著者
山本 照子
出版者
日本舌側矯正歯科学会
雑誌
日本舌側矯正歯科学会会誌 (ISSN:18836216)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.24, pp.31-42, 2014 (Released:2015-07-19)
参考文献数
35

近年,国内外において,ミニインプラントを固定源に用いた矯正歯科治療が急速に普及してきた.なかでも,矯正歯科医が自ら埋入可能な歯科矯正用アンカースクリューは,上下顎歯槽骨において様々な部位に植立でき,術式も比較的簡単で,術後の痛みも軽微である.本稿では,歯科矯正用アンカースクリューの薬事承認の経緯,これまでの臨床応用,安全性と安定性を考慮したアンカースクリューの最適な長さについての最新の研究について報告する.
著者
岩崎 万喜子 山本 照子 永田 裕保 山城 隆 三間 雄司 高田 健治 作田 守
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:0021454X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.696-703, 1994-12
被引用文献数
29

近年, 成人の矯正歯科治療患者が増加している.そのような最近の動向を把握するために, 1981年4月から1993年3月までの12年間に大阪大学歯学部附属病院矯正科で治療を開始した18歳以上の成人患者について実態調査を行った.1. 調査を行った12年間で, 治療を開始した患者数は口唇裂口蓋裂を除くと総計4, 040人で, そのうち成人患者は793人(19.6%)であった.成人患者数は1990-1992年に増加していた.男女比(男性を1とする)は1 : 2.1で, 12年間を通じて変化はみられなかった.2. 年齢分布では, 男女とも20-24歳が最も多かった.経年的には男女とも20歳代の増加がみられ, 25-29歳の女性の比率が1990-1992年に増加していた.3. 距離別の居住地域は, 1983年度に附属病院が大阪市から吹田市に移転したため, 近距離からの通院が増加していた.4. 外科的矯正患者は1990年度に保険適用されて以来増加した.5. 各種不正咬合の分布状態は, 男女とも叢生が最も多く(28.4%), 経年的に増加傾向を示した.6. 顎関節症を伴う成人患者は23.1%に認められ, 経年的に増加傾向を示した.男女比は1 : 2.9であった.
著者
山本 照子
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.213-228, 2016-12-31 (Released:2017-01-25)
参考文献数
126
被引用文献数
1

近年,関節リューマチや歯周病で見られる炎症性骨破壊において,病的な状態での骨代謝に影響を及ぼす免疫系の関与が注目されている。歯周病は細菌による自然免疫応答についで獲得免疫応答が誘導されて,急性炎症から慢性炎症に至り,歯槽骨破壊がもたらされるという,免疫応答の結果として惹起される。骨代謝と免疫系は,骨髄の微小環境ならびに多くの制御因子を共有し,相互制御が行われている。矯正的歯の移動においても,免疫応答で誘導される様々な炎症性サイトカインが発現し,これらは歯の移動に必須な歯槽骨吸収に関与している。矯正的歯の移動における骨吸収には,骨表層にある破骨細胞と骨芽細胞のみならず,骨中に埋め込まれて互いに細胞性ネットワークを形成している骨細胞が,メカニカルストレスに著しく応答して細胞間コミュニケーションをはかり,破骨細胞形成における司令塔的な役割を果たすことがわかってきた。歯の移動の圧迫側歯槽骨では,骨細胞が骨免疫因子とも言えるosteopontin(Opn)や結合組織成長因子(connective tissue growth factor,CTGF/CCN2)を産生し,その結果,免疫系因子と骨系細胞による破骨細胞形成のメカニズムが働き,活発な骨吸収が生じる。本稿ではメカニカルストレスによる矯正的歯の移動の分子メカニズムについて我々の知見を紹介し,免疫細胞を支持する骨髄環境の制御における骨細胞の新たな役割について述べる。
著者
小山 勲男 宮脇 正一 山本 照子
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.313-318, 2001
被引用文献数
7 1

エッジワイズ治療を行った4症例において, チタンスクリューを大臼歯部あるいは小臼歯部に埋入して不動固定として用いた結果, 有用であることを確認したので報告する.チタンスクリューは歯肉切開を行わずに埋入された.埋入時や撤去時において, 痛みや出血はほとんど認められなかった.本報告で提示した4症例の治療経過から, 歯科矯正臨床においてチタンスクリューを用いた治療は, 患者に対する負担が軽く, 従来の矯正治療のメカニクスでは困難であった臼歯の遠心移動, 臼歯の圧下ならびにレベリングを行いながらの前歯牽引を患者の協力をほとんど得ることなく安全かつ確実に行えることが示唆された.
著者
梶本 雅俊 葛木 みどり 山本 照子 鈴木 妙子 佐藤 加代子
出版者
国立公衆衛生院
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

昨年度行った基礎的検討として液クロによる金属パタン分析法を用い、尿中のNa・K・Ca等の陽イオンの分析を、同じくF・SO4、SO2、C1、N03等の陰イオンの分析をして金属栄養の指標とした。無機質代謝のうち、従来公衆栄養的見地からはカルシウム不足がいわれているので。今回は日本人の日常生活の中での真の吸収率を求めようとして、カルシウムについての吸収率を求めた。厳密な二回の実験を用い、実験は男子8名、女子8名の厳重な管理のもとに血液成分、カルシウム、ホルモンについてデータを得て分析した。その結果牛乳食、野菜食、小魚食、炭酸カルシウム食のうち、牛乳群の便Ca吸収率が最も高く、牛乳群、小魚食の尿中にカルシウム排泄が多かった。介入疫学の手始めとして神奈川県、津久井郡の城山町を始め保健所管内の4町における健診時において住民検診時に血液性状や食習慣調査データを用いて、地域別集計と比較を行った。一部は歯科健診も行い健康状態との関連を分析した。食習慣調査を行い、また健康に役立つ心構えの調査で、腹八分や塩分控え目等の食行動調査20項目間の関連分析を行った。過去の栄養調査し食習慣の結果を総合して、多変量解析を用い、そのうち主成分分析では、身体的測定項目は相互に強く関連し、アンケートでもビタミンの摂取を除く他の項目について互いに強く関連したことが分ったので今後は数項目の調査で他の項目が推定できることが分った。中国東北部吉林省において都市・農村部の約1000名の健康と栄養状態の日中比較では健康状態は都市部ではあまり違いが無かったが農村部では日本よりカルシウム、ビタミン栄養状態も含め悪く地域差が大きかった。
著者
永田 裕保 山本 照子 岩崎 万喜子 反橋 由佳 田中 栄二 川上 正良 高田 健治 作田 守
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:0021454X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.598-605, 1994-10
被引用文献数
19

1978年4月から1992年3月までの過去15年間に大阪大学歯学部附属病院矯正科で治療を開始した, 口唇裂口蓋裂を除く矯正患者4, 628名(男子1, 622名, 女子3, 006名)を対象とし, 統計的観察を行い以下の結果を得た.1.大部分の患者は半径20 km以内から来院しており, 大阪府下居住者であった.2.男女比は男子 : 女子=1 : 1.9であり年度による大きな変動はなかったが, 9歳以降年齢が高くなるにつれて女子の割合が上昇した.3.治療開始時の年齢は7∿12歳が大半を占めた.近年13歳以上の割合が増加を示した.咬合発育段階では, IIIB期が最も多かった.4.各種不正咬合の分布状態は, 男子では反対咬合の割合が最も高かった.一方, 女子では, 叢生の割合が最も高かった.男女ともに年々反対咬合の割合が低下し, 叢生の割合が上昇した.5.Angle分類については, 男女ともにAngle I級が最も多く, 骨格性分類では, 男子で骨格性3級, 女子で骨格性1級が最も多かった.咬合発育段階別の骨格性分類では, 骨格性2級はIIC期からIIIA期にかけて増加を示し, 骨格性3級はIIC期とIVC期に多かった.IIIC期からIVC期におけるAngleの分類と骨格性分類との関係について, 男女ともAngle I級では骨格性1級, Angle II級では骨格性2級, Angle III級では骨格性3級が多く認められた.
著者
石川 哲也 山本 照子 佐々木 真一 高橋 賢次 藤山 光治 三谷 清二
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.65-75, 1999
被引用文献数
10

不正咬合や矯正治療が患者に与える心理的・機能的影響を知ることを目的として岡山大学歯学部附属病院矯正科における患者および保護者にアンケート調査を実施し, 回答不備, 口唇裂・口蓋裂, 外科的矯正治療, 特殊疾病を伴わない患者719人(男子233人, 女子486人), 保護者555人(男子患者199人, 女子患者356人)から以下のような結果を得た.1. 「矯正治療前, 歯並びや口元のことでからかわれたりいじめられたことがあった」と答えたのは男子9.4%, 女子12.1%であった.また, 「歯並びが気になり消極的な性格だったと思う」と答えたのは男子1.7%, 女子6.8%であったが, その中で「治療後積極的になった」と答えたのは58.8%であった.2. 「歯並びや口元が悪いと将来何か損をする」と思っている患者は, 男子27.9%, 女子38.7%で, 「将来子供の歯並びが自分と同じようになるか心配している」患者は, 男子16.7%, 女子32.7%であった.またともに男女別, アンケート調査時の年齢別において有意差がみられた.3. 装置装着を「はずかしい」と答えたのは金属ブラケット使用者では男子40.0%, 女子56.9%, 白色又は透明ブラケット使用者では男子26.8%, 女子42.8%であった.4. 「矯正治療して良かった」と答えたのは男子患者89.0%, 女子患者88.6%, 男子患者の保護者96.2%, 女子患者の保護者94.2%であった.5. 「矯正治療前, 前歯または奥歯で良く噛めなかった」と答えたのは全体の18.5%であったが, その中で70.3%が「もっと噛むるようになりたい」と望んでおり, 79.6%が「治療後良く噛めるようになった」と答えた.