著者
尾内 一信
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.1039-1043, 2019 (Released:2019-11-01)
参考文献数
14

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、HPV感染を予防しHPV感染に起因する子宮頸がんを予防するワクチンである。日本でも2010年から子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業開始され、2013年4月から定期接種に組み込まれた。接種率の上昇に伴いワクチン接種後の多様な症状が報告され、2013年6月積極的勧奨の一時差し控えが通知された。その後、現在も定期接種であるのも関わらず接種率が1%に満たない状況が続いている。先進諸国ではHPVワクチンの高い接種率が維持されており、このままだと日本だけが子宮頸がんが減らないのではないかと危惧される。
著者
寺田 喜平 尾内 一信 庵原 俊昭 岡田 賢司 沼崎 啓
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.414-418, 2008-09-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
6

麻疹・風疹混合 (MR) ワクチン2回接種における安全性と有効性について検証を行った. 対象は約5年前1歳で接種したMRワクチン (ミールビック, 財団法人阪大微生物病研究会) 治験対象者うち了解の得られた75名であった. 方法は追加接種前後に採血して抗体価の変動を調べ, 接種後28日間の健康状態観察表から有害事象を調査した. その結果, 重症な有害事象は認められなかった. また発熱の頻度は1回目の接種時より有意に (p<0.05) 27.3%から14.9%, 発疹の頻度も122%から6.8%に減少したが有意差はなかった.接種部位の発赤や腫脹は, それぞれ7.3%から10.8%, 29%から&1%に増加したが, 有意差はなかった.有効性において, 追加接種前後で麻疹NT抗体 (2n) の平均±標準偏差は5.5±12から64±1.0に増加し, p<0.0001の有意差があった. 風疹HI抗体 (2n) の平均±標準偏差は4.5±1.3から6.3±0.9に増加し, 統計学的にはp<0.0001の有意差があった. 2回目接種後麻疹抗体はNT法およびEIA法で, 風疹抗体はHI法ですべて陽性となった. 接種後平均で2管以上の有意な増加を認めた接種前抗体価は, 麻疹NT抗体8倍以下, 風疹HI抗体16倍以下であった. 以上より, MRワクチン2回接種は安全で有効な方法と考えられた.
著者
坂田 宏 砂川 慶介 野々山 勝人 佐藤 吉壮 春田 恒和 尾内 一信 山口 覚
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.150-154, 2011-03-20 (Released:2015-04-06)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

2004 年 4 月から 2007 年 1 月までに 108 の調査協力施設で診療した 466 例の細菌性髄膜炎の中から,検討委員会において診断が不確実な例,評価不能な例などを除外した小児例 339 例について,初期治療薬と予後の関係を検討した.予後不良は発症後約 3 カ月の調査で四肢麻痺,難聴,てんかんなどの後遺症を有していた例とし,43 例(12.7%)が該当した.年齢や原因菌によって有意差はなかった.発症から治療までの期間が 4 日を越えるとそれ以前に治療開始した例に比べて有意に予後不良例が多かった.予後不良率は panipenem/betamipron (PAPM/BP) と ceftriaxone (CTRX) 併用が 64 例中 4 例 (6.4%),MEPM と cefotaxime (CTX) 併用が 57 例中 6 例 (10.5%),meropenem (MEPM) と CTRX 併用が 50 例中 7 例 (14.0%),CTRX 単剤は 23 例中 0 例であった.MEPM は 42 例中 11 例 (26.2%) で予後不良率が高く,PAPM/BP と CTRX 併用,MEPM と CTX 併用,CTRX 単剤の治療方法とそれぞれ有意差を認めた(p<0.05).MEPM の単独での初期治療は単独投与より併用療法を行うことが望ましいと考えられた.
著者
尾内 一信
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.2117-2119, 2016

<p>日本人の海外渡航者は毎年1,600万人を超え,その中でもアジアなど発展途上国への渡航者が増えている.また,発展途上国での滞在期間が延び,日本ではあまり経験しない熱帯病などの感染症に感染する機会が増えている.日本人の渡航者は,欧米人に比べて海外渡航時の体調不良には無関心であり,準備不足であるので,海外での感染症に罹患するリスクについてさらなる啓発が必要と思われる.</p>
著者
尾内 一信
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.2117-2119, 2016-11-10 (Released:2017-11-10)
参考文献数
1

日本人の海外渡航者は毎年1,600万人を超え,その中でもアジアなど発展途上国への渡航者が増えている.また,発展途上国での滞在期間が延び,日本ではあまり経験しない熱帯病などの感染症に感染する機会が増えている.日本人の渡航者は,欧米人に比べて海外渡航時の体調不良には無関心であり,準備不足であるので,海外での感染症に罹患するリスクについてさらなる啓発が必要と思われる.
著者
尾内 一信
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.290-294, 2016 (Released:2017-03-23)
参考文献数
4

近年耐性菌が増加しているが,抗菌薬の開発は進まず世界的に深刻な問題となっている。日本政府は,WHOの要請を受けて薬剤耐性対策アクションプランを閣議決定した。2020年までに抗菌薬の使用を1/3削減する目標を立てている。今後更なる抗菌薬の適性使用が求められる。小児感染症に対する適切な抗菌薬の使用は,適切な病型診断と原因微生物の推定,原因細菌の薬剤感受性動向の把握,薬物動態(PK)と薬力学(PD)の理解,抗菌薬のミキシング,標準的な治療期間を遵守,耐性菌リスクを考慮し不必要な抗菌薬を投与しないなど基本的な事項であるが,数多くて複雑である。小児感染症専門医でもアップデートはなかなか困難である。したがって,これらの基本的な事項に配慮して作成されたガイドラインを使って治療することがより現実的であり,最適治療の近道である。ガイドラインに従って,耐性菌を増やさないように意識して抗菌薬の適性使用に心掛けたい。