著者
本間 健太 穂満 稔里 外川 佑
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.460-468, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
35

本研究では,回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)入院中の脳卒中後うつ症状(以下,PSD)患者において,意味のある作業の満足度が自己効力感の変化量を媒介し,うつ症状を軽減するかを調査した.72名の対象者の入院時と退院時間における,うつ症状,意味のある作業の満足度,自己効力感のスコアの変化量について媒介分析を行った.その結果,意味のある作業の満足度は,自己効力感を媒介することなく,うつ症状に有意な直接効果を示した(β=-2.5,95%CI[-4.2,-0.86],p=0.004).この結果から,意味のある作業の満足度は,回復期病棟におけるPSDの軽減に寄与する可能性が示唆された.
著者
外川 佑 村山 拓也 岩城 直幸 山崎 佳与 﨑村 陽子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.372-379, 2022-06-15 (Released:2022-06-15)
参考文献数
20

自動車運転再開支援では,対象者の運転能力を包括的に捉えることが求められる.今回,過去3回の運転評価で全般性注意機能低下と危険運転行動により運転再開不可とされた70代男性に対し,交通心理学のアプローチを用いた介入を実施した.当院における院内初期評価ではSiDSのタイミング検査や反応時間の遅延,教習所内コース評価では一時停止やカーブ進入前のブレーキ操作の遅れ,自身の運転のモニタリングの不十分さが観察された.交通心理学のアプローチに基づくブレーキ操作の反復訓練と教習指導員による公道での実地走行の結果,ブレーキ操作や運転パフォーマンス,自身の運転に関するメタ認知に変化を認め,最終的に運転再開に至った.
著者
生田 純一 外川 佑 那須 識徳 川間 健之介
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.141-150, 2023-04-15 (Released:2023-04-15)

脳血管障害者の自動車運転評価において,簡易型ドライビングシミュレーター(以下,DS)における運転パフォーマンス特性が運転適性に関連する因子となりうるかどうかを検討することを目的に,実車評価を実施した脳血管障害者149名を後方視的に調査した.DS評価項目について主成分分析を実施し,5つの主成分に次元圧縮を行った.運転適性との関連については,従属変数を運転適性,独立変数をDS評価の主成分得点,共変量を年齢,SIAS上肢,FIM運動項目,MMSE,KDBT,SDMT,ROCF模写とした多重ロジスティック回帰分析を行った.結果,運転適性に関連して,配分性注意と車線走行能力,左右の注意配分といった3つのDS評価特性が示された.
著者
外川 佑
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.290-295, 2022-09-30 (Released:2022-11-24)
参考文献数
22

自動車運転評価を考える段階にある右半球損傷例については, 症状が軽度であるか, リハビリテーションを経て症状が改善, あるいは代償期の USN で ADL が自立している段階にあり, 自宅復帰や復職を控えた活動的な時期に至っているケースが中心になる。これらの軽度例は, 中等度・重度症例とは異なり, 机上の BIT 行動性無視検査などの静的検査では制限時間を設けるなどの方法上の工夫がない限り問題が検出されにくいことが多い。特に, 自動車運転の課題特性を踏まえた評価として, ドライビングシミュレータ上の車線追従課題や反応課題などに代表される動的評価は, 右半球損傷例の自動車運転時のリスクを予測するうえで有益な情報を提供する可能性がある。本稿では, 机上検査だけでは一見 USN の症状が見過ごされやすい右半球損傷例を対象に, 著者らが開発したドライビングシミュレータ課題の実施結果について紹介する。
著者
山田 恭平 加藤 貴志 外川 佑 藤田 佳男 三村 將
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.239-246, 2018-06-30 (Released:2019-07-01)
参考文献数
27
被引用文献数
7 2

4 つの下位検査からなる脳卒中ドライバーのスクリーニング評価日本版 (J-SDSA) が開発されたが, 本邦における参考値は明確になっていない。そこで本研究の目的は, 脳損傷者において J-SDSA を用いて運転可能と判断される各下位検査のカットオフ値を示すこと, さらに得られたカットオフ値と下位検査の組み合わせから実車評価結果の予測精度を明らかにすることとした。対象は 7 施設, 94 名の脳損傷者である。対象者には J-SDSA を施行し, その後実車評価を行った。実車評価の結果は, 教習所指導員の判定に基づいて運転可能群と運転不適群に分類された。群間比較では, J-SDSA の方向, コンパス, 道路標識の得点で有意差を認め, 可能群の成績が良好であった。上記 3 つの検査のカットオフ値を算出し, 検査の組み合わせを検討したところ, 3 検査ともカットオフ値を上回った対象者については 80%以上の精度で運転可能と予測できた。また, 3 つとも下回った対象者については運転不適と予測できた。
著者
外川 佑 村山 拓也 佐藤 卓也 﨑村 陽子
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.599-608, 2017-12-15

要旨:本研究では,半側空間無視(以下,USN)軽度3症例の自動車運転評価結果を分析し,評価中の行動面の特徴に加え,運転再開につながる要因を見出すことを目的とした.全症例のBITがカットオフ値以上を示す一方で,シミュレータ検査や実車評価での車両位置偏位,車線左への脱輪,右方向への接触などの特徴が観察された.また,再評価で運転再開可能となった症例では,運転に関する自己認識の改善がみられ,さらに全般性注意機能の改善が方向性注意機能の低下を補完した可能性が示唆された.USN軽度例の自動車運転評価では,シミュレータ検査や実車を用いて,潜在化したUSN症状のみならず,全般性注意機能の低下や病識の問題にも着目すべきである.