- 著者
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佐藤 卓也
- 出版者
- 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
- 雑誌
- 高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.2, pp.149-154, 2018-06-30 (Released:2019-07-01)
- 参考文献数
- 8
自動車運転は現代生活において欠かすことのできないものである。高次脳機能障害者が社会復帰する場合, 自動車運転再開について適切な評価が必要である。運転に関する概念モデルとして Michon (1985) 及び渡邉 (2016) があるが, それに対応する高次脳機能として, 視空間認知, 視覚認知, 聴覚認知, 注意機能 (持続, 選択, 配分) , 遂行機能, 処理速度, 作業記憶, そして言語機能が挙げられる。運転評価は, オフロード評価として神経心理学的評価及びドライビングシミュレーター評価と, オンロード評価として自動車教習所での実車評価がある。自験例において, 神経心理学的評価について失語群 60 例 (運転再開可能群 44 例, 再開見送り群 16 例) と非失語群 84 例 (運転再開可能群 64 例, 再開見送り群 20 例) の 2 群で比較検討した。非失語群は, MMSE, 記号探し, 数唱, 語音整列で失語群よりも有意な結果であり, 失語群では負荷が多い可能性が示された。失語群を Goodglass ら (1971) のBoston diagnostic aphasia examination により重症度分類し比較検討すると, 区分 1-3 の群よりも区分 4 及び区分 5 の 2 群が運転再開可能群の割合が高く, MMSE, TMT-A 及び B, 数唱で有意に高い結果であった。言語処理の負荷がこれらの課題において不利となる可能性が考えられ, それは運転にも同様に不利に作用する可能性が示唆された。