著者
神岡 太郎 土屋 孝文 安西 祐一郎
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.218-219, 1989-03-15

文を解釈する側からすると、解釈の対象となる文が曖昧性を持つということは、それが非文であるということと同じぐらい迷惑なことである。最近では計算機による文生成の研究が盛んに行われるようになってきたにもかかわらず、このような曖昧性のない文をいかにして生成するかという問題が見落とされてきたように思われる。そこで我々は係り受け関係、特に述部とそれが支配する格との間の係り受け関係が一意に決まらないために、意味が曖昧になるような文を取り上げ、そのような文を生成しない文生成機構の構築を試みた。例えば「神岡は、昨日、土屋から、譲渡された、株を、売却した」という文では「昨日」が「譲渡された」に係るのか「売却した」に係るのかが一意に同定できないので曖昧な文である。本論文では、次の2つの機構を文生成過程に組み込むことによって曖昧でない文を生成する方法について述べる。(1)生成文の係り受け関係と意図された係り受け関係を対応させることにより曖昧性のチェックを行なう。(2)曖昧性がある場合はそれを除去するように語句の出現順位と意味格マーカを操作することによって曖昧な文を生成しないようにする。これらの方法の特徴は、これまでの文生成が一方的に文を生成する側の立場だけから考えられてきたのに対して生成文を解釈する側の立場を考慮した点、すなわち、文生成過程で生成文を生成する側が一度解釈し直しているということである。以下、本論文で示される生成方法は、Sun-3上のQuintus-Prologによってインプリメントされている。
著者
本田 喜久 川島 英之 今井 倫太 安西 祐一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.207, pp.49-54, 2002-07-10

近年,キャッシュを意識して探索を高速化するメモリ索引構造が提案されている.中でも,1999年に提案されたFull Cache Sensitive Search Tree(CSS-tree)は,探索時間がデータサイズによってはハッシュよりも短く,また索引構造のために必要なメモリ空間使用量がB-treeよりも少ない点で優れている.他方,更新処理が遅いため,CSS-treeが有用であるのはオンライン解析処理のように更新処理が極めて少ない状況に限られると言われている.しかし,更新処理を追加処理のみに限定すれば,索引構造の再構築時間を減らすことができる.そこで本研究では,追加処理のみが発生する状況において,CSS-treeへの挿入処理を高速化する手法を提案する.提案手法は,(1)配列とCSS-treeのノードの拡張に要するコストを減らすために,あらかじめ余分な索引構造領域を獲得しておき,(2)配列とCSS-treeの葉ノードの再マップに要するコストを減らすために,CSS-treeの葉ノードの領域をなくし,CSS-treeの内部ノードのスロットに,配列のキー値を格納する.提案手法の有効性を評価するために,C言語とアセンブラを用いて,SunOS 5.6上に実験用データベースシステムを実装し,挿入処理時間を測定した.実験の結果,提案手法は,更新処理を追加処理に限定しない再構築手法と比べて,最大で7.18倍速くなることがわかった.
著者
河野通宗 前沢 敏行 安西 祐一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.115, pp.33-38, 1995-11-30
被引用文献数
2

リアルタイムオペレーティングシステムに単一アドレス空間システムを適用することを試みる。単一アドレス空間システムは、分散システムやオブジェクト指向の研究において注目されつつあるメモリ管理法である。タスクごとに別のアドレス空間を割り当てるのが現在主流のメモリ管理法では、タスク間のメモリ共有の機構が複雑になっていた。これに対して単一アドレス空間は、ハードウェアによる保護のもとで、すべてのタスクが1つのアドレス空間で動作する。本稿ではこのメモリ管理法をリアルタイムOSに適用した場合の利点、および問題点について述べる。さらに、我々の研究室で開発中のロボット用OSμ?PULSERへの実装方針を示す。This paper describes how to apply single address space on real time operating systems. A Single address space is the memory management technique different from recent multi address-space system. With this technique, we are capable of reading data on other tasks without any overhead. Nevertheless, data in my own task is protected from any other tasks. We discuss about pros and cons of real-time operating system with single address space. We also describe some difficulties with current major processors. Finally, we show how to implement this technique into our Robot operating system, μ-PULSER.
著者
神岡 太郎 土屋 孝文 安西 祐一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.457-466, 1989-04-15
被引用文献数
2

本論文では 日本語文において構文的にも意味的二も中心的役割を果たす述語複合体の知識を計算機上でどのように表現すべきかという方法について述べ さらにこの表現方法を用いて述語複合体を計算機によって生成するアルゴリズムについて説明する.述語複合体とは 戸田が膠着言語である.日本語の文法として不自然のないように 日本語文における従来の述部という考え方を再構成したもので これまでの述部に対する日本語文法に 比べて用言における複雑な活用を廃止した等の点で計算機処理に適した考え方となっている.本論文ではこの述語複合体に関する知識を (1)それを構成する語の出現優先順位に関するルール (2)語の意味属性や接続属性等からなる辞書 (3)音便変化や音の崩れ(例えば「食べてしまった」が「食べちゃった「となるような現象)変化に対応したメタルール の3つに分けることにより これを計算機上で素直に表現できることを示す.述語複合体生成システムは 述語複合体生成用のインタプリタと 上で述べた知識表現形式をインタプリタが解釈できる形式(実行形式)に変換するトランスレータから構成されており パス表現によって示される意味格表現に対応する述語複合体をすべて生成する.本論文ではこの述語複合体生成システムを用いることによって 実際に日本語文に用いられるかなり複雑な述語複合体をも生成することができることを実行例を用いて示す.