- 著者
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清永 千晶
松田 光弘
吉村 和弘
大畑 千佳
古村 南夫
名嘉眞 武国
- 出版者
- 日本皮膚科学会西部支部
- 雑誌
- 西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
- 巻号頁・発行日
- vol.78, no.3, pp.243-247, 2016
77 歳,女性。初診の 15 年前より本態性血小板血症の診断で加療を行っていた。1 年前より体幹に紅色皮疹が出現し,1 週間前より全身に紅斑,鱗屑,膿疱が生じてきた。病理組織学的に角層下に膿疱形成を認め,角層下膿疱症と診断した。また血中の TNF-α が上昇していた。本態性血小板血症に対しヒドロキシカルバミドで加療をされていたが,増悪を認めたためブスルファンが追加投与となった。その後血小板は速やかに低下し,それに伴い TNF-α は低下し皮疹も改善を認めた。角層下膿疱症とは壊疽性膿皮症,Sweet 病などと共に好中球性皮膚症とされている。皮疹の成立には TNF-α による好中球の活性化作用の関連が示唆されている。本態性血小板血症は骨髄増殖性疾患である。JAK2 や MPL などの遺伝子変異によるサイトカインのシグナル伝達の亢進により発症するとされており,TNF-α が上昇することが知られている。本態性血小板血症と角層下膿疱症の合併は稀であるが,皮疹の増悪時に TNF-α が上昇しており,TNF-α の低下に伴い皮疹が改善したことから,病態形成に TNF-α が関与している可能性が推測された。