著者
梶原 都香紗 松岡 弘道 小山 敦子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.460-466, 2021 (Released:2021-07-01)
参考文献数
13

はじめに : パニック症に対するEMDR (眼球運動による脱感作と再処理法) が報告されているが, 今回EMDRを実施することなく, EMDR導入前に用いる安定化技法のみでパニック症の軽快と自己コントロール感への影響が認められた症例を経験したので報告する.  症例 : 20代女性. パニック症. 抑うつ状態. 受診時の胸のざわつき, 電車乗車時のパニック症状出現に対する不安に対し, それぞれ安定化技法の 「拡張版コンテイナー・テクニック」 を実施し, SUDs (主観的障害単位) の減少が認められた. 本人も効果を実感し, 自己にて練習することとなった. 「安全な場所」 を実施し, 新幹線にも乗ることが可能となった. 本人も自信がついたと語り, その後の心理面接では過剰適応に対する気づきが認められた.  考察 : 安定化技法は, パニック症状の軽減, 自己コントロール感の向上を促し, 過剰適応な対人関係のパターンにも影響を与える可能性がある.
著者
佐居 由美 松谷 美和子 山崎 好美 中山 久子 大久保 暢子 石本 亜希子 三森 寧子 多田 敦子 印東 桂子 瀬戸山 陽子 村松 純子 小山 敦子 岩辺 京子 森 明子 有森 直子 今井 敏子 原 瑞恵 菱沼 典子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.116-124, 2007-06

本稿は,聖路加看護大学21世紀COEプログラムの一環である『第7回COE国際駅伝シンポジウム『子どもと学ぼう,からだのしくみ』の概要を記述し,その運営実施過程を分析評価することにより,People-centered Careの構成要素について考察することを目的とする。第7回駅伝シンポジウムは,5歳児がからだを学べる方法を提示し一般市民と有意義な意見交換を行うことを目的とし,5歳児と両親,保育士や幼稚園教諭,看護師・養護教諭など5歳児にかかわる専門家を対象として開催された。シンポジウムの企画運営は市民との協働で行われた。シンポジウムは,(1)子どもが「からだを学ぶ」ための教材としてのテーマソング「からだフ・シ・ギ」の歌と踊り,(2)人間の消化機能を解説した紙芝居「リンゴがウンチになるまで」の上演,(3)子どもとからだのしくみを学ぶことについてのシンポジウム「子どもと学ぼう,からだのしくみ」から構成された。プログラムは,1プログラム20分以内とし,紙芝居・歌・踊りなどを取り入れ,子どもが飽きない工夫を行った。シンポジウムの運営実施における市民との協働過程においては,これまでのCOE活動から得られたPeople-centered Careの要素〔役立つ健康情報の生成〕〔異なる視線でのつながり〕等が確認され,「コミュニティに潜伏しているニードを湧きあがらせ(互いに確認し)顕在化させ,活動を専門家との協働へと移行し発展させる」過程を経験し,新たに〔互いに確認する過程〕という要素を見いだした。また,駅伝シンポジウムにおいて,当初,模索されていた市民との協働(2004年)が,湧きあがったコミュニティとの協働(2005年)へと視点を移し,さらに,協働が進行しているコミュニティと専門家が活動のさらなる展開を共に模索するシンポジウム(2006年)へと,市民との協働のプロセスが発展していることが確認された。コミュニティとのさらなる協働のあり様,「5歳児がからだを学べる方法」の具体的評価方法,などが,今後の課題として再確認された。
著者
前田 裕弘 松田 光弘 森田 恵 正木 秀幸 白川 親 堀内 房成 小山 敦子 濱崎 浩之 藤本 卓也 入交 清博 堀内 篤
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.118-125, 1993-04-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
17

成人T細胞白血病(ATL)患者の血清を健常人の末梢血単核細胞(PBMC)に添加し,そのPBMCのCD 3抗原の発現を観察した. CD 3抗原の発現が低下している急性型ATL患者の血清を添加したときのみ健常人PBMCのCD 3抗原の発現が低下した.しかし, CD 3抗原の発現が正常の慢性型ATL血清では,この現象はみられなかった.同様の結果が細胞培養上清添加時にもみられた.細胞培養上清をSephacryl S-200を用いて分画し,健常人PBMCのCD 3抗原を低下させる活性を分子量40-60 kDの分画に認めた.各種抗サイトカイン抗体を用いた中和実験および各種サイトカイン添加実験より,この可溶性因子が既知のサイトカインとは異なる因子と考えられた.この因子が臨床的に急性型ATLに認められ,くすぶり型および慢性型ATLに認められないことより, crisisに関与している可能性も考えられた.
著者
松岡 弘道 村上 佳津美 小山 敦子
出版者
近畿大学臨床心理センター
雑誌
近畿大学臨床心理センター紀要 = Bulletin of center for clinical psychology Kinki University (ISSN:21868921)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.3-17, 2014-11-01

[要約] 心療内科で扱う心身症の患者によくみられる特徴に, (1)失感情症, 失感情言語化症 (Alexithymia) : 自分の内的な感情ヘの気づきとその言語表現が制約された状態, (2)失体感症(Alexisomia) : ホメオスターシスの維持に必要な身体感覚 (空腹感, 満腹感, 疲労感など)への気づきが鈍い傾向, がある. このために過剰適応となり, 様々な身体の不調をきたす心身症ヘと発展していく. したがって, 心身症治療の中心は, これらの病態--「心身相関」への気づきを促し, 患者自身に新しい適応様式を獲得してもらい, セルフコントロールできるようにすることである. 代表的な心理療法として, 自律訓練法, 交流分析・ゲシュタルト療法, 認知行動療法について概説するとともに, 日本ではまだあまり知られていないが, 最近, 筆者らが渡独し, 開発者から直接研修を受けたオートノミートレーニングについても詳述する. 近畿大学では, 今後, 幅広い患者ヘ心身医療を提供していく.