著者
菊池 智子 大高 明史
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.129-138, 2014-11-19 (Released:2016-05-20)
参考文献数
24
被引用文献数
1

ワカサギ杯頭条虫Proteocephalus tetrastomus (条虫綱変頭目杯頭条虫科)の分布と生活史を明らかにするために,日本各地のワカサギで寄生状況を調査するとともに,青森県小川原湖のワカサギで条虫の寄生率と発育ステージの季節変化を調べた。ワカサギ杯頭条虫は,調査した34の湖沼のうち19湖沼のワカサギで確認された。条虫の分布には地理的な偏りは見られず,湖沼の塩分特性や栄養状態との関連性もなかった。条虫の寄生数とワカサギの肥満度との間には,どの湖沼でも有意な負の関係は見られなかった。 小川原湖のワカサギに見られるワカサギ杯頭条虫は,春から夏に向かって体長が増加するとともに成熟が進行した。感染可能な幼虫を持った成熟個体は夏期を中心にして6月から12月まで見られた。一方,小型の若虫は7月に現れ,その割合は秋から冬に高まった。こうした季節変化から,ワカサギ杯頭条虫の生活史は一年を基本とし,夏から秋に世代交代が起こると推測された。
著者
岩井 草介 菊池 智子 三浦 貴士
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.110, pp.23-29, 2013-10-18

出芽酵母は、増殖が速く、増殖期にある細胞では無性生殖の1つである出芽の観察も容易なため、学校で簡単に培養することができれば実験教材としての幅広い活用が期待できる。そこで本研究では、身近にある材料を使って簡便に酵母を培養する方法を検討した。その結果、糖および園芸用液体肥料を成分とする液体培地で、市販のドライイーストの酵母が増殖することを見出した。培養液中の酵母を顕微鏡で観察したところ、出芽中の細胞が多数見られた。また上の成分のいずれかを欠いた培地ではほとんど増殖しなかったことから、酵母の増殖には炭素源と、窒素・リン・ビタミン類・無機塩類などの炭素源以外の栄養素の両方が必要であることが確かめられた。この実験は、生物の増殖に必要な栄養素や生物を構成する元素についての理解につながると考えられる。さらに、糖・ブイヨン・粉寒天を成分とする寒天培地で酵母が増殖することも見出した。
著者
河原 紗穂 三雲 亜矢子 豊田 美都 中原 真希子 菊池 智子 古江 増隆
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.491-495, 2013

34 歳,女性。元来,アトピー性皮膚炎のため近医で加療されていた。不明熱,視野欠損,両手掌,足底に紫斑,血疱を認め,当科を受診した。足底の血疱穿刺液および血液培養にて Methicillin-sensitive <i>Staphylococcus aureus</i> (MSSA)を検出し,経胸壁超音波検査では僧房弁に疣贅と思われる所見と僧帽弁逆流を認め,感染性心内膜炎と診断した。弁破壊に伴う僧帽弁逆流と疣贅による脳梗塞などを含めた遠隔病巣があることから,手術目的に転院し,僧房弁置換術が施行された。アトピー性皮膚炎に感染性心内膜炎を併発した報告例は本邦では約 10 例認めるのみである。そのアトピー性皮膚炎患者の多くは重症型で,ほとんどの症例で起炎菌として黄色ブドウ球菌が検出されていることから,感染経路としてはバリア機能の低下した皮膚から細菌が侵入したと考えられている。黄色ブドウ球菌による感染性心内膜炎は,疣贅による弁破壊や全身諸臓器に転移性病巣を作りやすいといわれており,致死的となることが多い。このような重篤な合併症を予防するためにも,アトピー性皮膚炎に対して適切な治療を行い,皮膚におけるバリア機能を保つことが,重要と思われる。
著者
金子 栄 山口 道也 日野 亮介 澤田 雄宇 中村 元信 大山 文悟 大畑 千佳 米倉 健太郎 林 宏明 柳瀬 哲至 松阪 由紀 鶴田 紀子 杉田 和成 菊池 智子 三苫 千景 中原 剛士 古江 増隆 岡崎 布佐子 小池 雄太 今福 信一 西日本炎症性皮膚疾患研究会 伊藤 宏太郎 山口 和記 宮城 拓也 高橋 健造 東 裕子 森実 真 野村 隼人
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.6, pp.1525-1532, 2021

<p>乾癬治療における生物学的製剤使用時の結核スクリーニングの現状について西日本の18施設を調査した.事前の検査ではinterferon gamma release assay(IGRA)が全施設で行われ,画像検査はCTが15施設,胸部レントゲンが3施設であった.フォローアップでは検査の結果や画像所見により頻度が異なっていた.全患者1,117例のうち,IGRA陽性で抗結核薬を投与されていた例は64例,IGRA陰性で抗結核薬を投与されていた例は103例であり,副作用を認めた患者は23例15%であった.これらの適切な検査と治療により,結核の発生頻度が低く抑えられていると考えられた.</p>
著者
中村 真由香 原口 祐子 菊池 智子 濵田 広之 伏見 文良 古江 増隆
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.357-359, 2020-10-01 (Released:2020-11-10)
参考文献数
11

45 歳,男性。初診 1 カ月ほど前より味覚障害,食欲低下を認めていた。頭部の脱毛が出現し,徐々に脱毛範囲が拡大するため,近医を受診し,当科紹介となった。初診時頭部のびまん性脱毛,爪甲の変形,手掌・手指に淡い褐色調の皮膚色素沈着,舌は軽度腫脹がみられ,味蕾が消失していた。また,味覚障害,食欲低下を認めていたため,上部・下部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃・十二指腸および大腸全域にかけて広範囲に発赤調の小ポリープが著明に多発していた。以上より Cronkhite-Canada 症候群(CCS)と診断した。消化器内科と併診し,内服ステロイド治療が開始(PSL 30 mg/日)となった。PSL と PPI(ラベプラゾール)内服を開始して 2 週間後には味覚が改善し食欲が増進した。数週遅れて爪甲の脱落,髭の再生,手掌の色素沈着の消失がみられた。ステロイドを漸減し内服終了し,2 カ月後の上部・下部消化管内視鏡検査では一部小隆起の残存部位あるものの改善を認めた。爪甲は全て生え変わり,脱毛などの症状の再燃なく経過している。CCS は世界的に希少な疾患であるが,本邦での報告例は比較的多く,びまん性脱毛,爪甲の変形,手掌や手指の皮膚色素沈着などの症状をみた場合には鑑別診断として念頭に置く必要がある。