著者
三沢 伸生 大澤 広嗣
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
no.28, pp.107-126, 2013-01-05

近年になって、「回教政策」をはじめとして、長らく学界で取り上げることがなかった戦前・戦中期における日本とイスラーム世界との関係についての研究が進んできている。第1に「回教政策」やイスラーム研究の中心人物にかかわる研究、第2に第1と同じく関係団体や研究機関にかかわる研究、第3に日本社会における反響、第4に在日タタール人など在日イスラーム教徒や日本とイスラーム世界との関係にかかわる研究である。このなかで第3の日本社会における反響の研究が遅れている。社会科学一般で用いられているようにメディア研究を進めていくことが必要である。代表的日刊新聞に比べて仏教系日刊新聞『中外日報』にはイスラーム関係の記事が多く所収される。現在、1937年から1945年の同紙に所収されるイスラーム関係記事のデータベース化を進めており、本稿ではその一部を紹介しながら、当時の日本社会におけるイスラーム認識の振幅の一例を示す。
著者
吉永 進一 安藤 礼二 岩田 真美 大澤 広嗣 大谷 栄一 岡田 正彦 高橋 原 星野 靖二 守屋 友江 碧海 寿広 江島 尚俊
出版者
舞鶴工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、仏教清徒同志会(新仏教徒同志会)とその機関誌『新佛教』に関して、基礎的な伝記資料を収集しつつ、多方面からモノグラフ研究を進めた。それにより、新仏教運動につながる進歩的仏教者の系譜を明らかにし、出版物、ラジオ、演説に依存する宗教運動という性格を分析した。新仏教とその周辺の仏教者によって、仏教の国際化がどう担われていたか、欧米のみならず他のアジア諸国との関係についても論証した。
著者
大澤 広嗣
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.493-516, 2004

本論は、宗教研究史の視点から、トルコ学者の大久保幸次が所長を務めた回教圏研究所について、昭和前期のイスラーム研究史における意義と位置付けを試みたい。日本のイスラーム研究は、一九三七年の日中戦争勃発を機に組織化され、「大東亜共栄圏」建設を目的として、複数の機関で調査研究された。一九三八年に大久保は、小林元や松田壽男と共に回教圏攷究所を創設した。一九四〇年回教圏研究所と改称後、一九四五年の敗戦で解散した。しかし戦後以降、昭和前期のイスラーム研究は、国策や時局と結び付いて研究された側面だけが語られ、その全般的な研究史が軽視されてきた傾向があった。だが回教圏研究所の活動を検証すると、大久保は大正期よりトルコやイスラームを研究し、研究所からは戦後も活躍する中東研究者を輩出したなど、研究史上において重要な意味を持つ研究機関であることがわかるのである。