- 著者
-
岡 浩平
吉崎 真司
小堀 洋美
- 出版者
- 日本景観生態学会
- 雑誌
- 景観生態学 (ISSN:18800092)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, no.2, pp.119-128, 2009-12-31 (Released:2012-05-28)
- 参考文献数
- 35
- 被引用文献数
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7
5
本研究では湘南海岸沿岸域を事例として,砂丘の開発による海浜幅の縮小と生育地の孤立化が海浜植生の種組成や構造に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.対象地の海浜の面積と分布の変遷を把握するために,地形図を用いて3時期の土地利用図を作成した.また,砂丘の開発が海浜植生に及ぼす影響を把握するために,辻堂砂丘の開発前後の植生を比較した.その結果,対象地の海浜の面積および幅は,1921年から2006年にかけて1/3以下に減少していた.海浜の縮小は,海岸侵食の影響よりも,海浜の市街地化や針葉樹林化といった土地利用の変化の影響が大きいことがわかった.開発以前の辻堂砂丘は不安定帯→半安定帯→安定帯と変化する海浜植生の成帯構造が成立していたが,開発後は成帯構造から半安定帯が消失していた.半安定帯の消失は,砂丘の開発による海浜幅の縮小が主な要因として考えられた.また,砂丘の開発によって,砂防林よりも内陸側で海浜植生の孤立化が生じていた.このような立地では,砂防林の防風効果によって,開発後にビロードテンツキ以外の海浜植物が消失し,帰化植物や内陸植物が優占する植生へと種組成が変化したと考えられた.以上のことから,砂丘の開発は,海浜幅の縮小による海浜植生の成帯構造の破壊,生育地の孤立化による内陸植物や帰化植物の侵入を引き起こすと考えられた.