著者
水野 貴之 大西 立顕 渡辺 努
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

我々は全世界の約50万社に関する各取引先を含むデータセットを用いてグローバル・サプライチェーンのネットワーク構造を調べる.はじめに,我々はこのネットワークがスケールフリー構造と任意に選んだ2社の最短経路長が平均6社(リンク)であることを示す.次に,我々は,ネットワークのコミュニティ解析により,グローバル・サプライチェーンにおいて企業は異なる国の同種の産業の企業とコミュニティを形成していることを示す.最後に,我々は,このようなグローバルな企業の生産活動が,グローバル・サプライチェーンを通じた紛争鉱物(紛争地の武装勢力が内戦維持のために採掘し販売するレアメタル)の世界的な拡散に関係していることを指摘する.そして,我々は,コミュニティ間を橋渡しする僅かなブリッジ企業が,紛争鉱物の世界的な拡散を制御する上で重要な役割を果たすことを,複雑ネットワーク科学の視点から指摘する.
著者
小谷 元子 大西 立顕 内藤 久資 高見 誠一 一木 輝久 古田 幹雄 青柳 岳司 下川 航也 橋本 幸士
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本領域は、数学と物質・材料科学の連携により、「次世代物質探索のための離散幾何解析学」を創成することを目指すものである。原子・分子のようなミクロ構造やナノ粒子などのメゾ構造(これらを階層的ネットワークと理解)と、物質・材料のマクロな性質つまり物性・機能の関係を幾何学的に記述し解析することで、物質のミクロ・メゾ構造とマクロな物性・機能の関係を解明し(順問題)、求められる物性・機能を持つミクロ・メゾ構造の予見(逆問題)、更に構造を生成する動的構造形成の制御(最適化・制御)を行うことを目指し数理モデルの構築、シミュレーションと理論による検証を踏まえた最適構造の提案とそれに基づく物質合成を計画している。総括班は、このような異分野融合研究を効率よく行うための議論の場の提供、チュートリアル的な勉強会の企画・運営、領域全体に資する国際研究集会の運営、成果発信のためのニュースレターの発行などを行った。また、研究班でカバーできない研究課題を分析し、新手法の提案・提起に柔軟に対応するため公募計画を策定し、領域会議において計画研究、および公募研究の間の情報交換と議論を行った。異なる分野、班の間をつなぐためのインターフェースとなる若手研究者を配置した。彼らは領域内の項目間の融合を促進するための勉強会やワークショップの企画、ニュースレターの作成を行うとともに、彼ら自身も連携研究を行い、論文および国際研究集会等において成果を発表した。公募研究をより有効に連結させ相乗効果を上げるために、チームを超えた連携研究を奨励するための連携研究支援を行い論文として発表することができた。領域代表者は特に本領域研究に関していくつかの重要な国際会議でプレナリー講演やサーベイ講演を行い、領域の確立に向けて情報発信を積極的に行った。
著者
丸山宏 神谷直樹 樋口知之 竹村彰通 大西立顕
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.223-229, 2015-07-15

ビッグデータ利活用の主要なボトルネックの1つが人材不足だといわれている.我が国におけるデータサイエンティストの育成を加速するため.我々は文部科学省委託事業「データサイエンティスト育成ネットワークの形成」を2013年に開始した.本稿では,この事業を推進する上で見聞きした,さまざまなデータサイエンティスト育成の取り組みと,データサイエンティストを実際に組織の中で活かしていく取り組みについて,ベスト・プラクティスとして紹介する.
著者
吉田 崇裕 久野 遼平 大西 立顕
雑誌
研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:21888779)
巻号頁・発行日
vol.2019-NL-241, no.6, pp.1-8, 2019-08-22

トピックモデルは自然言語処理を始めとして多くの分野で用いられる手法である.トピックモデルの基本形である Latent Dirichlet Allocation (LDA) の提唱後,様々な LDA の改良モデルが提案されてきた.例えば Correlated Topic Model (CTM) は LDA が文書中のトピック間の相関を十分に考慮できない点に注目したモデルであり,汎化性能が向上すると報告されている.Gaussian LDA は LDA が単語間の意味的な近さを十分に考慮できない点に注目したモデルであり,トピックの意味一貫性が向上すると報告されている.両者を組み合わせた Correlated Gaussian Topic Model (CGTM) と呼ばれるモデルは上記二つの欠点を同時に補うのみならず,単語の埋め込み空間上でトピックの相関構造を可視化することができ革新的である.しかし,文書内におけるトピックの関係性は,CGTM が対象とする単純な相関構造だけで表現できるものではない.実際日常生活においても,例えば 「経済」 - 「金融政策」 - 「出口戦略」 のように話題の階層性を意識し会話をすることは多々ある.そこで本稿では階層的トピックモデルとして最も単純な PAM (Pachinko Allocation Model) とGaussian LDA を組み合わせたモデルを提案することで,トピックの階層構造を単語埋め込みベクトル空間上で分析する一歩としたい.
著者
伊藤 真利子 大西 立顕
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第42回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.1P10, 2019 (Released:2019-10-22)
参考文献数
7

化合物空間をネットワークにより表現することで空間の特徴を捉えようとする試みが先行研究でされている.このネットワークでは頂点が化合物を表し,二つの化合物の類似度がある閾値よりも高ければ頂点間にリンクが張られる.しかし,ネットワーク構造は閾値の設定に大きく依存する.そこで本研究では,二頂点間のリンクの重みを化合物の類似度とした重み付きネットワークを考える.生物活性低分子データベースのChEMBLから各ターゲットに対する化合物のデータを取得し,それらの重み付きネットワークの構造を解析した.その結果,極めて強く他の頂点とつながるような頂点は見当たらなかった.またネットワーク全体のコミュニティ構造は弱かった.しかし部分的に,互いに強くつながり合い,全体とは異なる生物活性分布をもつ化合物の集合が見られた.また特に強い(もしくは特に弱い)生物活性値をもつ化合物同士は強くつながり合っていることもわかった.
著者
大西 立顕 高安 秀樹 高安 美佐子
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:18840930)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.1, pp.1-3, 2010-12-09

ページランクアルゴリズムを用いて,日本企業間の取引関係を 100 万ノード,400 万リンクの有向ネットワークとして分析した.ネットワークを最大強連結成分とその他の成分に分解し,最大強連結成分に属する企業についてページランクを計算した.各企業のページランクとリンク数は,売上高とは強く相関しているが,成長率との相関は弱いことが分かった.さらに,リンク数の大きい企業については,ページランクとリンク数の比が大きくなるにつれ,成長率も大きくなることが分かった.これらの結果は,企業の重要性がネットワーク構造から算出できることを示している.PageRank algorithm is applied to Japanese inter-firm network. The network is consisted of about one million nodes representing firms and four million directed links representing transactions between firms. We extract the largest strongly connected component, and calculate the PageRank of these nodes. While the PageRank and the number of links strongly correlate with sales, they weakly correlate with the growth rate of sales. For the firms with large number of links, we find that the growth rate increases with the ratio of PageRank to the number of links. This indicates that the importance of firms can be measured based on the network structure.
著者
大西 立顕 合原 一幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.723, pp.93-100, 2002-03-08
被引用文献数
1

マルチフラクタルにより日経平均株価の終値を解析した.過去T日間の終値の時系列からマルチフラクタルスペクトルを求めた.そのスペクトルのパラメータと現在とL日後の価格差との間の相関について統計的に調べた.TとTに応じて相関の強さは変わり,場合によっては強い相関が見られることが分かった.この結果は,市場価格の変動はまったくランダムなものではなく,効率的市場仮説が妥当でない可能性を示唆している.また,マルチフラクタル解析は高い確率で価格が上がるか下がるかを予測するのに有益であると考えられる.