著者
中村 俊夫 齋藤 努 山田 哲也 南 雅代
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

石英管内で金属鉄を加熱、酸化して鉄中の炭素を回収する方法を検討した。石英管内に1gの鉄試料と4gの助燃剤(CuO)を封入して、1000℃で15時間加熱した場合、炭素収率は90%程度であり、外来炭素の汚染無しに14C年代測定に必要な炭素量が回収できる。この方法を用いて、日本刀から分取した金属鉄中の炭素を抽出し、年代測定を行い、日本刀の公式な鑑定年代と比較した。公式鑑定は、測定結果とほぼ一致した。出所が不明な日本刀では古すぎる14C年代が得られ、14C年代を基に出所来歴の詳細を検討する必要がある。サビ鉄でも、予想される14C年代が得られたことから、サビ鉄の14C年代測定の実用化が可能になる。
著者
山田 哲也
出版者
日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.403-419, 2006

学校教育の社会化機能が格差是正に資する可能性を検討するために、本論文では、質問紙調査データを用いて互恵的関係の規定要因を分析した。家族的背景に関わらず、学校生活に適応し良好な友人関係を有する者、学校知識に意義を感じる者ほど共感・互助志向が高く、格差増大に歯止めをかける意識・態度がみられた。他方で、学年段階が上がるほど、「勉強が得意」と考える者ほど共感・互助志向が低く、共感・互助志向と密接に関連する努力主義には、格差化を追認する側面が認められた。分析結果は、学校教育による格差是正の試みが楽観論と悲観論のいずれにも展開する可能性を示唆している。悲観的なシナリオを避けるためには、子ども・若者が所属する場を学校以外にも用意すること、学校知識の意味づけを能力の共同性を強調するものに組み替えることが肝要である。これらを踏まえ互恵的な関係を学校教育で育成することは、格差の拡大を抑止する手助けとなるだろう。
著者
山田 哲也 長谷川 裕
出版者
東洋館出版社
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.39-58[含 英語文要旨], 2010

学校への不信を背景に導入された近年の教員政策は,(1)教員の権威のゆらぎと,(2)職場同僚関係の変化を促す方向で展開してきた。本論文は,教員文化論の視角から質問紙調査データを分析し,(1)(2)を含む教員世界の変化の中で,教員の職業上のアイデンティティ(教職アイデンティティ)とその確保戦略としての教員文化がどうあるのかの把握を試みた。分析で明らかになった知見は以下の3点である。第一に,国際比較データを分析すると,いずれの国でも教職アイデンティティに教員としての成功感覚に裏打ちされた「安定」層と,教職上の困難による教育行為・教職観の揺らぎを意味する「攪乱」層の二層があることが明らかになった。第二に,他国とは異なり,日本の教員は上記の二層のそれぞれと結びつくことがらを相対的に切り離されたものと捉え,教職上の諸困難に直面する際にその一定部分を自分自身では対処不可能と見なすことで「安定」の動揺を回避する「二元化戦略」によって教職アイデンティティを維持していた。第三に,異なる時期に実施した調査結果を比較したところ,上記の教員世界の変化が,献身的教師像と求心的な関係構造が結びつくことで教職アイデンティティを維持していた従来の教員文化が衰退するなかで生じていることが示唆された。これらの知見を踏まえ,論文の末尾では,教員世界の個別化・自閉化や現状追認志向を回避するためには教員世界の外部に学校を開くことが重要であり,そのためにも不信を基調とした教員政策を再考する必要があると結論づけた。
著者
山田 哲也
出版者
一般財団法人 アジア政経学会
雑誌
アジア研究 (ISSN:00449237)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.88-102, 2020-10-31 (Released:2020-11-19)
参考文献数
13

In this article, the author analyses two judgements of the Supreme Court of Korea regarding the payment of compensation to the Korean war time laborers from the view point of public international law. Some of them are said to be forced or deceived at their recruitment by the Japanese private companies. In the judgement of 30 October 2018, the Court adjudicated that the Japanese company were still liable to compensate against the damage caused by such enforcement or deception.However, the Japanese Government has reacted and protested against this judgement through the diplomatic channel. This is because, according to the Japanese Foreign Ministry, the issue of the compensation to the Korean war time laborers was already legally settled through the Japan-Republic of Korea Basic Relations Treaty and the Japan-Korea Claims Agreement of 1965. As the basic principle of public international law, particularly the basic principle of the law of the treaties, every treaty in force is binding upon the parties to it and must be performed by them in good faith (the principle of “pacta sunt servanda”). At the same time, a party to each treaty may not invoke the provisions of its internal law as justification for its failure to perform a treaty. Therefore, Japan has alleged that the 2018 Judgement were internationally illegal and that the Korean Government were obliged to suspend the execution of the judgement. On the other hand, Moon Jae-in Administration has been supportive to the 2018 Judgement and refused to refer to arbitrate provided in Article 3 (2) of the Claims Agreement. As a result, Japan-Korea relation became dramatically worse and no one can foresee when the bilateral relation would get out from this situation.This Japanese-Korean confrontation originally caused by the interpretation of the legality of the annexation (colonization) under the 1910 Treaty. Japan has regarded that the 1910 Treaty was concluded legally in light of the legal situation of the beginning of the 20th century. On the contrary, Korea has never accepted the legality of the 1910 Treaty. Therefore, at the time of the conclusion of the Basic Treaty of 1965, the provision that “[i]t is confirmed that all treaties or agreements concluded between the Empire of Japan and the Empire of Korea on or before August 22, 1910 are already null and void” (italics added) was inserted. This article means that the both parties agreed to disagree about the legality of the 1910 Treaty.In conclusion, the author points out that, as far as the Moon Administration’s policy on reconsideration of the past history and policies under the military or conservative régime continues, Japan would have to deal with such “historical” issue again and again. At the same time, the author points out that what is needed by the Japanese Government is the calm diplomacy with well-grounded (international) legal opinion.
著者
原 采花 河野 健一 大下 裕世 矢部 広樹 長嶋 史子 名村 晋哉 一柳 浩志 森山 善文 西田 裕介 山田 哲也
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.207-214, 2020 (Released:2020-06-19)
参考文献数
27

【目的】維持血液透析患者の栄養状態,身体機能の代表値ならびにカットオフ値を下回る患者の割合を年代別に明らかにした。【方法】670 例の維持血液透析患者に対して,患者背景,Body Mass Index(BMI),Geriatric Nutritional Risk Index(以下,GNRI),握力,膝伸展筋力,通常歩行速度,Short Physical Performance Battery(以下,SPPB)を横断的に調査した。サンプルサイズの妥当性を確認し,代表値の算出とカットオフ値を下回る患者の割合を年代間で比較した。【結果】50 歳以上の年代では十分なサンプルサイズを設定できた。GNRI,握力,膝伸展筋力,歩行速度,SPPB はいずれも年代が高いほど低値で,80 歳代においてカットオフ値を下回る割合が高かった。【結論】維持血液透析患者の栄養状態,身体機能の年代別代表値と高齢患者における低下の実態を示すことができた。
著者
山田 哲也
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.148, no.1, pp.28-33, 2016 (Released:2016-07-13)
参考文献数
18

体重の調節メカニズムは,摂食とエネルギー消費の調節に集約されるが,近年,エネルギー消費における褐色脂肪組織(brown adipose tissue:BAT)の働きが注目されている.BATは脱共役タンパク質(uncoupling protein-1:UCP-1)の発現に特徴づけられ,熱産生に特化した組織である.BATが担っている熱産生の内で食事誘発性熱産生は,食物摂取に呼応するエネルギー消費調節の仕組みと捉えることができるため,個体レベルのエネルギー代謝調節メカニズムの一つと考えられる.本稿では,BATの食事誘発性熱産生を調節する臓器間神経ネットワークに焦点を絞り,体重調節のメカニズムとその意義について考察する.
著者
本村 哲朗 近藤 雄樹 山田 哲也 高田 雅士 仁藤 拓実 野尻 徹 十山 圭介 斎藤 靖彦 西 博史 佐藤 未来子 並木 美太郎
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB)
巻号頁・発行日
vol.2013-EMB-28, no.28, pp.1-6, 2013-03-06

今日の組込みシステムは,リアルタイム制御と情報処理のような独立の複数の機能を扱う必要があり,マルチコア上への搭載が有効である.この時,リソース保護のため,仮想化の一技術であるリソースパーティショニングが必要となる.我々は,リアルタイム性の実現に向けリソースパーティショニングのオーバヘッドを削減する,ハードウェア支援技術ExVisor/XVSを開発した.その主要技術は物理アドレス管理モジュールPAM*で,組込みシステムのメモリ利用方法の特徴を活かした階層のないページテーブルによるダイレクトなアドレス変換で高速化を図る.RTLシミュレーションとFPGA実装で評価を行った結果,シングルコアと比較してリソースアクセス時のオーバヘッドは高々5.6%であることを確認した.*PAM : Physical Address Management module
著者
上野 茂昭 大川 博美 市原 史基 山田 哲也 島田 玲子
出版者
公益社団法人 日本冷凍空調学会
雑誌
日本冷凍空調学会論文集 (ISSN:13444905)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.193, 2018-09-30 (Released:2019-09-30)
参考文献数
5

本研究では鶏唐揚げの保存性を向上するために,種々の条件で保存した鶏唐揚げの衣の食感,肉のやわらかさ,ジューシーさ等を測定し,揚げたての品質を保つための保存条件の検討を行った.破断圧縮試験では25℃40%RH 条件が揚げたてに近い結果となった一方,高温度または高湿度条件では試料の脱液の進行に伴い硬化が認められた.40℃や40%RH 程度で保存することにより,他の条件に比べて鶏唐揚げは歩留まりよく,サクサクでジューシーな状態を保持可能であることが分かった.
著者
原 采花 河野 健一 大下 裕世 矢部 広樹 長嶋 史子 名村 晋哉 一柳 浩志 森山 善文 西田 裕介 山田 哲也
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11618, (Released:2020-02-27)
参考文献数
27

【目的】維持血液透析患者の栄養状態,身体機能の代表値ならびにカットオフ値を下回る患者の割合を年代別に明らかにした。【方法】670 例の維持血液透析患者に対して,患者背景,Body Mass Index(BMI),Geriatric Nutritional Risk Index(以下,GNRI),握力,膝伸展筋力,通常歩行速度,Short Physical Performance Battery(以下,SPPB)を横断的に調査した。サンプルサイズの妥当性を確認し,代表値の算出とカットオフ値を下回る患者の割合を年代間で比較した。【結果】50 歳以上の年代では十分なサンプルサイズを設定できた。GNRI,握力,膝伸展筋力,歩行速度,SPPB はいずれも年代が高いほど低値で,80 歳代においてカットオフ値を下回る割合が高かった。【結論】維持血液透析患者の栄養状態,身体機能の年代別代表値と高齢患者における低下の実態を示すことができた。
著者
山田 哲也 Yamada Tetsuya
出版者
金沢大学大学院人間社会環境研究科
雑誌
金沢大学大学院人間社会環境研究科博士論文要旨(論文内容の要旨及び論文審査結果の要旨)
巻号頁・発行日
vol.平成21年6月, pp.9-14, 2009-06-01

取得学位:博士(文学), 授与番号:人博甲第2号, 授与年月日:平成21年3月23日, 授与大学:金沢大学, 論文審査委員長:岡田, 文明, 論文審査委員:柴田, 正良 / 砂原, 陽一 / 森, 雅秀 / 竹内, 義晴 / 三浦, 要
著者
柏木 めぐみ 大石 千理 村田 和優 尾崎 秀宣 山田 哲也 金勝 一樹
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.120-128, 2022-04-05 (Released:2022-03-29)
参考文献数
14

水稲の種子温湯消毒法において,温湯処理前に種籾の水分含量を10%以下にする(事前乾燥処理) と高温耐性が強化され,防除効果の高い高温域の65℃での消毒 (高温温湯消毒) が可能となることが示されている.「高温温湯消毒法」を安定した技術として普及させるためには,実用的な事前乾燥処理法を確立することが重要である.そこで本研究では,種籾を乾燥機で加温して事前乾燥を行うときの処理条件について検討した.温湯消毒時の高温耐性が低い「日本晴」の種籾を40~60℃で最長72時間加温して事前乾燥を行なった結果,①温度が高い方が短時間で効率的に乾燥でき, 40℃の乾燥では水分含量を10%以下にするまでには12時間要する場合があること,②40~50℃の乾燥では水分含量8%程度までは急激に乾燥するが,その後の水分の減少は緩やかになり,50℃で24時間乾燥させても7%以下にはならないこと,③水分含量が7%を下回っても発芽能に影響はなく,高温耐性は強化されることなどが明らかになった.しかしながら60℃で72時間乾燥させた場合には発芽能が低下する試験区もあった.さらに温湯消毒時の高温耐性が高い「コシヒカリ」の種籾を50℃で水分含量9.5%以下まで乾燥させた場合には, 72℃・10分間の温湯処理でも, 90%以上の発芽率を確保できた.以上の結果から,「日本晴」と「コシヒカリ」の種籾の高温温湯消毒を実施するための事前乾燥処理の条件としては,「40~50℃の温度で12~24時間乾燥処理して水分含量を7~9.5%とすること」が最も適していると結論付けた.
著者
高津 康正 眞部 徹 霞 正一 山田 哲也 青木 隆治 井上 栄一 森中 洋一 丸橋 亘 林 幹夫
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.87-94, 2002-06-01
参考文献数
17
被引用文献数
1

21種のグラジオラス野生種について特性調査および育種素材としての評価を行ったところ,草丈,葉数,葉・花の形態,小花数および開花期等には種によって大きな違いがみられた.また草丈が10cm程度で鉢物に利用可能なもの,現在の栽培種にはみられない青色の花被片を有するものなど,育種素材として有望な野生種が見出された.香りを有する種は全体の52.3%を占め,香りのタイプもチョウジ様,スミレ様などさまざまであることが示された.さらにこれらの野生種について到花日数,小花の開花期間,稔実日数および1さや当たりの種子数を調査し育種上重要な情報を得ることができた.フローサイトメトリーによる解析の結果,野生種においては細胞あたりのDNA含量が多様で,種によってイネの0.9〜3.5倍のゲノムサイズを有するものと推定された.本法による倍数性の判定は困難であるが,種の組合せによっては交雑後代の雑種性の検定に利用可能であることが示唆された.
著者
北川 清隆 柳沢 秀一郎 山田 哲也 三原 美晴
出版者
富山大学医学会
雑誌
富山大学医学会誌 (ISSN:18832067)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.27-29, 2006

両眼瞼下垂を訴えた59歳,女性に対し,alpha adrenergic agonistである5%フェニレフリン及び1%アプラクロニジンの点眼試験を行ったところ,眼瞼下垂は改善した。alpha adrenergic agonistである0.1%ジピベフリンの点眼で加療したところ両眼瞼下垂は改善した。眼瞼下垂を来たす症例において,alpha adrenergic agonistである0.1%ジピベフリンの点眼が有効な場合があると思われた。
著者
羽原 俊祐 小山田 哲也 我満 俊文 中村 大樹
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.433-439, 2016-03-31 (Released:2016-03-31)
参考文献数
7
被引用文献数
3

NaCl等の凍結防止剤の使用に伴いコンクリートのスケーリング劣化が激しくなっており、この現象をソルトスケーリングという。ここではスケーリング劣化現象を解明するため、ASTM C 672法と整合性がある本研究室で開発した小片試験方法を使用し、ソルトスケーリングに及ぼす冷却最低温度(0~-40℃)及び凍結防止剤の濃度の影響(0.01-10%)を把握した。さらにモルタルの配合の影響を把握するため、砂セメント比(S/C=0-3)及び水セメント比(W/C=0.25-0.7)をかえてソルトスケーリングを評価した。ソルトスケーリングは真水では起こらず、幅広い凍結防止剤の濃度(0.1-10%)で生じる。凍結する最低温度の影響は少なく、-7℃以下の温度で生じる。砂セメント比は著しく小さい場合、水セメント比も0.35以下で抑制効果があるが、それ以上では水セメント比の影響は少なく、砂セメント比が1以下の範囲では抑制されるが、それ以上では影響は少ない。
著者
羽鹿 牧太 高橋 浩司 山田 哲也 小巻 克巳 高田 吉丈 島田 尚典 境 哲文 島田 信二 足立 大山 田渕 公清 菊池 彰夫 湯本 節三 中村 茂樹 伊藤 美環子
出版者
農業技術研究機構作物研究所
巻号頁・発行日
no.10, pp.1-20, 2009 (Released:2011-03-05)

「なごみまる」は、大豆の主要アレルゲンの一つαサブユニットを欠失した大豆品種の育成を目標として、「タチナガハ」を母とし、αサブユニットを欠失する「α欠(I)(現在の「ゆめみのり」)」を父として交雑した系統に、「タチナガハ」を3回戻し交雑して育成した新品種である。大豆の主要アレルゲン蛋白質の一つであるβ-コングリシニンのαおよびα’サブユニットを欠失している。関東地域の主力品種である「タチナガハ」よりやや早生だが、ほぼ同等の収量性及び耐倒伏性を備えている。アレルギーリスクを軽減した豆乳等の大豆食品の原料として利用できる品種であり、2006年に「なごみまる」と命名し、種苗登録への出願を行った。