著者
奥野 浩史 竹田 太郎 笹岡 知子 福田 文彦 石崎 直人 北小路 博司 矢野 忠 山村 義治
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.30-38, 2009 (Released:2009-08-11)
参考文献数
16
被引用文献数
8 3

【はじめに】自覚的な肩こりと肩上部の硬さとの関連性について検討した。 【方法】肩こり群 (n=60) および非肩こり群 (n=10) に対し、 肩こり自覚度と硬さの評価を鍼灸治療前後に行なった。 硬さは生体組織硬さ計 (PEK-1) と第3者による触診により評価した。 治療担当者に肩こり治療の有無を記入させた。 【結果・考察】硬さ計と触診による硬さの評価は有意な相関を認めた。 しかし、 肩こり群と非肩こり群との2群間の硬さには差を認めず、 肩こり群の自覚度と硬さに相関関係は認められなかった。 さらに鍼灸治療前後の自覚度と硬さの変化量にも相関を認めないことから、 肩こりと硬さとの関係性が無いことが明らかになった。 また、 鍼灸治療効果は肩こり治療をした群で高かった。 以上のことから、 臨床上感じられる触診結果と肩こりの自覚度との整合性の矛盾について、 その一部を示すことが出来たと考える。
著者
友常 祐介 矢嶋 まゆみ 奥野 浩 山本 一也
出版者
独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
pp.JOSH-2021-0017-JI, (Released:2023-01-13)
参考文献数
26
被引用文献数
1

2011年3月に起きた東日本大震災に伴い発生した東京電力福島第一原子力発電所における事故において,日本原子力研究開発機構では最初の1年間にのべ約45,000人の職員が本来の職場を離れて電話相談,一時帰宅支援,環境モニタ リングなどの支援業務に従事した.特に,住民と直接に接する電話相談に従事した職員には,感情労働に伴うストレスがかかった.同機構の核燃料サイクル工学研究所ではこれらの支援業務に従事した職員に対して,組織的なメンタルヘルスケアを行った.本論文では,今回の活動を支援者への支援の具体例と位置づけ, 原子力災害において住民等の支援を行う職員のメンタルヘルスについて考察した.
著者
向井 陵一郎 奥野 浩和 中川 博貴
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.G-71_2-G-71_2, 2019

<p>[目的]</p><p>&nbsp;脳卒中患者の就労に関する問題点は、運動麻痺や高次脳機能障害などの機能障害に加え、通勤手段や職場環境、仕事内容など多岐にわたるため、就労の意思があっても実現できない場合が少なからず存在する。今回、右被殻出血により左片麻痺、半側空間無視を呈した症例に対し、長期に渡り訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)を提供し、限定的ではあるが復職が可能となった症例を担当した。その経過について報告する。</p><p> [方法]</p><p> 症例は2014年11月に右被殻出血を発症し、開頭血腫除去術を施行。左片麻痺、半側空間無視を呈した50代の男性で職業は観光バスの運転手であった。2015年1月に急性期病院から回復期リハビリテーション病棟を有する当院に転院し同6月に退院。直後より当院による訪問リハが開始となった。開始当初の移動能力は、長下肢装具を利用しての自宅内T字杖歩行は見守りが必要で、屋外は車椅子介助であった。</p><p> [結果]</p><p> 1回40分の訪問リハを週3回34か月実施した。復職に必要な動作を調査したところ、自宅車庫までの歩行、屋外不整地歩行、自動車の運転が必要であった。これらの動作の自立を目的に神経筋再教育や立位荷重練習、屋外歩行練習、階段昇降練習を実施した。開始3か月後にはT字杖+短下肢装具(以下SLB)見守りとなったが開始9か月後も自立しなかった。そこで4点杖やロフストランド杖、松葉杖での歩行を評価し、最も安全性、安定性に改善がみられた松葉杖を使用することにした。開始11か月後から松葉杖+SLB歩行練習を開始し、開始19か月後には自立した。開始30か月後にはSLBなしでの歩行も自立した。また、松葉杖使用により立位可能時間が増加し、立位時に手掌で自重を支える必要もないため右上肢の自由度が増した。自動車の運転は開始時から自立していた。開始20か月後から職場での不整地歩行練習、トイレ動作練習を実施し複数回の練習の結果自立した。上記の動作は自立したが、観光バスの運転手復帰は困難であるため、病前の知識を活かし運行管理や社用車の車検取得、簡単な整備、必要書類の記入、提出などの業務を不定期ではあるが行っている。</p><p> [結論]</p><p> 本症例の復職には自宅内から車庫までの移動、屋外不整地歩行、自動車の運転自立が必要であった。これらの動作の自立には安定性、安全性の確保が重要であるが、残存能力を考慮するとT字杖の使用ではそれらが確保できなかった。そこで松葉杖を使用したところ安全性、安定性が大幅に改善し自立に至った。また、松葉杖の使用により立位可能時間が延長され、立位時に右上肢も使用できるようになったため役所等での書類の提出や立位での作業に有用となった。さらに、車の乗降、運転が自立したこと、職場が協力的だったこともあり復職がかなった。復職への課題は多岐に渡り短期間では解決できない点が多いため、長期的に訪問リハなどの支援を継続させることが重要だと思われた。</p><p>[倫理的配慮,説明と同意]</p><p>症例には本報告の目的、趣旨、個人情報の保護に関する説明を口頭と書面にて行い、本人の署名をもって同意を得た。</p>
著者
上江田 勇介 松木 明好 澳 昴佑 森 信彦 野村 翔平 田中 宏明 奥野 浩司郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0586, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】Gaze Stabilization Exercises(GSE)は,立位で眼前のターゲットを注視しながら頭部運動を行い,眼球を頭部と逆方向,かつ同速度で動かす前庭眼反射を誘発するバランス練習である(Bhardwaj, et al., 2014)。このGSEによって,一側前庭機能障害によるバランス障害が改善する(Richard, et al., 2010)と報告されているが,前庭機能自体が改善することでバランスが改善しているのか,体性感覚や視覚の姿勢制御への貢献度が向上して改善するのかは明らかではない。そこで,GSE前後の立位重心動揺総軌跡長,および視覚,前庭覚,足底感覚の立位時感覚貢献度指数(Stephen, et al., 1994)を比較することで,GSEによって姿勢制御における前庭覚の機能に変化が生じるかを検討した。【方法】対象は健常成人12名(男性9名,女性3名,平均年齢22.5±1歳)とした。GSEは,立位にて1m先のターゲットを注視させたまま1Hzのビープ音に合わせて頭部を左右に回旋させる運動を1分3セット実施させる課題とした。頭頚部の左右回旋角度はターゲットを注視できる最大の角度とした。GSE前,直後,10分後(Pre,Post,Post10m)に,(A)開眼閉脚立位,(B)閉眼閉脚立位,(C)フォームラバー上で開眼閉脚立位,(D)フォームラバー上で閉眼閉脚立位の4条件の足圧中心移動総軌跡長を,各30秒ずつ記録した。前庭系機能の姿勢制御条件であるDの足圧中心移動総軌跡長を算出し,Pre,Post,Post10mで比較した。A,B,C,D時の足圧中心総軌跡長をそれぞれa,b,c,dとおき,X={(b-a)/b},Y={(c-a)/c},Z=a/dを算出し,視覚貢献度指数=X/(X+Y+X),足底感覚貢献度指数=Y/(X+Y+Z),前庭覚貢献度指数=Z/(X+Y+Z)を算出し,比較した。統計にはKruskal-Wallis検定,およびPre条件を対照群としてShirley-Williams検定を行った(α=0.05)。【結果】Pre,Post,Post10mにおける条件Dの足圧中心総軌跡長の中央値(第一四分位点)は130.8(114)cm,129.1(119.2)cm,120(110)cmであり,群間に有意差は認められなかった。Preに対するPost,Post10mの視覚貢献度指数は1.07(0.95),0.9(0.75),足底感覚貢献度指数は0.93(0.8),0.93(0.76),前庭覚貢献度は1.15(1.09),1.44(1.17)であった。Kruskal-Wallis検定の結果,前庭覚貢献度のみ群間に差を認め,Shirley-Williams検定によって,Preに対して,Post,Post10mが有意に高い数値であることが示された。【結論】前庭機能のバランス機能を観察するD条件の足圧中心軌跡長は群間で有意差を認めなかった。これは3分間のGSEは,前庭系の姿勢制御機能自体を有意に高めることはできないことを示す。しかし,各貢献度において,前庭覚のみが増加を示した。このことは,視覚,足底感覚,前庭覚の中で前庭覚の姿勢制御への寄与を一時的に高めることができる可能性を示唆した。この方法は,Sensory weightingの異常を有する高齢者や脳血管障害患者のバランス練習として有効かもしれない。
著者
奥野 浩 野村 靖
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.832-841, 1997-10-30 (Released:2009-09-30)
参考文献数
37

『臨界安全ハンドブック第2版』の作成がワーキンググループにおいて最後の検討段階に入っている。第2版は,日本における最新の研究成果を取り入れた。本稿では,第1版(1988年に発刊)の継続課題として検討されたものの中から, (1)非均質な体系であっても均質と見なせる燃料粒径の大きさ, (2)均質燃料系で燃料濃度分布が不均一になったときの反応度効果, (3)水没を仮定しない臨界安全評価の方法, (4)燃料の燃焼を考慮したときの臨界データについて,内容を解説する。さらに,第1版ではもともと範囲外としていた化学プロセスの臨界に関する事項および臨界事故関連事項について概要を紹介する。最後に,第3次版を目指した準備状況についても触れる。
著者
松田 尚樹 三浦 美和 山内 基弘 奥野 浩二
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.435-442, 2014-09-15 (Released:2014-09-28)
参考文献数
10
被引用文献数
1

東京電力福島第一原子力発電所事故以来,医療スタッフに対する放射線教育の拡充が求められているが,その中心的存在となる医師の放射線に関する知識の程度は明らかではない。本研究では,医師としてのスタートラインに立った臨床研修医のオリエンテーションにおける放射線研修時に確認問題とアンケートを実施し,放射線の理解とリスク認知の状況を調べた。その結果,放射線の理解度では放射線の健康影響,次いで放射線の基礎と安全取扱いについて高く,放射線関連の諸規則や規制科学は全般に低かった。しかし,いずれの分野においても,よく質問されやすいようなごく基本的な内容において,理解度が低いものが見られた。放射線に関連したリスク認知度は,X線検査の受診と放射線診療の実施に対する認知は「リスクは気にしない」程度,その一方,原子力発電と原発の近隣地域での居住については「リスクがあるのでなるべくなら避けたい」レベルで,いずれも福島原発事故後の時間経過にかかわらずほぼ一定を示した。以上の傾向は,従来の他の職種や学生によるリスク認知分布傾向と同様であった。研修医が今後,専門性を獲得していくにともない理解度とリスク認知度も多様化することが考えられるため,継続的かつ反復的な基本的事項及び最新トピックスの研修の必要性が示唆された。