著者
寺田 喜平 平賀 由美子 河野 祥二 片岡 直樹
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.908-912, 1995-08-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
10
被引用文献数
17 20

水痘ワクチンによる高齢者の帯状庖疹の予防効果について検討するために, 水痘患者を多く診察し特異細胞性免疫が賦活化されている小児科医の帯状疱疹発症率を調べた. また, 帯状庖疹と診断された患者の水痘患者との接触歴や家族構成を調べ, 水痘患者や小児との接触が多いかを調べた.500名の小児科および内科小児科を標榜する50歳と60歳代の医師にアンケート調査し, 344名の有効解答を得た. 50歳および60歳代の帯状庖疹発症率はそれぞれ65.2,158.2/100,000 person-yearsであり, 他の報告の約1/2から1/8と低かった. 61名の基礎疾患を持たない帯状庖疹の患者では, 発症前4名だけが水痘患者と接触していたが家族内接触はなかった. また50歳以上の40名の患者のうち7名だけが14歳以下の子供と同居し, 23名は1世帯家族で孫や子供と同居しておらず, 子供との接触が少ないため水痘のブースターの機会が少なかったと思われた.以上より, 水痘ワクチン投与によるブースター効果で高齢者の帯状疱疹を予防できる可能性があると思われた.
著者
寺田 喜平
出版者
川崎医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

水痘ワクチン接種後、特異細胞性免疫や抗体が陽性化しても、約20%に軽症ではあるが再感染することが明らかになっている。しかし、その原因については不明である。私どもは、水痘ワクチン接種は自然感染と異なる経路で感染することや接種後ウイルス血症が少ないことなどから、分泌型IgA抗体(sIgA)分泌が誘導されるNALTへの抗原刺激が少なく、ウイルス侵入部位で第一に働くsIgAが低いためではないかと推論した。水痘感染約3ヵ月後に唾液を採取した自然感染群26名と水痘ワクチン接種群28名、少なくとも水痘感染後2年以上経過した群23名、小児悪性疾患寛解中の群23名、60歳以上の高齢者群20名、小児科で働く医療従事者の群14名、抗体が陰性である陰性コントロールの群11名を対象に、唾液中の水痘帯状庖疹ウイルス(VZV)特異sIgA抗体をELISA法で測定した。ワクチン群が自然感染群に比較して有意に(P=0.0085)低値で、2例はcut-off値以下であった。高齢者の群は低くなく、帯状庖疹を既往歴に持つ人はない人に比べて高い傾向にあった。医療従事者の群は最も高く、有意にほかの群より高値であった。水痘ワクチン接種後は、自然感染後に比べ有意に唾液中のVZV特異sIgA抗体は少なかった。しかし、帯状疱疹のリスクの高い悪性疾患患者や高齢者では、sIgAは低くなく、帯状疱疹の既往のある人ではかえって高値であった。これは細胞性免疫は低いために帯状疱疹になってもsIgAが保たれているため、水痘の再感染は非常に稀であることを反映していると思われた。sIgAが保たれる原因として外因性あるいは再活性化した内因性VZVによるものと考えられた。現在、不活化した水痘ワクチンを鼻腔内へ噴霧し、sIgA抗体を賦活化することができるか検討中である。
著者
北川 誠子 藤井 哲英 二宮 洋子 河口 豊 平田 早苗 東田 志乃 寺田 喜平
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.418-421, 2015 (Released:2016-01-26)
参考文献数
10

調理従事者からのノロウイルス感染集団発生は,特に病院などでは注意が必要である.病院調理従事者のべ370便検体について,イムノクロマト法による迅速抗原検査を実施した.またその1ヶ月以内に本人で嘔吐下痢症状のあった職員および陽性者はリアルタイムPCRで測定した.その結果,迅速抗原検査の陽性者はいなかったが,リアルタイムPCR法で2/44名が陽性であり,陰性化するまで1ヶ月以上かかった.迅速抗原検査法は簡便であるが,無症状の健康成人に対するスクリーニング検査では漏れのある可能性を示した.スクリーニングよりも現場で手指衛生の教育や徹底が重要である.
著者
寺田 喜平 尾内 一信 庵原 俊昭 岡田 賢司 沼崎 啓
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.414-418, 2008-09-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
6

麻疹・風疹混合 (MR) ワクチン2回接種における安全性と有効性について検証を行った. 対象は約5年前1歳で接種したMRワクチン (ミールビック, 財団法人阪大微生物病研究会) 治験対象者うち了解の得られた75名であった. 方法は追加接種前後に採血して抗体価の変動を調べ, 接種後28日間の健康状態観察表から有害事象を調査した. その結果, 重症な有害事象は認められなかった. また発熱の頻度は1回目の接種時より有意に (p<0.05) 27.3%から14.9%, 発疹の頻度も122%から6.8%に減少したが有意差はなかった.接種部位の発赤や腫脹は, それぞれ7.3%から10.8%, 29%から&1%に増加したが, 有意差はなかった.有効性において, 追加接種前後で麻疹NT抗体 (2n) の平均±標準偏差は5.5±12から64±1.0に増加し, p<0.0001の有意差があった. 風疹HI抗体 (2n) の平均±標準偏差は4.5±1.3から6.3±0.9に増加し, 統計学的にはp<0.0001の有意差があった. 2回目接種後麻疹抗体はNT法およびEIA法で, 風疹抗体はHI法ですべて陽性となった. 接種後平均で2管以上の有意な増加を認めた接種前抗体価は, 麻疹NT抗体8倍以下, 風疹HI抗体16倍以下であった. 以上より, MRワクチン2回接種は安全で有効な方法と考えられた.
著者
寺田 喜平 新妻 隆広 片岡 直樹 二木 芳人
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.173-177, 2000-05-18
被引用文献数
4

我国の看護学生における院内感染予防対策の現状と問題点を明らかにする目的で, 看護大学および短大140校においてアンケート調査を行った.34% (24/71校) の大学で看護学生が水痘, 流行性耳下腺炎, 麻疹, 風疹に, また2校で結核に感染していた.感染対策は既往歴やワクチン接種歴の報告が57%, 検査 (抗体, 便培養) が64%, 何もしていないが14%であった.抗体検査は93%がB型肝炎, 約30%が麻疹や水痘などに対し, また49%がツベルクリン反応を実施していた・抗体測定は感度の低いCF法などの実施例もあった.検査料金は大学の全額補助36%, 一部補助32%, 学生の全額負担28%で, 検査項目数が増加しても補助率はほぼ同じであった.ワクチンの接種勧奨は61%で行っていたが, 接種は本人まかせが56%で, 接種料金は全額補助14%, 一部補助29%であった.その補助費用は88%で大学が, 8%で大学後援会が出していた.問題点は現在の対策がB型肝炎中心で, 結核やウイルス感染に対する対策が遅れていた.また抗体測定法の選択に問題があった.検査料金やワクチン料金は少なくとも補助が必要で, またワクチン接種勧奨するだけでなぐ集団接種や場所, 時間など学生に便宜を計る必要があると考えられた.看護学生に対する院内感染防止には費用も含めた対策が必要である.