著者
中﨑 公仁 岡 真一 佐々木 祐典 本望 修
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.2, pp.93-97, 2015-02-20 (Released:2015-03-05)
参考文献数
17

われわれは基礎研究と臨床研究において, 脳梗塞に対して, 骨髄間葉系幹細胞の経静脈的投与により, 機能回復が得られることを報告してきた. 2007年より自家骨髄間葉系幹細胞を用いた, 脳梗塞に対する臨床研究を行い, 同治療の安全性と有効性を報告した. その結果を踏まえて, 2013年より, 医師主導治験 (Phase III) に取り組んでいる. この治験は, 薬事法 (平成26年11月25日より,「医薬品, 医療機器等の品質, 有効性及び安全性の確保等に関する法律」に改名) に基づき, 厳格な品質管理のもと, 細胞医薬品 (細胞生物製剤: 自己骨髄間葉系幹細胞) を製造し, 適応となった症例を実薬群, プラセボ群へランダム化二重盲検法で割り付けて, 同治療の有効性を検証し, 薬事承認を目指している. 本稿では, 脳梗塞に対する骨髄間葉系幹細胞移植治療の臨床研究と, 現在進行中の医師主導治験の概要について報告する.
著者
佐々木 雄一 佐々木 祐典 佐々木 優子 中崎 公仁 岡 真一 浪岡 隆洋 浪岡 愛 柿澤 雅史 本望 修
出版者
日本脳循環代謝学会
雑誌
脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌) (ISSN:09159401)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.281-289, 2017 (Released:2017-08-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1

脳梗塞は本邦における要介護者の原因疾患第1位であり,新しい治療法の開発が望まれてきた.我々は骨髄間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)の移植が,脳梗塞を含む神経疾患に対して治療効果を発揮することを報告してきた.現在,基礎・臨床研究の良好な結果を受けて,自己培養MSCの静脈投与による医師主導治験を,脳梗塞および脊髄損傷に対して実施している.MSC移植の治療効果によって,失われた運動・感覚機能が回復する過程には,脳の可塑性の変化が大きく関わっていることが示唆されている.また,我々は実験的脳梗塞モデルに対するMSC移植にリハビリテーションを付加した結果,運動能力のさらなる回復が得られることを報告した.この基礎研究の結果から,MSC治療が臨床で実用化された暁には,再生医療におけるリハビリテーションの役割はますます重要になると考えられる.
著者
本望 修
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.12, pp.979-984, 2016 (Released:2016-12-25)
参考文献数
3
被引用文献数
1

われわれは, これまでの研究成果に基づき, 自己培養骨髄間葉系幹細胞を薬事法下で一般医療化すべく, 治験薬として医師主導治験を実施し, 医薬品 (再生医療等製品) として実用化することを試みている. 脳梗塞は, 2013年2月に治験届を提出し, 医師主導治験 (第Ⅲ相) を開始している. 脊髄損傷は, 2013年10月に治験届を提出し, 医師主導治験 (第Ⅱ相) を開始している. 今後, 数年後をめどに薬事承認を受けることを目指して現在進行中である. 治験の詳細は, 本学公式ホームページ上の専用ページに掲載済みである (http://web.sapmed.ac.jp/saisei/index.php).
著者
佐々木 優子 佐々木 祐典 小野寺 理恵 岡 真一 本望 修
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

これまでの研究から、老化により生体内のMSCが機能低下(stem cell failure)を起こすことが、個体の老化の原因となっていると考えており、本研究で、MSCの投与・補充による“抗加齢効果”をもたらす詳細なメカニズムを解析し、健康寿命の延長をもたらす治療薬の開発に展開することができると考えている。本研究の成果により、老化の本質が明らかとなり、健康寿命の延長が可能となれば、超高齢化社会を迎えているわが国において、大きな福音となり、波及効果は極めて高いと思われる。
著者
佐々木 雄一 山下 達郎 柿澤 雅史 石合 純夫 本望 修 佐々木 祐典 岡 真一 中崎 公仁 佐々木 優子 浪岡 隆洋 浪岡 愛 小野寺 理恵 奥山 航平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】近年,脳梗塞に対する急性期治療の進歩に伴い,死亡率は低下している。しかし,後遺症は日常生活を困難にし,我が国における要介護者の原因疾患第一位となっており,新しい治療の開発が望まれている。脳梗塞に対する骨髄間葉系幹細胞(MSC)の経静脈的移植は,後遺症を改善する新しい治療法として注目されており,前臨床試験と自主臨床研究(12例の脳梗塞亜急性期患者を対象)での良好な結果に基づき,2013年から,札幌医科大学ではMSCを使用した再生医療の医師主導治験を行っている(第三相)。本治験は二つの治験から構成されており,まず,治験①として,"亜急性期の脳梗塞患者を対象とした二重盲検無作為化比較試験"(発症60日±14日に治験薬を投与)を行っている。そして,治験①終了後,プラセボ群だった患者には,治験②として,"慢性期の脳梗塞患者を対象とした単群非盲検試験"(発症150日±14日に細胞が入った実薬を投与)を行い,安全性と有効性の評価をしている。今回,治験②(慢性期の脳梗塞患者を対象とした単群非盲検試験)においてMSC移植を受けた脳梗塞患者1名の身体機能の経時的変化を,Fugl-Meyer assessment(FMA)に注目して報告する。【方法】対象は30代,男性で,治験②において発症166日目に治験薬の投与を受けた脳梗塞患者である。身体機能は,FMAを使用し,転院時,治験①での投与直前,投与1週後,1ヶ月後,3ヶ月後,治験②での投与1週後,1ヶ月後,3ヶ月後の計8時点に経時的評価を行った。【結果】上肢機能に注目したFMAでは,治験②での治験薬の投与を境にして,大きく改善した。さらに,上肢機能におけるサブ解析では,手関節機能,手指機能,協調性・速度の項目で著しい改善を示していた。【結論】本症例では,発症後5ヶ月以上経過した慢性期においても,MSC移植を契機にして身体機能の更なる改善を示した。特に,MSC移植によって運動・感覚などの神経機能が回復するメカニズムには,移植直後からの神経栄養・保護作用,血液脳関門の安定化,血管新生作用,再有髄化などに加えて,リハビリテーションとの組み合わせによって惹起される脳の可塑性の変化が大きく関わっていることが示唆されており,今後は,症例数を増加するとともに,本治療に適した評価方法の確立やリハビリテーションプログラムの再構築,さらには診療報酬体系を含めたリハビリテーション全体の変革が必要と考えられる。
著者
本望 修
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.182a, 2015-10-10 (Released:2015-12-26)

PDFファイルをご覧ください。
著者
本望 修 佐々木 祐典 浪岡 愛 中崎 公仁 浪岡 隆洋
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

脳主幹動脈閉塞による急性期脳梗塞においては、閉塞血管の灌流領域の脳代謝および機能は低下し、脳実質や脳血管は脆弱化している。一方、近年、血栓溶解療法や脳血管内治療の急速な進歩により、閉塞血管の再開通率は80-90%に至っている。このため、脆弱化した脳実質組織や毛細血管に対して、急速に血流が再開されることよって、脳細胞障害や出血性合併症等を引き起こす再灌流障害は、極めて重要な病態となってきており、急いで対応すべき課題となっている。我々はこれまで、脳梗塞動物モデルを用いた基礎研究で、骨髄幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)の静脈からの全身投与が治療効果を有することを多数報告してきた。治療効果のメカニズムとして、①神経栄養因子を介した神経栄養・保護作用、②サイトカインによる抗炎症作用、③脱髄軸索の再有髄化、④損傷軸索の再生、⑤軸索のSprouting、⑥血管新生による血流増加、⑦神経系細胞への分化による脳細胞の再生、⑧免疫調節作用などが、多段階に作用することが判明している。更に近年、これらの作用メカニズムに加え、⑨血管内皮細胞やペリサイトを再生させ、血液脳関門(blood brain barrier: BBB)を修復する治療メカニズムも報告している。本研究では、一過性中大脳動脈閉塞モデル等を用いて、再灌流障害に対する骨髄幹細胞移植の治療効果を詳細に検討することを目的とする。さらに、血栓溶解療法(tPA静脈内投与)と細胞移植治療との相互作用を解析し、tPAの副作用に対する軽減効果についても検討しており、補助金は適切に使用されている。
著者
本望 修
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.93-98, 2015-01-01

薬事法に基づき自己培養骨髄間葉系幹細胞を医薬品(細胞生物製剤)として実用化するべく,医師主導治験を実施している。これまで,前臨床試験(GLP試験)を完了し,GMP(good manufacturing practice)で細胞製剤(治験薬)を製造し,2013年3月より医師主導治験(第III相,二重盲検無作為化試験,検証的試験)を医薬品承認審査調和国際会議のgood clinical practice基準に基づいて実施中である。本稿では認知機能向上の可能性について言及する。
著者
本望 修
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.8, pp.574-579, 2011-08-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
37

われわれは,1990年代初期から,各種細胞(幹細胞を含む)を用いた神経再生治療へ向けた基礎研究を継続してきた.近年は,骨髄間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell:MSC)をドナー細胞とした神経再生研究に注目し,MSCは経静脈内投与で脳梗塞に対して著明な治療効果が認められるという基礎研究結果を多数報告してきた.これらの基礎研究結果に基づき,2007年1月より自己血清で培養した自己MSCを脳梗塞亜急性期の患者に対して静脈内投与を行い,安全性と治療効果について検討した.
著者
本望 修
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
雑誌
LiSA (ISSN:13408836)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.11-24, 2016-01-01

筆者らは1990年代初頭から脳梗塞や脊髄損傷の動物モデルに対して各種幹細胞をドナーとした移植実験を繰り返し行っている。なかでも,有用なドナー細胞として骨髄間葉系幹細胞に注目し,経静脈的に投与することで著明な治療効果が認められるという基礎研究結果を多数報告してきた。現在,自己培養骨髄間葉系幹細胞を薬事法下で一般医療化すべく,治験薬として医師主導治験を実施し,医薬品(細胞生物製剤)として実用化することを試みている。脳梗塞は,2013年2月に治験届を提出し,医師主導治験(第Ⅲ相)を開始している。脊髄損傷は,2013年10月に治験届を提出し,医師主導治験(第Ⅱ相)を開始している。数年後を目途に薬事承認を受けることを目指している。
著者
森田 智慶 本望 修 山下 敏彦
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.366-371, 2017-04-25

はじめに 本邦の脊髄損傷患者の年間発生数は5,000〜6,000人と言われており,総数は10万人を超える.その発生機序は,直達外力による脊髄組織の圧挫である一次損傷と,出血・浮腫・炎症などによる壊死や損傷神経線維の脱髄・軸索損傷などの二次損傷が関与すると考えられている1).今日の標準治療は,脊椎の整復固定術・除圧術といった手術療法や,リハビリテーションが一般的である.メチルプレドニゾロンの大量投与療法は,その有効性が疑問視され,また種々の重篤な合併症が散見されることから,2013年のガイドラインにおいて「推奨しない」と記されている2).一度受けた脊髄の損傷そのものを修復し得る治療法はいまだ存在せず,現在も患者は大きな後遺症を抱えたまま,その後の生活を余儀なくされている. われわれは1990年代から,脊髄損傷の実験的動物モデルを用いて,各種幹細胞をドナーとした再生医療研究を精力的に行ってきた.なかでも,脊髄損傷のみならず,脳梗塞やパーキンソン病など,他の多くの分野の再生医療研究において有用性が高いと注目されており,臨床応用が大いに期待できるドナー細胞として骨髄中に含まれる間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell:MSC)に着目した.われわれは,急性期から亜急性期の脊髄損傷動物モデルに対し,骨髄由来のMSCの移植実験を行い,良好な機能回復が得られたことを報告した1,3).これらの基礎研究結果に基づき,2013年11月には,脊髄損傷患者に対する医師主導治験を実施しており,再生医療等製品としての薬事承認を目指している. 本稿では,われわれがこれまでに行ってきた急性期から亜急性期,さらに慢性期の脊髄損傷に対するMSCを用いた再生医療研究の最新の知見と,現在本学で施行している自家MSC移植療法の医師主導治験の概要について述べる.
著者
本望 修
出版者
日本脊髄外科学会
雑誌
脊髄外科 (ISSN:09146024)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.248-250, 2016 (Released:2017-01-31)
参考文献数
3
著者
本望 修
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1175-1176, 2013
被引用文献数
1

骨髄中に存在する幹細胞をドナー細胞として使用するばあい,自分の細胞を使うことができるので,感染症,免疫拒絶反応,倫理面での諸問題がない.また,大きな利点として,脳神経の損傷した部位への直接移植のほか,静脈内投与でも治療効果が期待できます.静脈内に投与された骨髄幹細胞は,脳損傷の部位に到達して,死にかけている神経細胞を助けると同時に,自らも神経細胞になって治療効果を発揮する.<br>われわれは,自己の骨髄の中にある幹細胞をもちいて脳梗塞を治療することを試みており,本年より開始した医師主導治験についても,その一部を紹介します.