著者
田島 孝治 安藤 公彦 大島 浩太 寺田 松昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.92, no.7, pp.1084-1097, 2009-07-01
被引用文献数
1

本論文では,我々が開発した情報提示システム「水晶珠」について述べる.水晶珠とは,個人の現在位置と時刻情報から,そのとき,その場所で,その人だけに必要と思われる情報を生成し,携帯端末に自動的に映し出す情報提示システムである.提案システムは,近年注目されているContext-Awareの考え方を利用しており,秒単位で生じる位置情報による膨大な行動履歴の保存と,多種の予測方式や携帯端末固有の環境に柔軟に対応できる必要がある.そこで,個々の履歴を圧縮するのではなく,地域の特性を利用した行動履歴保存方式を提案する.提案方式により,その地域で意味のある点を抽出し,行動履歴の保存に利用することでデータ量を削減する.また,行動の予測はインタフェースのみを定義することにより,多種の予測方式へ適応可能なシステムを実現した.提案システムに実際の行動履歴を入力した検証実験により,行動履歴の保存に必要なデータ量の削減とプロトタイプシステムによる動作を確認した.提案システムの試作により,事前のユーザ登録のみで,情報提供を受けるときには利用者は入力作業を行う必要のない情報提示システムの可能性を示唆した.
著者
小池 恵介 太田 淳 大島浩太 藤波 香織 郡 信幸 竹本 正志 中條拓伯
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.2740-2751, 2012-12-15

Android端末におけるJava実行の高速化とともに,さまざまなネットワークプロトコルへの対応や,種々のセンサへの柔軟な接続が求められている.そのために,FPGAを活用したReconfigurable Androidを提案し,その有効性,可能性を検証することを目指す.本稿では,Reconfigurable Androidの概念について述べ,FPGAボードにプロセッサカードを搭載したシステムにAndroidを移植し,FPGAによるアクセラレータを実装し,ハードウェア実行可能なJavaのソース部分をFPGA上で実行することにより全体の性能向上を実現する.Dalvik VMが稼働するIntel AtomプロセッサとFPGAとの間において,PCI Expressインタフェースの実装を完了し,DMA転送により150 MByte/secの通信性能を確認した.さらに,FPGAアクセラレータによるAndroidの高速化手法について述べ,実験環境および,プロセッサとFPGA間の通信性能について報告し,アクセラレーションによる性能評価を示す.
著者
堤智昭 大島浩太 中條拓伯
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.1581-1587, 2014-07-02

ネットワークの高速化やサーバ仮想化技術の発達により、クラウドコンピューティングに代表される複数のノードが協調して動作を行う分散処理型サービスやネットワーク仮想化が普及している.一方,マイクロ秒やナノ秒レベルの精度でノード間の時刻を同期可能なIEEE1588 PTPv2が登場した.本研究では,高精度に時刻同期されたノードを用いた分散処理制御方式を提案する.これをタイムアウェア型分散処理制御と名付ける.本方式では,予め時刻に応じていつどのような処理を実行するかを記述した動作シナリオと時刻に従ってシステム内のノードをデータが渡り歩き処理が進行する.処理状況確認パケットを送らずとも他ノードの状況を確認でき,効率的な計算資源の割り当てが可能である.方式の実現にあたり,通信遅延やノードの性能や特性に起因する遅延の影響を把握,吸収することが課題となる.そこで,動的に動作シナリオを補正するための処理時刻補正のモデル化を行った.提案方式の有効性を確認するための原理実験用ソフトウェアを開発してプロトタイプシステムを構築し,処理時刻補正のモデルに基づいた処理タイミング補正が正確な時刻に沿った処理において有効であることを確認した.
著者
坂東 宏和 大即 洋子 大島 浩太 小野 和
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.37-47, 2010

本論文は,保育におけるPCネットワークを介した絵と音声によるコミュニケーションの可能性と問題点を探ることを目的とし,1つの幼稚園内に限定されたPCネットワーク環境の中で,幼児にそのコミュニケーションを体験してもらった。その様子を観察した結果,自分の描いた絵に対する返信として録音された,絵が「うまいですね」,「すごい上手です」といった音声メッセージを聞いて喜ぶ事例が見受けられた。また,年中の幼児が「お化け屋敷」という音声とともに投稿した,紙の一部を黒く塗りつぶして暗闇を表現しただけの絵に対し,年長の幼児が「お化け屋敷ならお化けを描かないと」と言いながらお化けを追記し,お化け屋敷にして返信する事例も観察された。これらの事例から,PCネットワークを介した絵と音声だけのやり取りであっても十分コミュニケーションを取ることができ,幼児に有益な新しいコミュニケーションを提供できる可能性が示唆された。