- 著者
-
中村 真由香
原口 祐子
菊池 智子
濵田 広之
伏見 文良
古江 増隆
- 出版者
- 日本皮膚科学会西部支部
- 雑誌
- 西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
- 巻号頁・発行日
- vol.82, no.5, pp.357-359, 2020-10-01 (Released:2020-11-10)
- 参考文献数
- 11
45 歳,男性。初診 1 カ月ほど前より味覚障害,食欲低下を認めていた。頭部の脱毛が出現し,徐々に脱毛範囲が拡大するため,近医を受診し,当科紹介となった。初診時頭部のびまん性脱毛,爪甲の変形,手掌・手指に淡い褐色調の皮膚色素沈着,舌は軽度腫脹がみられ,味蕾が消失していた。また,味覚障害,食欲低下を認めていたため,上部・下部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃・十二指腸および大腸全域にかけて広範囲に発赤調の小ポリープが著明に多発していた。以上より Cronkhite-Canada 症候群(CCS)と診断した。消化器内科と併診し,内服ステロイド治療が開始(PSL 30 mg/日)となった。PSL と PPI(ラベプラゾール)内服を開始して 2 週間後には味覚が改善し食欲が増進した。数週遅れて爪甲の脱落,髭の再生,手掌の色素沈着の消失がみられた。ステロイドを漸減し内服終了し,2 カ月後の上部・下部消化管内視鏡検査では一部小隆起の残存部位あるものの改善を認めた。爪甲は全て生え変わり,脱毛などの症状の再燃なく経過している。CCS は世界的に希少な疾患であるが,本邦での報告例は比較的多く,びまん性脱毛,爪甲の変形,手掌や手指の皮膚色素沈着などの症状をみた場合には鑑別診断として念頭に置く必要がある。