著者
押田 芳治
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

核のDNAと比較して,ミトコンドリアゲノムは小さいものの,機能している部分は核DNAの3分の1にも及ぶ.これに加えて,ミトコンドリアDNAの進化速度は核DNAよりも5倍から10倍高いので,ミトコンドリアゲノムの多様性は核ゲノム全体の多様性に匹敵すると考えられる.これらの特徴から,トレーナビリティー、肥満、2型糖尿病との関連を検討した。さらに、ミトコンドリアゲノム変異により引き起こされる細胞内応答を明らかにし、ミトコンドリア病の分子メカニズムを解明する手がかりを得るために、3243A>G変異{MELAS (mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes)の主要変異}、8993T>G{NARP (neuropathy, ataxia, and retinitis pigmentosa)の主要変異}を有するサイブリット(2SD細胞、NARP3-1細胞)を用いて、DNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った。その結果、ハプログループAでは、ATP合成酵素の第6サブユニットの90番のアミノ酸であるHisをTyrに置換する多型は、マラソン選手や駅伝選手において高頻度で検出された。ハプログループM7b2は,非肥満者に比して肥満者に高頻度で検出された。また、正常なミトコンドリアを持つ143B細胞と比較して、MELAS、NARP変異を持つ2SD細胞、NARP3-1細胞では、CHOP、ASNS、ATF4の発現量が増加していることが判明した。さらに、CHOP、ASNSの発現上昇がAARE、NSRE-1を介しており、ATF4の発現に依存していることが明らかになった。
著者
佐藤 祐造 曽根 博仁 小林 正 河盛 隆造 渥美 義仁 押田 芳治 田中 史朗 鈴木 進 牧田 茂 大澤 功 田村 好史 渡邉 智之 糖尿病運動療法・運動処方確立のための学術調査研究委員会
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.850-859, 2015-11-30 (Released:2015-11-30)
参考文献数
21

わが国における糖尿病運動療法の現状を把握することを目的に,糖尿病運動療法の実施状況に関して,患者側に質問紙調査を行った.全国各地の専門医に通院中の糖尿病外来患者5,100名に質問紙調査を行い,同意が得られた4,176名(81.9 %)を解析対象とした.診察時に運動指導を受けている患者は食事療法とほぼ同率であったが,運動指導を「受けたことがない」が30 %存在し,食事療法の10 %より高率であった.医師から運動指導を受けている患者が52 %と,コメディカル(理学療法士,健康運動指導士等)による指導は少なかった.一方,食事療法では,64 %の患者が管理栄養士に指導を受けていた.運動療法を実施している患者は約半数であった.医師側(第1報),患者側いずれの調査でも,糖尿病運動療法の指導体制は不十分であり,食事療法と比較して,「較差」が認められた.日本糖尿病学会編集による「糖尿病運動療法ガイドライン」作成を要望する.
著者
坂崎 貴彦 久保田 正和 押田 芳治
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.321-324, 2007-10-25 (Released:2011-02-07)
参考文献数
6

1) 保健師・看護師と, 助産師・看護師のそれぞれの統合カリキュラムは, 1997年4月に同時に制定された. 2006年4月現在, 前者は10校開設されているが, 後者は1校も開設されていない.2) 助産師・看護師統合カリキュラムについては, 地域看護の単位数が少なく, 病気や高齢を伴うことが少ない助産師教育を統合させること自体に無理があったのではないだろうか.3) 助産師・看護師統合カリキュラムは, 実用性の検証が不十分なままに制定されたと考えることも可能であるが, 助産師不足が叫ばれている昨今, 制度を活用する学校が現れることを望みたい.
著者
小池 晃彦 押田 芳治 葛谷 雅文 成 憲武
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

加齢による骨格筋減少のメカニズムとエイコサペンタエン酸(EPA)の筋減少抑制効果を検討するために、老化促進マウス(SAMP1)と対照マウス(SAMR1)を用いた。EPAによる骨格筋量の増加は、SAMR1でのみ見られた。しかし、SAMP1で筋力増加の傾向がみられた。また、EPA投与で、SAMR1のみ骨格筋蛋白合成シグナルの活性化がみられた。SAMP1では内在的なシグナル異常があった。代償性の筋肥大は、SAMP1でもSAMR1と同様にみられ、SAMP1の筋量減少は、筋肥大能とは関係なくおこると考えられた。以上よりEPAの投与は加齢時の筋量保持や筋力改善に有効な可能性が示された。
著者
押田 芳治 山之内 国男 早水 サヨ子 蛭田 秀一 佐藤 祐造
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.72-77, 1987-04-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
16

In order to clarify the relationship between acute physical exercise and immunity, the numbers of overall leucocytes, lymphocytes and neutrophils, the concentrations of immunoglo-bulins and complements, the ratios of lymphocyte subsets (OKT 3, 4, 8, Leu 7, OKIa 1) and the levels of lymphocyte transformation response to PHA were measured in nine untrained male subjects (18-22 years old) before, immediately after, along with 24 and 72 hours after acute physical exercise at 50% of VO2max for 2 hours. Before exercise all components were within normal range. Exercise produced a significant rise in the number of leucocytes and neutrophils overall. The response of lymphocytes to PHA immediately after exercise was significantly lower than before, or 24 hours or 72 hours after exercise.There was no change in the number of lymphocytes, or in the concentration of immunoglo-bulins and complements before and after exercise. Likewise the ratios of lymphocyte subsets also remained unchanged.From these results, it can be concluded that acute physical exercise by untrained subjects is one kind of physical stressor and can contribute to T cell dysfunction.