著者
金 吉晴 小西 聖子
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.7, no.Special_issue, pp.155-170, 2016-05-31 (Released:2016-06-02)

註)以下に示すのはPEの開発者であるEdna Foa教授によって作成され,日本で翻訳出版されている下記のマニュアルを,開発者の許可の元に抜粋したものである。この抜粋版は治療プロトコルの概要を示すだけのものになっており,これだけを用いて実際に治療を行うことはできない。PEの実施に当たっては,正規の指導者による24時間のワークショップに参加し,所定のスーパーバイズを受ける必要がある。なお心理教育,想像エクスポージャー,現実エクスポージャー,エクスポージャー後の処理などは,下記のマニュアルでは豊富な事例をもとに,どのようにして対話的に患者の理解を深めていくのかが示されている。本プロトコルでは,紙数の制約のために,その部分が記されていない。あくまで治療手続の概要にすぎないことを理解されたい。金 吉晴,小西聖子(監訳):PTSDの持続エクスポージャー療法.星和書店,東京,2009.(Foa, E., Hembree, E., Rothbaum, B.: Prolonged exposure therapy for PTSD. Oxford University Press, New York, 2007)
著者
小西 聖子 小西 聖子 山上 皓
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

触法精神障害者の処遇についてはこれまで様々な議論が行われてきた。しかしその実態についての研究は症例報告等にとどまることが多く、その全体の概観さえも不明であった。わが国では触法精神障害者について法務省により毎年、全国規模の調査が行われている。この調査を基礎にして、再犯に関するその他の資料を収集し、分析することにより、触法精神障害者の犯罪及び処遇に関する知見をえた。今回我々はこの全例について1981年から1991年までの11年間における再犯に関する追跡調査を行い4つの分析を行った。第一には、946人全てを対象として、概観をえるための解析を行った。この時点で明らかになったことは、再犯者にも様々なサブグループが存在し、精神分裂病者の殺人事件はむしろ再犯全体の中では異質な要因として影響を及ぼしているという事である。次にこれら487件の内容についての概要を示した。病名については精神病質、覚醒剤中毒とされた者の再犯率が最も高くそれぞれ100%、66%であり、精神分裂病や躁病では15%,11%と低率である。しかし精神分裂病の再犯事件には凶悪犯罪が比較的多く含まれている。更に殺人と放火については、一般犯罪者を対照群として比較を行っている。三番目に207例のうち、再犯回数が最も多かった2例について事例検討を行った。この2例は精神分裂病であり、さらにいくつかの共通の特徴を持っていた。最後に特に処遇上の問題が大きいと考えられる精神分裂病の殺人の事例に対象を限ってロジスティックモデルを使った解析を行った。現在我々は1994年における触法精神障害者のデータを入手し、更に分析中である。本研究の内容に関してはさらに分析手法を洗練させる必要もあり、これらをあわせて研究を進める予定である。
著者
今野 理恵子 淺野 敬子 正木 智子 山本 このみ 小西 聖子
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.295-305, 2016 (Released:2017-04-13)
参考文献数
26

【目的】性暴力被害後3カ月以内に精神科初診となった患者(急性期)とそれ以降に初診となった患者(慢性期)の転帰や症状評価の比較検討を行い,臨床の実態を明らかにする.【方法】2012年6月~2015年11月末の3年半に性暴力被害後に初診となった患者のカルテから,転帰や症状評価,認知行動療法の実施実態等の情報を収集し分析する.【結果/考察】①調査対象者数は初診時に被害から3カ月以内の急性期群21名,それ以降の慢性期群12名の計33名であり,急性期群と慢性期群で有意差が見られたのは精神科既往歴(p=.024)であった.②急性期群21名の転帰は,寛解者が6名,治療中断者が9名,治療中の者が6名であった.慢性期群においては,寛解者はなく,治療中断者が3名でいずれも,1回か2回の診察で中断となっていた.寛解者の被害から診察に至るまでの平均日数は1カ月程度であり,治療中の者や治療中断者の50日余りと比べて少なく,被害後早い段階で診察に至ることがより良い予後につながる可能性が考えられる.中断者は,平均診察期間が短く治療の方針を立てる前に中断となってしまったことがうかがえる.③急性期群,慢性期群の初診後直近と2015年11月30日以前の直近の前後比較を行った結果,急性期群ではIES-R(p=.0108),DES(p=.0208),BDI-II(p=.0277),JPTCI(p=.0469)の心理検査において有意差が認められた.④認知行動療法を行うまで,初診から急性期群で6カ月,慢性期群で10カ月ほどかかっていた.急性期群で認知行動療法を実施した7名すべてのIES-R(p=.0180),CAPS(p=.0464)得点が下がっており,転帰も寛解か軽快になっていた.慢性期群の場合も,実施した5名は,有意差は認められなかったがIES-R,CAPS得点は下がっていた.【結論】性暴力被害者に対して認知行動療法を行うことが,PTSD症状を減らすためには,有効であると考える.ただし,認知行動療法実施には一定の準備期間が必要であり,その期間の中断をいかに防ぐかが今後の課題である.
著者
小西聖子
雑誌
日本=性研究会議会報
巻号頁・発行日
vol.8, pp.28-47, 1996
被引用文献数
2
著者
金 吉晴 小西 聖子
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.155-170, 2016

註)以下に示すのはPEの開発者であるEdna Foa教授によって作成され,日本で翻訳出版されている下記のマニュアルを,開発者の許可の元に抜粋したものである。この抜粋版は治療プロトコルの概要を示すだけのものになっており,これだけを用いて実際に治療を行うことはできない。PEの実施に当たっては,正規の指導者による24時間のワークショップに参加し,所定のスーパーバイズを受ける必要がある。なお心理教育,想像エクスポージャー,現実エクスポージャー,エクスポージャー後の処理などは,下記のマニュアルでは豊富な事例をもとに,どのようにして対話的に患者の理解を深めていくのかが示されている。本プロトコルでは,紙数の制約のために,その部分が記されていない。あくまで治療手続の概要にすぎないことを理解されたい。金 吉晴,小西聖子(監訳):PTSDの持続エクスポージャー療法.星和書店,東京,2009.(Foa, E., Hembree, E., Rothbaum, B.: Prolonged exposure therapy for PTSD. Oxford University Press, New York, 2007)
著者
中島 聡美 金 吉晴 小西 聖子 白井 明美 伊藤 正哉
出版者
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

複雑性悲嘆の治療法の開発および有効性の検証のために2つの研究を行った。(1)Shearが開発した複雑性悲嘆療法を複雑性悲嘆を主訴とする成人(6例)を対象に、実施したところ、治療後に複雑性悲嘆症状、うつ症状、PTSD症状のいずれも有意な改善を示した。(2)Wagnerによるインターネットを媒介とした認知行動療法を参考に筆記課題を行う治療プログラムを開発した。重要な他者を喪失した一般成人遺族28名を対象に紙面べ一スにて実施したところ、筆記後において複雑性悲嘆での有意な減少が見られた。複雑性悲嘆に対して2つの認知行動療法の有効性が示唆された。