著者
増田 崇 田平 一行 北村 亨 東村 美枝 鴨川 久美子 吉村 淳
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.308-312, 2008-12-20
参考文献数
13
被引用文献数
3

【目的】本研究の目的は開腹手術後の咳嗽時最大呼気流速(peak cough flow:PCF),肺活量(vital capacity:VC),創部痛の経時的変化とこれらの関係を明らかにすることである。【方法】待機的に開腹手術を行った30症例を対象にPCF,VC,安静時痛,咳嗽時痛を術前および術後13日目まで測定した。PCFはピークフローメーターを,VCはライトレスピロメーターを,疼痛はvisual analog scale (VAS)を用いて測定した。各項目間の関係はPearsonの相関分析を用いた。項目ごとの経時的変化の比較は一元配置分散分析を行い,多重比較はTamhane法を用いた。【結果】術後のPCFは術前値に対し術後1日目に46.4%まで低下し,術後5日目まで有意に低下していた。VCは術後1日目に47.8%まで低下し,術後6日目まで有意に低下した状態が続いた。術前PCFに対する回復率とVCの回復率,安静時・咳嗽時痛との間に有意な相関関係を認めた。またPCFとVCの間にも有意な相関が認められた。【結論】開腹手術患者に対しては,肺活量を上昇するような呼吸練習や痛みを軽減するための咳嗽介助など,周術期における理学療法士の積極的な関与の必要性が示唆された。
著者
麻喜 幹博 山森 温 内田 香名 竹内 誠人 加納 誠也 増田 崇光 三木 靖雄
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.717-721, 2022-08-31 (Released:2022-08-31)
参考文献数
9

初期波形VT・VFの心停止における体外循環式心肺蘇生(ECPR)は一定の効果が報告され,近年多くの施設で導入されつつある。初期波形PEAは原疾患が多岐にわたるためECPRの有効性は未確立であるが,肺血栓塞栓症に限れば予後良好である報告が散見される。 当院で救命に至った2例の肺血栓塞栓症ECPR症例は,呼吸困難の先行と肺雑音がないことを救急隊が認識できており,初期波形PEAで二次救命処置により自己心拍再開と心停止を繰り返す状態にあった。両症例とも救急隊からの第一報を的確に得ることで,病着前からECPRを準備し,病着後,心臓超音波検査で心タンポナーデを否定したうえで肺血栓塞栓症を念頭に置いてECPRを実施できたことで社会復帰に至った。目撃やbystander CPRがある心停止のうち,呼吸困難先行と肺雑音なしを確認した初期波形PEA症例はECPRを実施できる施設への搬送を考慮し,超音波検査で心タンポナーデが否定された場合は積極的にECPRを検討することが重要である。
著者
増田 崇 鴨川 久美子 北村 亨 東村 美枝 田平 一行
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.D3O3073, 2010

【目的】腹部外科手術により、肺活量、咳嗽力などの呼吸機能が低下することが知られている。手術後低下した呼吸機能は徐々に回復し、術後一週間で約80%まで回復することが報告されている。これらのことを踏まえ、当院では術前術後の肺活量、咳嗽力を継続的に評価している。今回、術後肺合併症を起こした症例2例を経験し、肺活量の回復過程で合併症を起こさなかった群と特徴的な違いがみられた。術後肺活量の変化をとらえることで肺合併症の早期発見につながる可能性があるのではないかと考えたので、報告する。<BR>【方法】対象:全身麻酔下で待機的に開腹手術を行い合併症を起こさなかった30症例(男性22例、女性8例、平均年齢73.5±7.4歳)と肺合併症を起こした2症例を対象とした。合併症を起こさなかった群をコントロール群とし、合併症を起こした2症例をコントロール群と比較した。コントロール群の診断名は胃癌13例、S状結腸癌3例、直腸癌3例、上行結腸癌2例、下行結腸癌2例、胆管癌2例、腸閉塞2例、総胆管結石、膵頭部癌、胃癌とS状結腸癌の併発がそれぞれ1例ずつであった。合併症を起こした2症例(86歳女性、76歳男性)はいずれも胃癌で、合併症は肺炎であった。<BR>方法:対象者の手術前後に肺活量(vital capacity:VC )及び咳嗽力の指標として咳嗽時最大呼気流速(cough peak flow:CPF)、安静時痛、咳嗽時痛のvisual analog scale(VAS)を測定した。測定は手術前と手術後1日目から9日目までと13日目に実施し、測定に同意した日のみ行い、疼痛や発熱、倦怠感などの理由で対象者の同意を得られない日は測定を行わなかった。<BR>解析方法:術前・術後のVC、CPF、安静時痛、運動時痛を比較した。<BR>【説明と同意】全症例に対しこの検査の意義・目的を説明し同意を得た。<BR>【結果】<BR>1)術前値の比較<BR> コントロール群の術前値はVC:2652±738ml、CPF:297±110L /minであった。症例1は術前VC:2200ml、CPF:300 L/min、症例2はVC:3750ml、CPF:350L /minと大きな違いは見られなかった。年齢は平均よりも高齢であった。<BR>2)VC、CPF、疼痛の経過の比較<BR> コントロール群のVC・CPF・疼痛の経時的変化(理学療法学35巻7号,p308~312)は術前値に対するVCの回復率で術後1日目には47.8%まで低下し、9日目で85.5%まで順調に回復した。一方CPF回復率は術後1日目に46.4%まで低下し、9日目で90.5%、13日目では90.7%まで順調に回復した。疼痛は術後1日目に大きく上昇しその後徐々に低下する傾向があった。<BR>症例1:86歳女性、胃部分摘出術施行術後12日目に肺炎と診断。(前日)11日目の理学療法施行時、それまで順調に回復していたVCが低値となっていた(術後8日目1970ml→11日目1260ml)。CPFも術後8日目310L/min→11日目280L/minと若干低下した。翌12日目胸部X-P撮影後肺炎と診断された。<BR>症例2:76歳男性、胃全摘出術施行、術後7日目に肺炎と診断。(前日)6日目理学療法施行時、それまで順調に回復していたVCが低値となっていた(術後5日目2600ml→6日目2200ml)。CPFは術後5日目225L/min→6日目230L/minと大きな変化は見られなかった。翌7日目胸部X-P撮影後肺炎と診断された。疼痛は2症例ともコントロール群と大きな違いは認められなかった。<BR>なお肺炎は医師によりレントゲン所見、発熱、自覚症状などによって診断された。<BR>【考察】今回の2症例は術前の呼吸機能検査では異常値は示しておらず、術前の段階で呼吸器合併症を予測することは困難であった。一方、VC、CPFは、コントロール群の術後のトレンドと比較すると症例1、症例2共に肺炎の診断がつく前にVC回復率が低下する傾向が見られた。特に症例2では発熱の症状が発現する前にVC回復率の低下が確認できた。VCの変化が肺炎の症状の発現とほぼ同時期あるいはそれより前に見られたことから術前から継続して評価を行うことで発症を感知できる可能性が推察される。このVCの低下は、肺炎により一部無気肺を起こししたことなどが原因として考えられた。一方で咳嗽力の指標となるCPFは特徴的な変化を示さず、肺炎を感知するには適さないと考えられた。しかし、症例1、2共に肺炎の発症時には感染時に去痰不全になる可能性があるとされる270 L/minを下回っており、去痰不全を引き起こしていることが伺えることから、CPFの測定は去痰不全のリスクを管理する上では有用な検査であると考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】本症例報告では、ベッドサイドで比較的簡便な方法で術後の肺合併症を早期に感知できる可能性が示唆された。非侵襲的な検査であり、比較的容易に測定できることから、今後症例を重ね、一定の傾向が確認できれば術後肺合併症を疑う上での指標の一つになるのではないかと考える。
著者
麻喜 幹博 山森 温 増田 崇光 三木 靖雄
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.259-263, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)
参考文献数
7

症例は37歳,男性。幼少期に交通外傷により前頭葉壊死となり人格障害,症侯性てんかんで近医にて投薬を受けていた。搬送前日,数剤の抗てんかん薬を含む処方薬,約40日分を過量服薬し意識障害遷延のため翌日に当院へ救急搬送された。昏睡であり胃内容物吸引・挿管施行し,集中治療を開始した。第4病日の朝に全身痙攣と,多源性心室固有調律,心室頻拍を認めショック状態となった。直流通電や強心薬の投与開始で血圧は上昇したが,左室駆出率は30%,フェニトイン血中濃度は入院時の24.6μg/mLと比し40以上と高値を示し中毒の主体と考えた。その12時間後に再度ショック状態から難治性心停止となったため,veno arterial extracorporeal membrane oxygenation(VA-ECMO)を導入した。フェニトイン除去目的に活性炭による直接血液灌流法(direct hemoperfusion, DHP)も併用した。血中濃度が改善すると循環も安定し,第8病日にVA-ECMO離脱,後日抜管し独歩で退院となった。フェニトインによる心毒性が遅発性に出現しVA-ECMOを要し,DHPの効果も確認できた稀な症例であり報告する。
著者
高石 雅樹 青柳 達也 増田 崇 千葉 百子
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.7-17, 2014-09-22

我が国では全人口の約30%が花粉症患者(2008年)であり,その半数以上がスギ花粉症患者といわれている.そして,花粉症に関する医療費は,日本全体では1,172億円と推計されている. 我が国では第二次世界大戦後,スギやヒノキが大量に植林された.これらのスギが,樹齢30年を超えて多くの花粉を生産するようになり,花粉飛散量が増加したことで,花粉症患者が増加した. 2008年において,栃木県のスギ花粉症有病率は39.6%と全国第三位であり,全国平均の約1.5倍である.栃木県では花粉症対策として,雄花の多いスギ林の間伐を推進している.また,2008年5月に「花粉の少ないスギ山行苗生産計画」を策定し,花粉の少ないスギ林の造成に関する研究を行っている.しかしながら,全てのスギが少花粉スギに置き換わるにはかなりの年数が必要である.また,花粉症患者数の増加に,食生活などの生活様式の変化や大気汚染等の関与も疑われている.したがって,今後の継続的な調査・観察・研究が必要である.
著者
佐藤 孝幸 仁科 雅良 須賀 弘泰 篠原 潤 増田 崇光 髙橋 宏之 磯谷 栄二
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.11, pp.971-975, 2013-11-15 (Released:2014-01-07)
参考文献数
16

子宮留膿腫は子宮腔内の感染に子宮頸管の狭窄や閉塞が加わり,子宮腔内に膿が貯留する疾患であり,高齢者に多くみられる。今回我々は,子宮留膿腫に起因する敗血症性ショックから心肺停止に至ったが,適切な加療により救命することができた1例を経験したので報告する。症例は76歳の女性。突然の呼吸困難と発汗を認めたのち意識消失したため救急搬送となった。来院後心肺停止状態となり,心肺蘇生術により心拍再開した。心拍再開後,敗血症を呈していたため,腹部,骨盤CT検査による精査を行い,子宮内に膿瘍を認め,子宮留膿腫の診断に至った。子宮留膿腫による敗血症に対して経膣的ドレナージと集中治療を行った結果,後遺症を残すことなく救命することができた。高齢女性においては敗血症性ショックから心肺停止を来す可能性があり,鑑別診断に本疾患も念頭に置く必要があると思われた。
著者
春日 紀子 高橋 宏之 坂梨 洋 安藤 大吾 小林 利道 増田 崇光 篠原 潤 佐藤 孝幸 磯谷 栄二
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.50-50, 2013-02-25

第347回東京女子医科大学学会例会 平成25年2月23日(土) 総合外来センター5階 大会議室