著者
長田 謙一 木村 理恵子 椎原 伸博 佐藤 道信 山本 和弘 楠見 清 山崎 明子 加藤 薫 木田 拓也 熊倉 純子 藤川 哲 鴻野 わか菜 後小路 雅弘 水越 伸 山口 祥平 毛利 嘉孝 森 司 暮沢 剛巳 神野 真吾 竹中 悠美
出版者
名古屋芸術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、個別研究およびその総合を通して、以下の知見を獲得するに至った。近代社会において「自律性」を有する独自システムを形成したと理解されてきた芸術は、1980年代以降、アジア諸国、ロシア・旧東欧圏、そしてアフリカまでをも包含して成立する「グローバル・アートワールド」を成立させ、それは非西洋圏に進む「ビエンナーレ現象」に象徴される。今や芸術は、グローバル経済進捗に導かれグローバル/ローカルな政治に支えられて、経済・政治との相互分立的境界を溶解させ、諸領域相互溶融的な性格を強めている。しかし、それゆえにまた、現代の芸術は、それ自体が政治的・経済的等々の社会性格を顕在化させることともなる。
著者
長澤 市郎 佐藤 道信 小野寺 久幸 三浦 定俊 真貝 哲夫 稲葉 政満 信太 司
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

明治期彩色彫刻の制作技法、彩色技法を解明することを目的とし、作品の保存方法、修復技法の開発などを研究目的とした。作業は構造調査と制作技法の解明から始めた。目視及び現状記録のため、数種のカメラによる撮影を行った。彩色層の浮き上がりを記録する側光撮影も行った。内部構造解明のため、技芸天像、神武天皇像のX線透視撮影を行った。撮影にはイメージングプレートを用い撮影の迅速化、画像処理の便を図った、X線フィルム撮影も行った。結果を16bit出力とし画像ソフトを用いて処理し、構造を解明しディジタル出力で画像にした。その結果、技芸天像は江戸の制作技術を用いず、室町時代以前の木寄せ法を用い、釘、鎹も同時代の形のものを大量に使用している事、これはシカゴ万国博覧会出品を意識して強固に制作したものであろう。像の内部構造には傷みも無く、金具類に錆も見られず健全である。問題は表面彩色層の傷みの原因である。傷みの原因調査と強化処置のテストを行った。クリーニング作業に水が使えないので、数種類の混合液でテストを行った。剥落止め作業でもアクリルエマルジョンに代えて、アクリル樹脂を用い、時間差を利用して洗浄と固定を行う方法を見つけた。彩色顔料の調査に携帯形蛍光X線器機を用い、非接触で短時間に結果を知る事が出来た。顔料に含まれる微量タンパク質(膠)の含有量を算出する研究を行った。彩色下地技法の調査を行い今回の傷みとの関連を調べた。高村光雲が使った木寄せ図面から模型を造り江戸期造仏技法を検討した。日本の仏像修理の歴史を検証し、美術院修理方法を近世文化財修理へ応用が可能かを調べた。修理の資料として立体を計測する実験を3Dレーザースキャニングを用いて行い好成績を収めた。

1 0 0 0 IR 鑑画会再考

著者
佐藤 道信
雑誌
美術研究 = The bijutsu kenkiu : the journal of art studies
巻号頁・発行日
no.340, pp.1-27, 1987-11-30

Kangakai was an artists' club which aimed at the renovation of painting in traditional Japanese medium, founded at the initiative of Ernest F. FENOLLOSA in 1884. The activity of the club has been traced by art historians based on literary documents and its ideals have been studied on the ground of the analysis of the works by Hōgai KANŌ and other members. However, there was a limit in the past investigation since many of the works exhibited in their shows seem to have been sent out to the United States. The author, who recently had an opportunity to examine the relevant works in American museums such as Museum of Fine Arts, Boston, Freer Gallery of Art and Philadelphia Museum of Art, found there some pieces which might have been contributed to their exhibitions. In the present paper, the author lists up the works of artists related to the Kangakai and reconstructs the personal histories of the members including those who have been almost forgotten. His study of the characteristics of their activity revealed some interesting facts, namely, that Japanese art in the Meiji Era was linked with the Japonisme in the contemporary West and that Ernest FENOLLOSA and the Kangakai, as well, could not be out of the current.
著者
橋本 久美子 佐藤 道信 大角 欣矢 古田 亮 吉田 千鶴子 大西 純子
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

東京音楽学校と東京美術学校が明治から昭和戦後まで文部省、皇室、陸海軍、企業、財閥、学校、市町村からの依嘱により行った受託作には、全国各地の校歌・各種団体歌、皇居前の楠木正成銅像や上野公園の西郷隆盛銅像等がある。音楽と美術双方で学内文書調査、現地調査、現物撮影、現状調査、原資料のデータ化等を行った結果、両校の受託作は近代的共同体のイメージを感覚面から共有させ、近代国家形成の一翼を担った点では共通するが、受託の方法、規模、意義、受託作が社会に及ぼす影響や浸透の仕方は相異なることが明らかとなった。
著者
尾登 誠一 片山 和俊 佐藤 道信 宮永 美知代 吉富 進 清水 順一郎 中山 淳
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

研究は、17年度におこなった風土性、生態学的アプローチ、文化的視点、そしてμGにおける柔素材検討、μG環境での人体姿勢という5つの視座を、ISS(国際宇宙ステーション)の諸条件に照らし、3つの日本的な間(MA)の概念に収斂し展開している。第一点は、居住空間MAの概念であり、狭小限定空間や閉鎖系住居等の分析をしている。また第二点の生活時間MAの概念では、宇宙時間の変則性から仮想されるライフサイクルのありようが検討された。そして第三点の動作空問MAの概念においては、天地左右を暖昧にする浮遊の姿勢に関する展開が試みられている。研究指針はこれらの概念を総合的に相関させ、日本古来の茶室の要素を分析、新たなる居住のありようを宇宙茶室としてコンセプト化している。これを受けて18年度におこなった研究課題の微小重力空間における"柔"環境デザインは、ISS(国際宇宙ステーション)日本モジュールの1/10縮小コンセプトモデルを結論として提案している。モデルは現在建設中のモジュール条件から、直径4m×長さ10mのシリンダー空間を前提に、8名のクルーが長期滞在においてシェアする居住空間(物理的茶室のディメンションをもつプライベートスペース)と、共用を前提とした宇宙茶室(精神的茶室の機能が付加されたパブリックスペース)の合体により構成されている。特に微小重力下における浮遊というテーマは、既成概念を超えて、空間における人間の所作にっいて考察する必用があり、これに関連して宇宙環境における外部のない内部空間を構成する接触面のサーフェイスやテクスチュアのありようが考察された。また床-壁-天井という地球と異なる宇宙での居住環境は、必然的に素材のみならず、媒質(光/空気/音等)との関連性で考察する好機として、デザインの新たなる指標を予感させるものとなった。結果、微小重力下における人間行動と空問のありようから、BIRD HOUSE(鳥の巣)として応用デザインした止まり木的装置へと発展試作、微小重力下で使用することを想定しつつ、体感できるフルスケールモデルの制作も合わせておこなっている。研究成果は、コンセプトデザインモデルとしての提案が主となっているが、研究成果は、地球上の茶室の本来の意味や機能を再検証し、汎人間的な視点から、身体観、及び宇宙観の風土的背景を検討しつつ、宇宙文化のありようを問う考察が加えられている。