著者
佐藤 信 大場 俊輝 高橋 康次郎 高木 光良 難波 康之祐 小泉 武夫 鈴木 明治
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.643-647, 1978
被引用文献数
1

長期貯蔵清酒の一般成分ならびに熟成に関与する成分の分析を行ない, 次の結果を得た。<BR>1) 熟成に関与する成分の貯蔵年数による変化のパターンはこれまでに報告した結果とほぼ同様であった。<BR>2) DFCYが貯蔵年数11年以上の試料には全く検出されなかった。<BR>3) 貯蔵につれて<I>iso</I>-AmOHが増加し, <I>iso</I>-AmOAcが減少した。<BR>4) 96年長期貯蔵清酒は, 通常の清酒に比べて, アミノ酸, 有機酸組成が大きく異なり, 長期貯蔵により成分が変化したものと推定された。また, Feが極めて多く, Cuが少なかった。さらに, アセトンが多量に検出された。筆者らが設定した清酒の甘辛と濃淡の等高線図上に96年長期貯蔵清酒をプロットしたところ, 濃醇辛口の清酒であった。
著者
角田 潔和 小泉 武夫 小玉 健吉 野白 喜久雄
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.951-955, 1987
被引用文献数
1 1

(1) 樹液酵母1670株を用いてプロテアーゼを菌体外に分泌する酵母のスクリーニングを行った.<br> (2) 二次スタリーニングを通過した菌体外プロテアーゼ分泌株32株を供試して培養濾液中のプロテアーゼを測定したところ,いずれの株も酸性で働くプロテアーゼの分泌が最も高かった.これに対して中性で働くプロテアーゼの分泌はわずかであり,アルカリ性におけるプロテアーゼは痕跡程度の分泌であった.これらの供試株中から最も酸性で働くプロテアーゼの強い1株を得,最終目的株とした.<br> (3) この最終目的株<i>Candida</i> sp. KSY-188-5について菌学的諸性質を検討し,偽菌糸形成能,炭素源の醗酵性,資化性,赤色油滴状物質の発現および色素の溶出等より,本株を<i>Candida pulcherrima</i>と同定した.
著者
小泉 武夫 角田 潔和 山本 多代子 鈴木 明治
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.173-178, 1979-03-15 (Released:2011-11-29)
参考文献数
37
被引用文献数
3 3

β-フェニルエチルァルコールとβ-フェニルニチルアセテートはバラの香気に似たもので, 多くのアルコール性飲料の香気付与のために重要な化合物である。特にβ-フェニルエチルァルコールは種々のアルコール性飲料の中にかなりの量で存在している。例えば筆者らが分析した種々のアルコール性飲料中の存在量は次の様であった。清酒40~60ppm, ウイスキー10~15ppm, ビール15~20ppm, ブランデー5~6ppm, しょうちゅう30~40ppm。本報告ではこのβ-フェニルエチルアルコールとβ-フェニルエチルアセテートの酵母による生成について検討した。その結果は次のとうりである。1.フェニルアラニンからβ-フェニルエチルアルコールの生成量には, 供試酵母間に差異があり, 清酒酵母はビール酵母, ワイン酵母よりその生成は強い。2.清酒酵母の2, 3, 5-トリフェニルテトラゾリウムクロライド還元能とβ-フェニルエチルァルコールおよびβ-フェニルエチルアセテート生成能との関連は供試酵母間に大きな差異がある。その順位は赤色コロニータイプ>赤桃色コロ論一タイプ>桃色コロニータイプ>白桃色コロニータイプであった。3.β-フェニルェチルァルコールは, フエニルァラニンが酵母による脱炭酸, 脱アミノ反応にょって生じる。また我々の実験結果ではチロシンが酵母によって分解されるときも少量生じることを知った。
著者
鈴木 昌治 小泉 武夫 野白 喜久雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.367-373, 1986-06-15 (Released:2011-11-29)
参考文献数
28
被引用文献数
1

吟醸香の生成機作, 特に発酵条件との関係については未だ不明な点も多く, 本稿でも, これから解明されるべき問題とされているところも多いが, 実験事実に勝るものはない。著者らは吟醸もろみの芳香生成の動的変化を適確かつ詳細に分析した。吟醸造りに与える示唆も非常に多い。関心ある読者の方々に一読をおすすめする。
著者
池見 元宏 斎藤 久一 小泉 武夫 野白 喜久雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, pp.831-834, 1981-12-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
21
被引用文献数
1

1. 秋田県産市販清酒特級酒5点 (本醸造酒3点, 純米酒1点, 吟醸酒1点), 1級酒7点 (本醸造酒3点, 純米酒1点, 純米吟醸酒1点, 普通1級2点), 2級酒6点 (いずれも普通酒) の合計18点を試料として各種タイプ別清酒の成分比較を行った。2. 一般成分の分析から純米酒, 本醸造酒は味の濃醇な清酒, 2級酒はアミノ酸度が少く, 糖分, 日本酒度が高い淡れい甘口型であることなどを知った。3. 微量成分としては3ーデオキシグルコソン値, アルデヒド量, フーゼル油, エステル, ケト酸, フェリシアナイド還元値を比較したところ, その含有量には清酒のタイプ別により特徴的差が見られた。4. 有機酸の組成では純米酒にコハク酸, リンゴ酸が多いこと, アミノ酸組成でも清酒のタイプ別でその構成比が異なることを知った。5. 香気成分では吟醸酒が高級アルコール類およびエステル類ともに多量で, 級別では特級<1級<2級酒の順位であり, 高級酒に香気成分が高い傾向にあることを知った。
著者
鈴木 昌治 小泉 武夫 野白 喜久雄
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.439-442, 1984

水田の稲穂にしばしばみられる糸状菌の菌叢「稲麹」を, 昔, 一部の酒造蔵では種麹として使用し米麹を得, これで清酒を仕込んだという記録を古文書から多く見出したので, このことについて検討したところ次のような所見を得た。<BR>1) 福島県, 埼玉県, 東京都の水田から稲麹を採取してきて, そこから糸状菌を純粋分離したところ, 分離された菌の大半は<I>U. virens</I>で, それに混じって<I>Aspergillus</I>属も多数分離された。 この両菌以外の糸状菌はほとんど分離されなかった。<BR>2) 分離した<I>Aspergillus</I>属について, その形態的, 生理的性質の検討を多項目にわたって行ったところ, アニスアルデヒド培地上での胞子の変色, 梗子の形や状態, 頂のうの型, 胞子の大きさ, 菌叢の色調, アフラトキシンの生成などにおいて<I>A. oryzae</I>の性質を示した。