著者
小川 正賢
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.27-30, 2018 (Released:2018-04-07)
参考文献数
7

国際比較調査の結果が公表されると東アジア地域に混じって北欧フィンランドの好成績が注目をあびてきた.ところで,その影に隠れてはいるが,継続して理科で好成績を挙げている国にバルト三国の小国エストニアがある.旧ソ連の崩壊によって 1990 年代に独立したバルト三国(エストニア,ラトビア,リトアニア)の中で,エストニアだけがとびぬけて理科の成績が良好である.いったいその原因はどこにあるのだろうか.そのような問題意識から,本論では,従来あまり紹介されてこなかったエストニアの理科教育事情,理科教師教育事情を概観する.
著者
木村 優里 小川 正賢
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.171-176, 2018-12-08 (Released:2018-12-05)
参考文献数
20

本研究の目的は,「科学実践に関わる市民」を捉える新しい理論枠組みの検討である.先行研究を参考に検討し,「科学者」と「市民」の間に「科学アマチュア群」を定位し,その中を,知識・技能のレベル,活動に対する積極性,関与している期間の3軸を指標として区分することで,多様な「科学実践に関わる市民」を捉える枠組みを提案した.
著者
木村 優里 小川 正賢
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.324-334, 2018 (Released:2019-02-02)
参考文献数
7

The current study is one of the hypothesis verification studies of previous work (Kimura, 2017), in which a hypothetical model, explaining why amateur scientists could continue their scientific practices, was generated through a qualitative research method, the Modified Grounded Theory Approach (M-GTA). The present study examined common elements enabling Japanese amateur entomological scientists to continue their scientific practices in the hypothetical model, by using a quantitative research method. A total of 70 amateur entomological scientists voluntarily participated in a questionnaire survey, consisting of 3 attribute questions and 19 main questions, which identified a total of 21 essential elements (‘categories,’ ‘concepts,’ and ‘processes’) of the model. The data obtained was analyzed quantitatively. The findings revealed that the 21 elements could be divided into three groups: Thirteen elements were shared among the Japanese amateur entomological scientists, whereas 5 elements were not, while the remaining 3 elements were in-between.
著者
小川 正賢
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.191-204, 2011-06-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
17
被引用文献数
1

The Exploratorium, founded by Frank Oppenheimer, has been regarded as one of the origins of hands-on 'science' museums, while its unique exhibition rationale described in its title 'the museum of science, art and human perception,' shows that it is not necessarily a simple 'science museum.' Why has it been perceived as a museum, not of 'science, art and human perception,' but of 'science'? In order to explore the question, the present study examined how the Exploratorium's exhibition rationale was reflected in the exhibition, 'Exploratorium in Japan' held in 1989. Through an extended examination of the exhibit selection process using a collection of recorded documents from the Japanese side as well as an archive from Exploratorium's official management record (US side), no concrete and detailed discussion on the exhibition rationale and/or exhibit policy between the two sides was found to have happened during the negotiation process.
著者
小川 正賢
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.19-27, 1995-03-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
28
被引用文献数
8

Recent progress in philosophy, history, and sociology of science has made us aware that the image of Western Modern Science we have believed so far is far from what it really is. Western Modern Science is now believed to be not the knowledge, but a kind of knowledge. This inevitably leads us science educators to realize that Western Modern Science can be set in a relativistic perspective. Another research trend has been appearing in science education enterprise. That is the trend in which Western Modern Science could be treated as a type of 'Culture' in the science education context. Integrating these trends together, the author aims in this article to propose a new perspective of science education, "Science as the Culture of Scientific Community". Then, the value or worth of learning science is examined from that perspective through the processes of criticizing the classical view of the value or worth of learning science, that is, the practical value, and the literate worth of science. The new contents of science classes are also proposed.
著者
西村 憲人 小川 正賢
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.73-76, 2012 (Released:2018-04-07)
参考文献数
2

近年,都市圏を中心に科学実験塾・塾の実験教室(以後,総称して「実験塾」と呼ぶ)が急速に増加している.実験塾は,設備面,安全面,技術面等を考慮すると,通常の塾よりもコストの高いコンテンツであると思われるにもかかわらず,相次いで開校されるにはそれ相応の需要があるからであろうと推察される.日本科学教育学会第 36 回年会では,実験塾のニーズの区分とそのニーズを解明するための分析枠組を提案した.本発表では,保護者に対して行った Web アンケート調査の結果を報告する.保護者のニーズとして,「受験のため」という教育における「実利的ニーズ」は少なく,「科学に興味・関心を持ってほしい」という「本質的ニーズ」の側面が強いことが確認された.また,実験塾に「通わせたくない」保護者は「経済的な理由」を多く挙げており,「もっと月謝を安くしてほしい」という「市場におけるニーズ」の存在も見受けられる.
著者
仙波 愛 小川 正賢
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.69-80, 2001-06-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
25
被引用文献数
2

The exhibitions of the Exploratorium, founded in 1969 by the physicist Frank Oppenheimer, are believed to be one of the origins of "hands-on exhibitions" in science museums. The mission statement of the Exploratorium, "the museum of science, art and human perception" indicates clearly that their goal is not to exhibit what science really is. The purpose of this research is to examine the relationship between Oppenheimer's thought development and the crystallization of his idea of a new type of museum, Exploratorium, through deciphering various kinds of documents on his life and thought. The findings are as follows : (1) his insistence on art and sensibility comes from the fact that his mother was a professional painter, his family loved arts, and he was strongly committed to music, (2) his view of science was formed through the experience of "playing with haywire things" and the influence of his brother in childhood, his experience as a physicist, the commitment of ESS and PSSC, and teaching experience in high schools and university, (3) his view of a museum was formed through the experiences of ESS and PSSC activities, and development of his "Library of Experiments" at Colorado University.
著者
小川 正賢
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.41-46, 2017-11-11 (Released:2018-07-01)
参考文献数
25
被引用文献数
1

「大学教育の国際化」という文脈で,大学の授業を英語で行うことが求められるようになってきているが,「教授学習言語を英語化する」とはいったい「具体的にはどのようなことなのか」を問う研究は多くない.本稿では,「英語と日本語との関係性」という視点から,大学教育の教授学習言語問題を見直す第一歩として,日本の理学系高等教育の創成期での「関係性」を探ることを試みる.具体的には,先駆けの一つであった札幌農学校を事例として取り上げ,そこでの教授学習言語の実情(創設期の外国人教師による英語の講義が,卒業生を中心とした日本人教師になって,講義が日本語化する状況)を受講ノートという史料に基づいて解読し,「英語と日本語との関係性」について,問題点を整理する.
著者
小川 正賢
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.105-110, 2012 (Released:2018-04-07)
参考文献数
16

理工系博士号取得者の未就労問題は日本でも大きな課題となっており,政府,大学,研究機関,研究資金提供機関等も各種の方策を考案・実施してきているが,目にみえる成果は得られていない.それとは対照的に,博士号取得者の就労が問題化していない国もある.フィンランドはその一例である.本事例研究の目的は,フィンランドでは博士号取得者の就労問題に関していかなる方策が立てられているのか,その特徴を解明することにある.2012年初夏に実施したフィンランドの2大学への訪問調査と,文献資料の分析を行った.主な知見は,博士教育の当事者たち(教授,プログラム・コーディネータ,大学院生,大学管理者,政府担当者,開発公社担当者)が「就業スキル(転移可能なスキル)開発」を大学院教育の重要な要素として認識しそれを導入しはじめていることである.
著者
野上 智行 小川 正賢 稲垣 成哲 川上 昭吾 中山 迅 小川 義和 竹中 真希子
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,『科学技術コミュニケーター』としての能力を備えた理科教師の育成を目指すために,大学・大学院と科学系博物館の連携を前提とした教師教育プログラムの開発と評価に取り組んできた。総括グループでは,科学系博物館との連携をベースとした『科学技術コミュニケーター』としての教師教育プログラムを開発するための基本的な諸要件,すなわち,プログラムの根幹となる目的・目標論,学習論,方法論,内容論,評価論について検討が行われた。5つの地域グループでは,各地域の科学系博物館等と連携して,教師教育プログラムの具体的な開発がなされた。主要な研究成果としては,愛知グループでは,愛知県内の博物館と連携したワークショップの企画・実施,博物館のハンズオン展示の調査,博物館を利用した国語教育と理科教育を結ぶための教師支援の実践的研究等が行われた。宮崎グループでは,宮崎県総合博物館との共同によって,火山灰に関する授業をべースとした中学理科教師のサイエンス・コミュニケータとしての力量を育成するための実践的研究が行われた。広島グループでは,広島市子ども文化科学館や広島市森林公園昆虫館における子ども向けの科学普及教室の分析や小学校と連携した授業開発をベースとした教師教育プログラムの試案が作成された。兵庫グループでは,携帯電話からアクセス可能なバーチャル博物館が構築されるとともに,その有効性が実験的に評価された。高知グループでは,高知県立牧野植物園などを対象にして教師教育プログラム開発のための可能性が検討された。特筆すべきこととして,本研究における一部の業績に対して,日本科学教育学会(JSSE)の論文賞(2007年8月),日本科学教育学会(JSSE)の年会発表賞(2006年8月)の2件が授与されていることを指摘できる。