著者
塚本 敏夫 小村 眞理 橋本 達也 初村 武寛 田中 由里
出版者
公益財団法人元興寺文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

(1)東アジア出土甲冑の比較研究による再整理の結果、韓半島でも鉄革併用甲がたくさん存在することが判明した。また、腰札で、草摺部を連結するタイプの小札甲が日本にも入っている可能性が判明した。裲襠式の存在については椒浜古墳出土品の調査ができず、結論は次の機会に先送りとなった。(2)復元模造品による武具の堅固性の比較実験の結果、連結材として、組紐が革紐より強度的に優れていることがわかった。(3)武器武具の祭祀具(鎮物)としての利用について古墳時代から室町時代にかけ、沖縄から北海道にかけて行われていたことが調査の結果判明し、武器武具祭祀には3つの画期段階が認められた。
著者
塚本 敏夫 小村 眞理 橋本 達也 初村 武寛 田中 由里
出版者
公益財団法人元興寺文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

小札甲は古墳時代には裲襠式と胴丸式の2型式が存在したとの通説があったが、今回の調査で裲襠式は確認できなかった。それに対して、鉄革併用小札甲が広範囲に流通していたことが明らかになった。また、小札甲が古墳時代から古代、中世にかけて、戦闘用の武具としての機能とは別に、祭祀に利用されている新事実が明らかになった。特に、噴火や火災に関する祭祀に小札片を絶切って利用する実態や人型に転用する事例も明らかになった。律令期の鉄甲から革甲への変換時の文献記述の検証のため、復元模造品による堅固性の比較実験を行った。その結果、革甲が小札甲には劣るが、短甲より堅固性であり、革組より組紐が堅固であることが判明した。
著者
植田 直見 山口 繁生 川本 耕三 塚本 敏夫 山田 卓司 渡辺 智恵美 田中 由理 大橋 有佳 米村 祥央
出版者
公益財団法人元興寺文化財研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

約30年前に保存処理された出土青銅製品に含浸された樹脂を分析した結果、分子構造が変化している可能性が推測された。さらに、出土金属製品の保存処理で最も使用頻度の高いパラロイドNAD10がすでに製造中止となり、今後在庫がなくなれば使用できなくなる。本研究では全国各地の様々な条件で保管されている出土金属製品の現状を調査し、含浸された樹脂を採取・分析・評価する。並行して未使用の樹脂の劣化促進実験を進め、その変化を追跡し、化学変化と機能の低下との関係を見極め、樹脂の寿命を予測し、新しい樹脂の使用時期を判断する指標を確立する。加えて今後出土金属製文化財に使用する新規の樹脂の開発に向けた指針を構築する。
著者
小田 寛貴 山田 哲也 塚本 敏夫 加藤 丈典
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

緑青は,青銅器に発生するさびである.これは青銅中の銅と大気中の二酸化炭素から生成されたものである.また,緑青は一旦形成されるとそれ以上新たな緑青の形成を阻止する性質をもっている.そこで,本研究では,緑青の放射性炭素年代測定の実現を目的とした基礎研究を行った.まず,緑青に含まれる炭素の抽出法を開発した.その上で,考古学的な年代の判明している青銅器に適用し,その炭素がさびの形成された当時の大気中二酸化炭素に由来するものであることを実証した.以上の成果によって,緑青の放射性炭素年代から,そのさびが形成された年代が得られ,さらに青銅器が使用された年代を求めることが可能であることを示した.
著者
山田 哲也 Yamada Tetsuya 塚本 敏夫 Tsukamoto Toshio 小野 直俊 Ono Naotoshi 小田 寛貴 Oda Hirotaka 中村 俊夫 Nakamura Toshio
出版者
名古屋大学年代測定資料研究センター 天然放射性元素測定小委員会
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
vol.10, pp.87-96, 1999-03 (Released:2010-05-25)

第11回名古屋大学タンデトロン加速器質量分析計シンポジウム(平成10 (1998)年度)報告 名古屋大学タンデトロン加速器質量分析計第1号機の研究実績と1号機,2号磯の利用計画
著者
山田 哲也 塚本 敏夫 中村 俊夫 小田 寛貴
出版者
(財)元興寺仏教民族資料研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

加速器質量分析(AMS)法による古代鉄製品の放射性年代測定を確立し、鉄製品に直接的な年代値を付与することを目的として、鉄試料に内在する炭素を汚染させることなく効率よく高純度に抽出し、高精度の試料調整を行った上で、名古屋大学年代測定総合研究センターのタンデトロン加速器質量分析計で微量の炭素を含有する古代鉄製品の^<14>C年代測定の有効性の検証をおこなった。鍛錬鍛冶実験を通じて、そのときに使用した木炭および鍛錬工程で得られた鉄試料のAMS法による^<14>C年代測定を行い、その年代値の検討をおこなった。その結果、鉄中の炭素履歴は、鍛錬実験に用いる前の木炭とほぼ同一の年代を示し、鉄中の炭素履歴は、鍛錬の際に用いられた木炭に置き換えられることがわかった。これまでの一連の研究成果とあわせて、鉄製品中の炭素は、各製作工程ごとに用いた木炭の炭素に影響を受けて、鉄製品中の炭素履歴が置換されるため、鉄製品に内在する炭素を抽出して^<14>C年代測定をおこなうことにより、古代の鉄製品に直接的に年代を付与することが可能であり、その鉄製品の^<14>C年代測定を行うことの有効性を確認することができた。しかし、今回測定した試料の年代値の中には、測定年代に測定誤差を越えたばらつきや、測定試料に炭素同位体分別が生じたり、鍛錬に用いられた木炭と造られた鉄の^<14>C年代値に若干の時間差がみられることがあった。これらの事象を今後、解明してゆくことが古代の鉄製品の^<14>C年代を測定して行く上での課題として残った。
著者
亀井 宏行 渡邊 眞紀子 菱田 哲郎 塚本 敏夫 金谷 一朗 大城 道則
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

制約条件の多い海外での遺跡調査の効率化を図るために,エジプトのアルザヤーン神殿遺跡を対象にして,情報技術の導入を検討した。まずICタグ利用について検討し,遺物や文書管理だけではなく,建物や遺物の修復履歴の管理にも応用できることを示した。3次元スキャナは建物や碑文の記録ばかりでなく,遺構の発掘経過の記録にも用いた。サッカラの階段ピラミッドの3次元記録も実施した。GPS測量や衛星画像の導入を図り,神殿周辺の水環境地図を作成し,ペルシア時代のカナート,ローマ時代の井戸や水路網跡を発見した。地中レーダ探査に基づいた発掘調査では,文字を記した土器片(オストラカ)を発掘した。遺構の保存修復計画を立てるために, 3年間にわたる温湿度計測や風速・風向計測も実施した。