補充により回復した。また、Mg欠乏状態の程度が強くなるに従ってC3濃度及びCH50は上昇していた。Mg欠乏初期の観察では、C3濃度及びCH50の上昇が顆粒球数の増加に先がけて観察された。従って、Mg欠乏時の補体系の上昇はMg自体の欠乏で引き起こされ補体の活性化に伴って産生されるfragmentの作用により白血球の増加が起こる可能性が示唆された。一方、免疫応答に及ぼすMg欠乏の影響では、ラットの脾細胞マイトジェン刺激試験で、欠乏食飼育1週目においてConAに対する反応性が著しく低下していたが、その時のIL-2産生の低下はみられなかった。MφのIL-1産生低下も認められないことから、Mφの他の機能である抗原提示能やリンパ球増殖及び抑制等の機能の一部がMg欠乏により変化している可能性も考えられ、更に詳細な検討が必要であると思われる。