著者
合場 千佳子 中垣 晴男 森田 一三 大澤 功 渡邊 貢次
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.22-29, 2011
参考文献数
21

成人期の初めとしての大学生を対象に,Sense of Coherence(前向き姿勢:SOC)の強さと歯科衛生士の業務の認知度との関係を明らかにするために本研究を行った.対象は,名古屋市郊外にあるA私立大学の学部生全2年生中,質問調査票に回答した男女合計1,772名(有効回答率は90.7%)の学生である.歯科衛生士の業務の認知度は松田が用いた方法を,また,SOCスケールは,日本語版29項目スケールを用いた.その結果,歯科衛生士業務の認知度得点(平均値±SD)は,男子5.0±2.6,女子5.8±2.3で,SOC得点の平均値は,男子116.8±17.7,女子117.1±16.3であった.歯科衛生士業務の認知度は,女子のほうが高かった.また,70%以上が「ブラッシング指導」を歯科衛生士業務であるとしていた.さらに「リスク検査」を業務としている男子のSOC得点は,誤答の男子より有意に高かった.女子では,歯科衛生士業務10項目の正解者と誤答者の間には,SOC得点に有意な差はみられなかった.男女とも歯科衛生士業務を認知している学生は,その業務を認知していない学生より,SOC得点は高い傾向にあった.大学生のSOC得点の高い学生は,歯科衛生士業務の認知度得点も高くそれぞれが関連していること,また大学生の歯や口腔に対する保健行動や歯科衛生士業務の認知には,SOCの強さが関係すると考察された.以上から,歯科衛生士の業務を認知している学生は,認知していない学生より,SOC得点は高い傾向にあると結論できる.
著者
杉山 明宏 牧野 日和 大澤 功 山本 正彦
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.38-46, 2020-04-30 (Released:2020-08-31)
参考文献数
33

【目的】本研究は,日本版感覚プロファイル短縮版(SSP-J)を用いて高齢者の触覚過敏が脱感作療法によって軽減するかどうかを明らかにし,拒否反応の状態および開口保持の状態が変化することで,口腔機能に影響を与えるか否かを検討することである.【対象および方法】嚥下障害の診断で入院し,言語聴覚士(ST)が嚥下訓練を実施した患者522 名から,1)自立した口腔ケアが困難な者,2)触覚過敏による拒否反応によって看護師の口腔ケアおよび食事の介助が困難な者,3)認知症と診断されている者,を満たした患者を抽出した.年齢は,SSP-J に準拠して65 歳以上82 歳までとした.訓練は,ST による脱感作療法後に口腔ケアを1 週間に5 回の頻度で行い,5 週間継続した.SSP-J による感覚刺激反応,改訂口腔アセスメントガイド(ROAG)による口腔機能の評価を行った.さらに,脱感作療法中の拒否反応の変化および口腔ケア中の開口保持方法の変化を記録した.【結果】抽出患者は20 名であった.脱感作療法後は,SSP-J の触覚過敏性および拒否反応が低下し,触覚過敏が軽減した.口腔機能の改善は特に「唾液」の項目で顕著であった.8 症例で開口保持具が不要となり,口腔ケアを受容した.【考察】脱感作療法の継続的な施行によって,高齢者の触覚過敏に軽減を認めた.先行研究より高い改善傾向を示した.脱感作療法においては,一度の介入時間を延長するよりも一定の介入で集中的に訓練するほうが有効である可能性が示唆された.脱感作が奏功しなかった患者に対しては,他の表在・特殊感覚刺激を複合・統合的に導入した新たな脱感作療法の構築が重要である.脱感作療法後は,開口保持が容易となったことで固有口腔内の口腔ケアが施行可能となった.ROAG における唾液の項目に改善がみられ,口腔内湿潤度が増加したと考えられた.
著者
大澤 功
出版者
愛知学院大学
雑誌
愛知学院大学論叢. 心身科学部紀要 (ISSN:18805655)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.39-46, 2008-03

目的:身体活動と悪性新生物のリスクとの関係を,発表された臨床研究を用いて評価する.方法:2000年1月から2006年12月までにMEDLINEに登録されている身体活動と悪性新生物との関連を検討した前向きコホート研究を検索収集して評価を実施した.結果:悪性新生物による死亡を検討した11論文,悪性新生物罹患を検討した56論文について評価した.死亡を検討した11論文中8論文において,身体活動量の多い生活習慣は悪性新生物による死亡の減少と統計学的に有意な関連があることを示していた.部位別では,大腸がんと乳がんでは多くの論文が身体活動によって罹患のリスクが低下すると報告していた.前立腺がん,卵巣がん,膵臓がんでは結論は一致していなかった.結論:身体活動量の多い生活習慣によって,悪性新生物による死亡の抑制と大腸がん予防および乳がん予防が期待できる.
著者
佐藤 祐造 曽根 博仁 小林 正 河盛 隆造 渥美 義仁 押田 芳治 田中 史朗 鈴木 進 牧田 茂 大澤 功 田村 好史 渡邉 智之 糖尿病運動療法・運動処方確立のための学術調査研究委員会
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.850-859, 2015-11-30 (Released:2015-11-30)
参考文献数
21

わが国における糖尿病運動療法の現状を把握することを目的に,糖尿病運動療法の実施状況に関して,患者側に質問紙調査を行った.全国各地の専門医に通院中の糖尿病外来患者5,100名に質問紙調査を行い,同意が得られた4,176名(81.9 %)を解析対象とした.診察時に運動指導を受けている患者は食事療法とほぼ同率であったが,運動指導を「受けたことがない」が30 %存在し,食事療法の10 %より高率であった.医師から運動指導を受けている患者が52 %と,コメディカル(理学療法士,健康運動指導士等)による指導は少なかった.一方,食事療法では,64 %の患者が管理栄養士に指導を受けていた.運動療法を実施している患者は約半数であった.医師側(第1報),患者側いずれの調査でも,糖尿病運動療法の指導体制は不十分であり,食事療法と比較して,「較差」が認められた.日本糖尿病学会編集による「糖尿病運動療法ガイドライン」作成を要望する.