著者
坂東 俊彦
出版者
奈良大学史学会
雑誌
奈良史学 (ISSN:02894874)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.59-84, 1998-12

「情報化社会」といわれる今日の情況を反映して、「情報」というものに注目が集まっており、その意義などについて各分野での考察が盛んに行われている。近世史の分野でも従来からの街道、飛脚といった交通史、黄表紙、絵草紙やかわら版といった出版文化史など「情報」を素材とした研究が数多くなされている。また幕末期における「情報」の情況についても、嘉永六年(一八五三)六月のペリーの来航やアヘン戦争などの海外情報をはじめとする政治・社会情報を中心として、和親・開国、穰夷・鎖国の両論の政局、政策的な論議の推移を対象とした研究がなされ、一定の成果を挙げている。それはペリi来航時におけるアメリカ大統領の国書の諸大名から庶民層にまでへの開示・意見聴取をおこなったように、幕府上層部など特定の階層での「情報」の独占、隠匿ということはなくなった。そして「情報」の上から下、横への広がりや情報交換のための人的なネットワークの形成がなされて、各地で一般民衆のレベルでも海外情報をはじめ多種多様な政治・社会情報をかなり自由に入手することのできる「情報化社会」へと幕末の社会構造が変化していったとされる。また一方で宮地正人氏は、ペリーの来航情報に始まったこれら十九世紀後期の、「情報」が民衆の問で蓄積されていく情況を「風説留的社会」の成立とし、幕末期の政治問題を開国、鎖国の政策論議のレベルではなく、急速に形成されつつあった国民的輿論11「公議輿論」と幕府の専制的・家産制的政治支配との構造的矛盾のレベルに存在していたとしており、この「公論」世界の成立が近代社会成立の条件の一つであるとしている。そこで本稿ではこれらの成果を踏まえつつ、中央での政治的発言力、権力を持たなかった山城地域における在地有力者層が、いかにしてペリーの来航などの海外情報やそれ以降の政治・社会情報を入手、分析、理解し、近代「公論」世界の担い手としてその形成に関わりを持っていったかについて、石清水八幡宮社十・河原崎家を例にとり、考察をしようとするものである。
著者
吉川 聡 渡辺 晃宏 綾村 宏 永村 眞 遠藤 基郎 山本 崇 馬場 基 光谷 拓実 島田 敏男 坂東 俊彦 浅野 啓介 石田 俊 宇佐美 倫太郎 海原 靖子 大田 壮一郎 葛本 隆将 黒岩 康博 桑田 訓也 古藤 真平 小原 嘉記 坂本 亮太 島津 良子 高田 祐一 高橋 大樹 竹貫 友佳子 谷本 啓 徳永 誓子 富田 正弘 中町 美香子 長村 祥知 根ヶ 山 泰史 林 晃弘 藤本 仁文 水谷 友紀 山田 淳平 山田 徹 山本 倫弘 横内 裕人 栗山 雅夫 佃 幹雄
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

東大寺図書館が所蔵する未整理文書のうち、中村純一寄贈文書と、新修東大寺文書聖教第46函~第77函を調査検討し、それぞれについて報告書を公刊した。中村文書は内容的には興福寺の承仕のもとに集積された資料群であり、その中には明治維新期の詳細な日記があったので、その一部を翻刻・公表した。また中村文書以外の新修東大寺文書からは、年預所など複数の寺内組織の近世資料群が、元来の整理形態を保って保存されている様相がうかがえた。また、新出の中世東大寺文書を把握することができた。