著者
山内 香奈
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.122-136, 2021-03-30 (Released:2021-11-16)
参考文献数
64
被引用文献数
2

本稿では,2019年7月から2020年6月までの1年間に『教育心理学研究』に掲載された29編のうち,有意性検定を用いた研究論文のサンプルサイズ設計に関する記述状況について概観した。その際,『心理学研究』,Japanese Psychological Research (JPR),Journal of Personality and Social Psychology (JPSP)のそれと比較し論じた。研究のサンプルサイズの根拠について何らかの記述がみられた論文の割合はJPSPが最も高く(93%),他の3誌(7―15%)の約8倍であった。また,検定力分析と同様,統計改革の柱である効果量や信頼区間が分析結果に併記されているかを調べたところ,概して4誌ともサンプルサイズ設計の記載より実践度は高く,JPSPでは対象論文全てにいずれかの記載がみられた。一方,『教育心理学研究』では効果量,信頼区間のいずれも記載がない論文が全体の44%を占め,実践度が最も低かった。最後に,『教育心理学研究』における統計改革の促進について,特にサンプルサイズ設計の実践の促進に向けた方策について筆者なりの見解を述べた。
著者
土屋 隆司 杉山 陽一 山内 香奈 藤浪 浩平 有澤理一郎 中川 剛志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.868-880, 2008-02-15
被引用文献数
1

列車運行に支障が生じた場合には,利用者に的確な案内情報を迅速に提供することが求められる.我々は,ダイヤ乱れ時における各目的駅までの推定所要時間に基づいて各駅別に迂回の適否(運転再開を待つべきか,目的地への迂回経路をとるべきか)を判定し,利用者に案内するシステムを開発した.システムの開発にあたり,輸送障害が発生した線区における駅間所要時分の変化を見積もるモデルを考案し,これをダイヤ乱れ時の最短経路計算に応用した.また,システムの開発と並行して実施したダイヤ乱れ時における利用者行動調査の結果に基づいて,システムの要件やその運用のあり方を整理した.開発したシステムを用いて,実際のダイヤ乱れ時において,一般利用者を対象とした実証実験を実施した結果,提示された案内情報に従って移動した利用者の約65%が案内どおり,または案内よりも早めに目的地に到着することができた.システムの有用性については総じて高い評価が得られた.また,不確実性を含む予測情報であっても一定の確度があれば利用者に十分受容されることも確認した.When train operations are disrupted, it is important to provide passengers with information facilitating the rest of their journey. We developed a guidance system for users to determine whether they should wait for service to resume on the disrupted line, or take a detour route to their destination. Our system arrives at decisions after computing estimated travel times to specific stations in the area where train services are disrupted. We devised a model for estimating the amount of time required to travel between stations in the disrupted area. We have carried out a field test in which users use their cell phones to access the system and learn their route options during a disruption in train services. The result of the test has revealed that this system is effective 窶髏 for example, we have found that approximately 65% of all users taking the advice arrive at their destination at the same time as, or earlier than, the time estimated by the system and approximately 80% of them evaluated the system as useful. We conclude that even though the information represents only possible scenarios, and the degree of certainty is not 100%, it can be accepted and effectively utilized by passengers.
著者
山内 香奈
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.361-373, 2013
参考文献数
32

鉄道のダイヤ乱れに遭遇した利用者の不安を低減する方策として,ハードウェアの改善や拡充のみならず,鉄道従業員の運転再開見込み情報の案内を促進することが有効である(山内2009).しかし,見込み情報は変更が重なったり,途中で途絶えたりするため,早い段階から案内することに強い懸念や不安を抱く鉄道従業員が多い.そのような懸念や不安を実証的な知見(エビデンス)に基づく説明により低減する教育訓練教材を作成し,運転再開見込み情報の案内の改善を試みた.本研究で作成したDVD教材を,実際の鉄道従業員の訓練で視聴してもらい,質問紙調査を行った.その結果,教材への興味・関心,説明のわかりやすさの点において高く評価され,視聴しなかった場合に比べ推奨する方法での案内が促進されることが示唆された.また教材で用いるエビデンスの効果的な選択方法と伝え方に関する知見を得た.
著者
山内 香奈
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.383-392, 1999-09-30
被引用文献数
1

論文×評定者×観点という3相の論文評定データに,多相Raschモデルと分散分析モデルを適用し,データの整合性の視点から問題となる特異な評定値の検出結果に関して両モデルを比較検討した。データとしては,教育心理学の卒業論文の要旨25編を,大学院生10人が5つの観点について5段階評定したものを用いた。特異な評定値の検出には,いずれのモデルにおいても,実際の評定値とモデルから期待される評定値との残差が用いられる。得られた結果かち,評定値の特異性のタイプによってモデル間で検出精度にやや違いがみられるものの,両モデルの残差は非常に高い相関を示し,両者の性質はほぼ同じものであることがわかった。この類似性は,モデルの適合度を様々に変化させた人工データでも確認された。論文を含む交互作用を考えない多相Raschモデルとの比較のため,分散分析モデルについては主効果モデルが用いられたが,実際のデータにおいて論文×評定者の交互作用を調べたところ,無視できないほど大きな交互作用があることがわかった。そこで,論文×評定者の交互作用を含む分散分析モデルによって特異な評定値の検出を試みたところ,主効果モデルでは複数の交互作用が相殺されたために検出できなかった特異な評定値を一部検出することができた。このように分析目的に応じて柔軟に交互作用をモデルに組み込めることや,分析に必要なデータの大きさ,さらにソフトウェアの利用し易さなど,いくつかの点で分散分析モデルの方が多相Raschモデルより実用的に優れていると判断された。
著者
山内 香奈 菊地 史倫
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.131-143, 2016 (Released:2016-04-11)
参考文献数
47
被引用文献数
4

本研究は, 鉄道輸送障害時における鉄道従業員のアナウンス業務にみられる慣習的行動を目標行動へと主体的に変容させるための職場研修(DVD教材の視聴)を取り上げ, 研修の効果の持続性を高めるフォローアップのあり方を不等価4群事前事後テストデザインの準実験により検証した。首都圏の鉄道会社1社の543名に対し, 4つのフォローアップ条件(GS : 教材視聴直後に目標設定を要請, FB : 教材の視聴前後の同僚の意識や行動の変化を視聴から3か月後に提示, 併用 : GSとFBの併用, 統制 : フォローアップなし)のいずれか1条件を職場単位で実施し, 目標行動に対する態度, 主観的規範, 行動意図の3つの心的変数と目標行動の実践状況を質問紙調査により複数回, 測定した。研修前と研修から6か月後を比較した結果, (1) 心的変数の変化量はいずれも統制群に比べGS, FBの各群で有意に大きくなり, (2) 目標行動の実践率は, 研修前に目標行動がとれているか否かにかかわらずFBによる促進効果が他の条件に比べ高い可能性が示された。最後に, 心的レベルと行動レベルでの有効性が示唆された本研究で実施したFBの効果を更に高めるための教育的工夫について提案した。
著者
山内 香奈
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.117-125, 2012 (Released:2012-11-20)
参考文献数
25
被引用文献数
1

This research employed an extended hypothetical model that included the cognitions of attribution and importance from Oliver's (1980) expectancy-disconfirmation model. The model examined factors which might mitigate the experiences of dissatisfied passengers who encountered the types of service disruption that occur frequently on city train routes. A covariance structural analysis model was applied to questionnaire data obtained from 5 383 railroad users who encountered problems. The passengers' degree of discontent was most strongly influenced by their evaluation of the responsibility attributed by the railroad company. The strong influence of the passengers' impression of the impropriety of the railroad company's announcements regarding the train service make it imperative for the railroad company to take strong corrective action. The passengers' dissatisfaction will decrease greatly when there are appropriate announcements, in addition to the alleviation of discrepancies related to time, confusion, and changes.
著者
山内 香奈
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.383-392, 1999
被引用文献数
1

論文×評定者×観点という3相の論文評定データに, 多相Raschモデルと分散分析モデルを適用し, データの整合性の視点から問題となる特異な評定値の検出結果に関して両モデルを比較検討した。データとしては, 教育心理学の卒業論文の要旨25編を, 大学院生10人が5つの観点について5段階評定したものを用いた。特異な評定値の検出には, いずれのモデルにおいても, 実際の評定値とモデルから期待される評定値との残差が用いられる。得られた結果から, 評定値の特異性のタイプによってモデル間で検出精度にやや違いがみられるものの, 両モデルの残差は非常に高い相関を示し, 両者の性質はほぼ同じものであることがわかった。この類似性は, モデルの適合度を様々に変化させた人工データでも確認された。論文を含む交互作用を考えない多相Raschモデルとの比較のため, 分散分析モデルについては主効果モデルが用いられたが, 実際のデータにおいて論文×評定者の交互作用を調べたところ, 無視できないほど大きな交互作用があることがわかった。そこで, 論文×評定者の交互作用を含む分散分析モデルによって特異な評定値の検出を試みたところ, 主効果モデルでは複数の交互作用が相殺されたために検出できなかった特異な評定値を一部検出することができた。このように分析目的に応じて柔軟に交互作用をモデルに組み込めることや, 分析に必要なデータの大きさ, さらにソフトウェアの利用し易さなど, いくつかの点で分散分析モデルの方が多相Raschモデルより実用的に優れていると判断された。
著者
山内 香奈
出版者
日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.117-125, 2012-06
被引用文献数
1