著者
林 淳 岡田 正彦 梅田 千尋
出版者
愛知学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

近世には4回の改暦が幕府を中心におこなわれ、暦が全国に流通した。9世紀の改暦以来、長い空白があり、1685年貞享改暦をなされた。貞享改暦が企画された背景には、渋川春海の復古的な国家観があった。渋川によれば、神武天皇が古暦を作成したが、それが失われて、その後に中国暦が伝来した。中国暦をそのまま日本で使うことは、中国の文化的な属国になることを意味するという。貞享改暦以降、暦が全国統一されて、流通したことによって、暦の知識をふまえた暦占・易占が出版というかたちで民衆世界に広がった。また仏教天文学は、暦学の進展にともない近世後半に宗派をこえた思想運動になった。
著者
岡田 正彦
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.31-53, 2018-09-30 (Released:2018-12-30)

明治政府は、神祇官復興や神仏分離に象徴される神道国教化政策を展開するが、廃仏毀釈による各地の混乱や教化政策の停滞によって方向転換し、明治五年には教部省のもとで仏教や儒教を取り込んだ大教院が設立される。しかし、「神主仏従」の教化政策は、真宗の大教院分離運動を招き、明治八年に大教院は解体されることになる。本稿では、こうした大教院の教説に対する仏教側の不満を色濃く反映する事例の一つとして、明治七年(一八七四)に出版された、花谷安慧『天文三字経』を取りあげ、これまで仏教側の大教院批判の言説としては注目されなかった、須弥山説に基づく国学的宇宙像の批判について考察したい。安慧は、仏教と儒教・神道の宇宙像の一致を主張する一方で、キリスト教/西洋の宇宙像に影響された平田篤胤の国学的宇宙像を厳しく批判する。こうした平田派国学の位置づけは、当時の大教院の教説と仏教思想の軋轢を色濃く反映しているのではなかろうか。
著者
岡田 正彦
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.71-90, 2001

文化7年(1810)、普門円通は主著である『仏国暦象編』を刊行し、自らの「仏教天文学」の学的組織を体系化した。「梵暦」あるいは「仏暦」と呼ばれる、この「仏教天文学」は、古今東西の天文学の知識をもとに仏典の天文に関する記述を渉猟し、最大公約数的な仏教天文学を体系化したものである。円通は天保5年(1834)年に没したが、その薫陶を受けた人々は「梵暦社」というネットワークをつくり、しばしば「梵暦運動」と呼ばれる思想運動を展開した。円通とその弟子たちの活動とその規模は、近世末期における仏教系の思想運動では特筆すべきものの一つである。ここでは、これまで省みられることの少なかった円通の門人たちによる理論を紹介し、仏教の各宗派に広く取り入れられながらも突然に姿を消した、梵暦運動の消滅とその後の「沈黙」の意味を考えたい。
著者
岡田 正彦
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.71-90, 2001-06-17 (Released:2017-07-18)

文化7年(1810)、普門円通は主著である『仏国暦象編』を刊行し、自らの「仏教天文学」の学的組織を体系化した。「梵暦」あるいは「仏暦」と呼ばれる、この「仏教天文学」は、古今東西の天文学の知識をもとに仏典の天文に関する記述を渉猟し、最大公約数的な仏教天文学を体系化したものである。円通は天保5年(1834)年に没したが、その薫陶を受けた人々は「梵暦社」というネットワークをつくり、しばしば「梵暦運動」と呼ばれる思想運動を展開した。円通とその弟子たちの活動とその規模は、近世末期における仏教系の思想運動では特筆すべきものの一つである。ここでは、これまで省みられることの少なかった円通の門人たちによる理論を紹介し、仏教の各宗派に広く取り入れられながらも突然に姿を消した、梵暦運動の消滅とその後の「沈黙」の意味を考えたい。
著者
吉永 進一 安藤 礼二 岩田 真美 大澤 広嗣 大谷 栄一 岡田 正彦 高橋 原 星野 靖二 守屋 友江 碧海 寿広 江島 尚俊
出版者
舞鶴工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、仏教清徒同志会(新仏教徒同志会)とその機関誌『新佛教』に関して、基礎的な伝記資料を収集しつつ、多方面からモノグラフ研究を進めた。それにより、新仏教運動につながる進歩的仏教者の系譜を明らかにし、出版物、ラジオ、演説に依存する宗教運動という性格を分析した。新仏教とその周辺の仏教者によって、仏教の国際化がどう担われていたか、欧米のみならず他のアジア諸国との関係についても論証した。
著者
岡田 正彦
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.31-53, 2018

<p>明治政府は、神祇官復興や神仏分離に象徴される神道国教化政策を展開するが、廃仏毀釈による各地の混乱や教化政策の停滞によって方向転換し、明治五年には教部省のもとで仏教や儒教を取り込んだ大教院が設立される。しかし、「神主仏従」の教化政策は、真宗の大教院分離運動を招き、明治八年に大教院は解体されることになる。</p><p>本稿では、こうした大教院の教説に対する仏教側の不満を色濃く反映する事例の一つとして、明治七年(一八七四)に出版された、花谷安慧『天文三字経』を取りあげ、これまで仏教側の大教院批判の言説としては注目されなかった、須弥山説に基づく国学的宇宙像の批判について考察したい。</p><p>安慧は、仏教と儒教・神道の宇宙像の一致を主張する一方で、キリスト教/西洋の宇宙像に影響された平田篤胤の国学的宇宙像を厳しく批判する。こうした平田派国学の位置づけは、当時の大教院の教説と仏教思想の軋轢を色濃く反映しているのではなかろうか。</p>
著者
岡田 正彦 松戸 隆之 三井田 孝 大林 光念 稲野 浩一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

動脈硬化症の初期変化をもたらす一つのきっかけは、低比重リポ蛋白(LDL)がラジカル種の攻撃で酸化変性を受け、生理的な代謝が行われなくなることにあると考えられている。しかし、具体的にLDLのどのような構造変化が血管内皮に対して異常信号として作用するのかについては、不明のままとなっている。本研究では、以下の成果をあげることができた。1.アポBの糖鎖構造と易酸化性との関係について調べた.その結果native LDLと酸化LDLで糖鎖構造に違いは認められなかったが、ある切断酵素を作用させたときにだけ、易酸化性が有意に上昇するという現象を認めた。この結果から、アポB上のある種の糖鎖が酸化防御に関わっていることが推測された。2.LDLの酸化によって生じるアポBのフラグメント解析を試みた。ところが種々のフラグメントのアミノ酸配列をホモロジー検索したところ、アポB以外のさまざまなたんぱく質が非特異的に結合していることが分かった。3.酸化LDLを血管内皮細胞に作用させ、VCAM-1のmRNAの変化を調べるという実験系の検討に入った。まず内皮細胞にIL-1を、濃度と時間を変えながら作用させ、VCAM-1のmRNAが発現する最適条件を検討した。さらにVCAM-1アンチセンスを用いたハイブリダイゼーションで、当該バンドが安定して確認できる条件を探った。その結果、IL-1および精製した酸化LDLを内皮細胞に作用させると、VCAM-1のmRNAが明らかに増加する事実を確認することができた。4.酸化によってLDLにどのような構造変化が起きるのかを確かめるべく、アポBの立体構造を解析する研究にも着手することができた。その結果、アポBの膜内でαヘリックスの束を作っている領域が5つあることを確認できた。これは、従来の生化学的な分析結果ともよく一致しており、方法の正しさが証明できたものと考えている。
著者
月橋 こずえ 中村 亨弥 木竜 徹 岡田 正彦 斉藤 義明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス
巻号頁・発行日
vol.97, no.371, pp.35-42, 1997-11-07
参考文献数
11

本研究では生体信号を遠隔で収集し, 在宅医療を支援するためのシステムについて報告する. 提案するシステムは受診者用PC, 医師用PC, そして両者のPCの中間にあるコミュニケーションサーバで構成される. 保管データは心電図データと血圧データである. 通常, 各受診者宅にアクセスするためには, それぞれの受診者用PCに個別にアクセスしなければならない. そこで, 本システムでは, 各受診者用PCにJavaで分散サーバを立ちあげることにより, コミュニケーションサーバから受診者用PCにアクセスして保管データを取得することを可能とした. さらに, 連続実験を行い, 本システムの動作を確認した.