著者
岡田 俊樹 前田 安彦 角田 潔和 鈴木 昌治 小泉 武夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.8, pp.674-681, 1999-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

Kona-koji was prepared without the addition of a koji starter (Tanc-koji) for the production of Imo-shochu. The spores of molds carried in the air affected growth during the preparation of koji. So, we isolated the spores of molds from the vicinity of the places used for the preparation of koji and production of shochu.As shown by the results, a 103 order of colonies per gram·koji of A. oryzae were isolated from kojimuro solids, shochu distillery solids and from the leaves of N. antiqua that are used to wrap the koji A. oryzae spores were also isolated from the air of the koji-muro and shochu distillery. In addition spores of A. niger and other molds were also isolated.We measured the enzyme activity of these strains and investigated their physiological characteristics. Their acidity was higher than that of the standard strains. The characteristics of these strains agreed with those of strains isolated from kona-koji. Therefore, we found that spores of Aspergillus sp. were mixed with the raw material for koji from the leaves of N. antiqua or airborne spores, and these spores grew during the preparation of koji.Further more, spores of other mold contaminating koji were isolated from the leaves of N. antiqua, but they were not detected in the koji. We found that their mold were selected against as the temperature of koji rose to 40C during its preparation.
著者
岡田 俊樹 前田 安彦 金内 誠 角田 潔和 鈴木 昌治 小泉 武夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.10, pp.849-852, 1999-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

青ヶ島の芋焼酎製造に用いられる粉状麹の諸性質を調べた。(1) 粉状麹の製麹過程中の水分含量の変化は, 引込み時に45.0%であったものが, 7日目の出麹時は, 32.0%まで減少した。これは, 一般的な散麹の値より10%程度高かった。(2) 粉状麹の製麹中の酸度は, 出麹まで増加し続け, 4.0meに達した。これは, 一般的な焼酎用麹の酸度よりわずかに低いものであった。(3) 粉状麹の出麹時の各種酵素力価は, AAは1, 100U/g・麹, GAは260U/g・麹であり, 白麹菌を用いて製麹した焼酎用麦麹と比べて, AAで約12倍, GAで約1.4倍高かった。APは11,900U/g・麹で, 焼酎用麦麹と同等であり, ACPは9, 800U/g・麹で, 約3倍高い値を示した。また, 耐酸性α-アミラーゼは530U/g・麹だった。(4) 粉状麹の製麹過程中の細菌酸度は, 製麹開始後, 4日目に3.1meに達したが, その後減少し, 出麹時は2.4meだった。これは, 一般的な散麹の値より高い値だった。以上の結果より, 青ヶ島の芋焼酎製造に用いられている粉状麹は, 酸度が高いことや各種の酵素力価より, 焼酎用麹として十分な品質を有していることが明らかとなった。
著者
岡田 俊樹 前田 安彦 角田 潔和 鈴木 昌治 小泉 武夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.2, pp.150-157, 1999-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

伊豆諸島の青ヶ島で芋焼酎の製造に用いられている粉状麹の製麹法について現地調査を行うとともに, 粉状麹の製麹過程中の麹の状貌変化や主要糸状菌の検索とその諸性質を調べた。(1) 粉状麹の製麹法の特徴は, 原料大麦を妙こう処理してから粉状にして用い, 種麹などのスターターを使わずに自然種付によって行うことから製麹に約1週間を費やすことにあった。また, 製麹時に, タニワタリの葉が用いられていた。(2) 青ヶ島には7カ所の製麹場があり, そのうち一醸造場の製麹過程中の糸状菌の動態を調査した。引込みから24時問目にはピンク色の胞子と黄色の胞子が混在していたが, 41日目までに黄色の胞子を持った菌株が急激に増殖し, その後も穏やかな増殖が続き, 出麹まで7目間を要した。出麹時の麹は黄色の胞子が2.7×1011個/g・麹, 黒色の胞子は3.1×1010個/g・麹で, 黄色の菌株がセ体の粉状麹であった。(3) 製麹過程中の培養物および出麹時の麹より分離した菌株の同定を行った結果, 粉状麹に優勢して着生する糸状菌はA. oryzae groupに属する菌種であり, 他にA. niger groupがわずかに混在する菌相であった。(4) A. oryzae groupの生理学的牲質を調べた結果, 生酸性においては, 多酸性の株が多く, 麹酸は, 全ての株で高い生産性が認められた。また, 酵素力価は, α-アミラーゼと中性プロテアーゼ活性において菌株間に大きな違いがみられ, さまざまな性質の菌が混在していた。(5) A. niger groupの生理学的性質を調べた結果, 生酸性は, A. oryzae groupより高く, 酵素力価は, α-アミラーゼ, 中性プロテアーとも低かった。本研究を行うにあたりご協力いただきました青ヶ島酒造合資会社奥山喜久一氏ならびに青ヶ島役場の方々に深謝いたします。
著者
吉沢 淑 尾崎 裕子 武藤 敏昭 進藤 斉 角田 潔和 小泉 武夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.12, pp.990-997, 1998

A protease was purified from the sarcocarp of Yubari melon fruit, the raw material used in the production of melon wine, by a series of treatments consisting of ammonium sulfate precipitation, gel filtration and ion-exchange chromatography. The enzyme was a monomer protein without a carbohydrate moiety. Its characteristics are as follws: molecular weight 66 kDa, isoelectric point pH 8.5, optimal temperature 40°C, and enzyme activity is promoted in the presence of Mn<SUP>2+</SUP>. It is a characterisric serine protease and preferentially hydrolyzes peptide bonds on the carboxyl terminal side of Phe and Arg.<BR>The sequence of the N termcnal 20 amcno acods was determined.
著者
進藤 斉 矢部 修平 角田 潔和 小泉 武夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, pp.61-68, 2006-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

低温醪において液部のMet濃度が増加せず, 低濃度で一定推移し, 酵母菌体内にSAMを高蓄積する現象に対して, 低温が及ぼす影響を個別に検討した。1. 単発酵培地では, 糖が同濃度条件でY, Pまたは麹エキス由来成分が低濃度条件であってもMATFase活性は高くならなかった。また10℃の低温培養でも同様であった。MATFase活性は, 低温における菌体内SAM高蓄積との直接的な関連は薄いと推察した。2. 醪ではSAMを菌体内に高蓄積している10℃発酵条件下でも必ずしもMATFase活性が高くならなかった。さらにMet添加でMATFase活性が高く, かつ10℃でもSAMは高蓄積されないことが示された。このため, 本酵素活性と低温醪でのSAM蓄積の関連性は低いこと明らかとなった。3. 10℃醪では, SAM量が228~242mg/醪1kgと15℃の180mgに比べて多かった。しかし両温度条件でもSAMの90%は菌体内に存在し粕へ移行したことより, 低温醪でSAM生成量が多くても末期管理が適切ならば酒質への悪影響はないと推察した。4. 糖とアミノ酸が連続的に供給され並行複発酵するモデル培地として固液共存培地を作成した。グルコースは順調に消費され, 培養終了時のアルコールが約15%, アミノ酸度も徐々に増加し最大4mlとモデル培地として妥当な経時変化であった。5. 固液共存培地では, 10℃, 15℃両条件で総アミノ酸量及び各アミノ酸組成でも大部分は増加したが, Metは10℃で低濃度のまま一定推移する特徴的な動向を示した。また培養終了時の菌体内SAM量は, 10℃では19.6mg/1010cells, 15℃では同7.0mgと固液共存培地においても醪と同様に低温で高蓄積された。並行複発酵かつ低温での液部Metの低濃度推移と酵母菌体内SAM高蓄積現象は, 米, 米麹を用いずに再現可能であった。またMetが低濃度で徐々に供給されることが, 低温での酵母のMetの選択的取り込みに影響していると推察された。
著者
吉沢 淑 鈴木 大介 進藤 斉 角田 潔和 小泉 武夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.217-223, 1997-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
5
被引用文献数
3 3

(1) 清酒の主要な香気成分とその類縁物質をモデル清酒に添加し, その酒質への影響をプロファイル法を用いた官能評価により調べた。(2) モデル清酒のアルコール分が高いと, 添加香気物質の香りへのマスキング効果が大きくなった。(3) 酢酸イソアミル, カプロン酸エチルなどのエステルや高級アルコール, ソトロンなど多くの物質がモデル清酒の上立香や含み香を増強させ, 果実様香, エステル様香, 老酒・シェリー様香, 焦臭などを付与, 増加させた。一方, パルミチン酸エチルは上立香を低下させた。(4) これらの物質の多くはモデル清酒の味を変化させた。中でも酢酸イソアミルは甘味を, 酢酸フェネチルは酸味を顕著に増強した。(5) 顕著な効果を示した物質を2種類組み合わせて混合添加した試料の香味は複雑な変化を示した。
著者
小泉 武夫 角田 潔和 原 高教 鈴木 明治
出版者
日本生物工学会
雑誌
醗酵工学会誌 (ISSN:03856151)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.p745-751, 1978-11
被引用文献数
1

In the previous paper (Hakkokogaku 55 : 167-174,1977), we trapped koji-aroma components on coconut-shell sctivated carbon attached to the air exhaust of an automatic koji-making machine. By this method, chemically neutral components, 9 alcohols, 23 esters and 9 carbonyl compounds, were detected. This paper deals with the volatile organic acids and amines in koji-aroma adsorbed on activated carbon. These components were extracted with a mixture of ether and n-pentane from the carbon and esparated with ion exchange resins.The fraction of volatile organic acids was analyzed by gas chromatography and carboxylic acid analyzer and five volatile organic acids, acetic, propionic, butyric, caleric and caproic acids were found, of which acetic acid was predominant. The volatile amine fraction was analyzed by thin layer chromatography and gas chromatography. Three volatile amines, ethlamine, i-butylamine and i-amylamine were identified in koji-aroma absorbed on carbon.In addition, tetramethylenediamine, ethanolamine, pentamethylenediamine and β-phenyl-ethylamine were detected in rice koji by extraction with ethanol.
著者
森 哲也 金内 誠 進藤 斉 角田 潔和 吉澤 淑 小泉 武夫
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.9-15, 2004-01-31
参考文献数
26
被引用文献数
1

金華火腿から分離された微生物309株より, 火腿脂質の不飽和化に関与する菌株のスクリーニングを行い, 糸状菌6株を選抜した。この中でA-59は脂質中の不飽和脂肪酸の割合が82.0%と選抜菌株の中で最も高く, 特にオレ・イン酸, リノレン酸含有率が高かった。A-59は各種形態試験の結果, <I>Aspergillas oryzae</I>と同定された。本菌株は, 培養温度25℃, 初発pH6.0, 0.5%コール酸ナトリウム, パルミチン酸とステアリン酸を炭素源として, その比率が60 : 40で最も高い不飽和脂肪酸量を示した。また, 本株はパルミチン酸, ステアリン酸を菌体内に取り込み, オレイン酸やリノール酸, リノレン酸を生産していると推察した。以上より, 火腿脂質の不飽和化は<I>A. oryzae</I> A-59を中心とする6株が作用していることが明らかとなった。
著者
矢部 修平 吉田 直人 進藤 斉 角田 潔和 葉坂 勝 小泉 武夫
出版者
土壌微生物研究会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.109-115, 2006
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究では,衛生的なコンポストを生産するには発酵初期の急激な品温上昇が重要であると考え,良好に発酵が立ち上がる高温コンポスターのミクロフローラを把握することを目的とした。発酵初期の温度上昇に伴うミクロフローラの変化を経時的に解析した結果,深層から品温上昇が始まり,生菌数がほぼ一定であったにも関らず,44〜52℃(0〜4時間後)および72〜80℃(6〜20時間後)にかけてフローラが大きく変動した。この期間に原料由来の腸内細菌や大腸菌群は淘汰された。72℃から80℃(6〜20時間後)にかけての優占菌の変動を16S rDNAライブラリー法を用いて解析した結果,Bacillus属からGeobacillus属へ遷移することが明らかとなった。さらに発酵2日後には,表層から深層まで80℃以上に達し,表層と深層ではGeobacillus属,中層ではThermus属が優占した。このように,深度別に特徴的なフローラが形成された。このことから,200cmと深く堆積することにより好熱菌の多様性を高めていると推察した。