著者
綾木 雅彦 森田 健 坪田 一男
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.85-95, 2016 (Released:2017-08-10)

生活環境内の自然光と人工照明中のブルーライト成分を試作した光センサーを使用して測定した。ブルーライトを発する光源を使用して眼の角膜上皮細胞への光毒性の培養実験を行って,眼障害の可能性と対策について考察した。ブルーライトならびにブルーライトの覚醒度への影響を検証した。新たに作成した網膜電位図記録装置により,ブルーライトに反応する内因性光感受性網膜神経節細胞の電気活性をヒトで記録することに成功し,住環境で曝露するブルーライトの生体反応の新たな検査法を開発することができた。以上の結果から,通常の視力や視野の確保以外にも眼と全身の健康に配慮した照明,遮光が使用されるべきであると結論した。
著者
川北 哲也 坪田 一男
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.212-222, 2011 (Released:2013-08-01)
参考文献数
4

抗加齢医学(アンチエイジング医学)とは、加齢という生物学的プロセスに介入を行い、加齢に伴う動脈硬化や、がんのような加齢関連疾患の発症確率を下げ、健康長寿をめざす医学である。アンチエイジング医学が注目されてきた背景には、老化研究が進んだことにより老化が科学的に解明されはじめたことによる。 老化は避けられないものではなく、細胞生物学的なプロセスのひとつとであり、介入することにより遅らせることができる可能性があることがわかってきた。1980 年代までは、加齢のプロセスは非常に複雑で、とても介入など不可能であると考えられていた。現在でも加齢のメカニズムに関してはさまざまな説があるが、次第に研究や情報の整理により、徐々に加齢のメインメカニズムが解明されてきている。 現時点においては、酸化ストレスが老化のメカニズムに関わり、カロリーリストリクションにより介入できることは老化のサイエンスとして認識されてきている。 ヒトにおいては、カロリーリストリクションが寿命を延長するという確実なエビデンスはいまだ存在しないが、最近では、長寿の代謝マーカーとして低体温、低インシュリン血症、高DHEA-s 血症が、カロリーリストリクションをしたサルに認められたことが報告された。1)このカロリーリストリクションによる寿命延長には、Sir2/SirT1 というNAD 依存症ヒストン脱アセチル化酵素が重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。運動に関しても、自発的な運動をさせたラットで約10%の寿命延長が観察されている。これらは、食事制限や適度な運動によって、老化過程で認められる動脈硬化などの病的現象が抑制される可能性を示している。 食事制限や適度な運動といった生活習慣の改善はヒトにおいても寿命を延長し、また健康にとってプラスになることが示唆されている。今後も老化に関するメカニズムが少しずつ明らかになり、ヒトの健康寿命の延長に貢献し、日本が健康大国となることを願ってやまない。
著者
綾木 雅彦 森田 健 坪田 一男
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.85-95, 2016

生活環境内の自然光と人工照明中のブルーライト成分を試作した光センサーを使用して測定した。ブルーライトを発する光源を使用して眼の角膜上皮細胞への光毒性の培養実験を行って,眼障害の可能性と対策について考察した。ブルーライトならびにブルーライトの覚醒度への影響を検証した。新たに作成した網膜電位図記録装置により,ブルーライトに反応する内因性光感受性網膜神経節細胞の電気活性をヒトで記録することに成功し,住環境で曝露するブルーライトの生体反応の新たな検査法を開発することができた。以上の結果から,通常の視力や視野の確保以外にも眼と全身の健康に配慮した照明,遮光が使用されるべきであると結論した。

1 0 0 0 ドライアイ

著者
福井 正樹 坪田 一男
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.733-738, 2012-09-20

Ⅰ はじめに 現在,日本には800万人あるいは最近では2,200万人,もしくはそれ以上のドライアイ患者がいるとの報告がある。ドライアイ患者が増えている理由の一つにはドライアイの世間への認知が高まり,受診が増えたり,診断が増えたりしているためと思われる。 また,ドライアイは1995年にドライアイ研究会から定義と診断基準が作成され1),その後2006年に「さまざまな要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり,眼不快感や視機能異常を伴う」と定義の改定が行われた2)。ドライアイは症候群であり,その原因疾患が非常に多岐にわたるとともに環境の変化に伴い,ドライアイ人口も変化していると考えられる。 ドライアイの現状を踏まえつつ,現在までに解明されているドライアイの病態,診断のポイント,最新治療について示させていただく。
著者
鳥居 秀成 栗原 俊英 世古 裕子 根岸 一乃 大沼 一彦 稲葉 隆明 川島 素子 姜 効炎 近藤 眞一郎 宮内 真紀 三輪 幸裕 堅田 侑作 森 紀和子 加藤 圭一 坪田 欣也 後藤 浩 小田 真由美 羽鳥 恵 坪田 一男
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々は屋外環境に豊富にある360-400 nmの光(バイオレット光、以下VL)に着目し、VLを浴びたヒヨコの近視進行が抑制され、VLを浴びたヒヨコの目でEGR1が上昇していることを発見した。また臨床研究において、VLを透過するコンタクトレンズを装用している人の方が、VLを透過しないコンタクトレンズや眼鏡を装用している人よりも眼軸長伸長量が少なかった。さらに現在我々が使用しているLEDや蛍光灯などの照明にはVLはほとんど含まれておらず、眼鏡やガラスなどの材質もVLをほとんど通さないことがわかった。即ち現代社会においてはVLが欠如しており、これが近視の世界的な増大と関係している可能性がある。
著者
斎藤 一郎 坪田 一男
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

シェーグレン症候群(Sjogren's synrome,SS)は唾液腺、涙腺の組織破壊を主徴とする臓器特異的自己免疫疾患である。本症の病体系性の機序は未だに明かではないが最近,SS組織特異的自己抗原が120-kDのα-fodrinであると言う報告がなされ、自己免疫疾患であるSSの発症、病理に深く関与している可能性が考えられている。しかしながら、120-kD α-fodrin自体が生成される機構については殆ど明らかにされていない。一方、従来より本疾患においてEpsten-Barrウイルス(EBV)の著しい活性化が認められることが知られている。本研究は、これらの現象に着目して、EBV感染が120-kD α-fodrin産生を誘導するかについて検討を行った。その結果、本研究に用いたSS患者血清中には、EBVの再活性化の際に検出されるZEBRA抗原に対する抗体およびα-fodrinに対する抗体が存在することがイムノブロット法により確認された。また、EBVの活性化を誘導すると、細胞アポトーシスが惹起され、それに伴って120-kD α-fodrinの発現が認められた。加えて、120-kD α-fodrinの発現は、アポトーシス関連プロテアーゼであるカスパーゼのインヒビターを添加することにより抑制された。これらのことから、自己抗原である120-kD α-fodrinの形成機序の一つにEBVの活性化が示唆された。