- 著者
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安藤 正史
- 出版者
- 近畿大学
- 雑誌
- 奨励研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1995
【目的】コラーゲン分子の大部分は3重らせん構造をとっており,さらに分子間は架橋構造により結合・安定化されている。代表的な成熟架橋成分としてはピリジノリンの存在が報告されており,生体の加齢によりその量が増加するなど,分子あるいは組織の安定化にピリジノリンが大きく関与していると考えられている。しかしながら従来の研究は哺乳類が中心となっており,魚類コラーゲンのピリジノリンに関する研究例は少ない。そこで本研究では,魚類コラーゲン中のピリジノリン量を魚種間で定量・比較し,コラーゲンの安定性との相関性について考察した。【方法】佐藤らの方法に基づき,0.1N NaOHを用いてハマチ・マダイの活魚の筋肉および表皮より粗コラーゲン画分を抽出した。凍結乾燥後,約100mgのコラーゲンを6N塩酸で加水分解し,塩酸を蒸発乾固した。次にn-ブタノール:酢酸:水=4:1:1の混合液で平衡化したCF-11カラムに試料を添加・吸着させた後,蒸留水で溶出した。蒸発乾固した試料に0.02N塩酸を加えて溶解し,日立アミノ酸分析計(L-8500)を用いて蛍光検出器(ex. 295nm, em. 395nm)によりピリジノリンを検出・定量した。【結果】試料をCF-11カラムに吸着させることで効果的に他のアミノ酸を除去することができた。またニンヒドリン発色の場合と比較することにより,蛍光によって検出されたピークは生体構成アミノ酸ではないことが確認された。ピリジノリン含量はマダイにおいてハマチの2〜2.5倍となったが,表皮と筋肉とで比較した場合には、両魚種の間で顕著な違いは認められなかった。筋肉の死後変化において,マダイのコラーゲンはハマチよりも構造的に安定であるが,このことにピリジノリン量の違いが影響している可能性が考えられた。