著者
長谷川 啓一 上野 裕介 大城 温 神田 真由美 井上 隆司 西廣 淳
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.79-90, 2016-07-28 (Released:2016-09-05)
参考文献数
33
被引用文献数
9 2

本研究では,移植による保全の難易度が高いと考えられる種(移植困難種)について,全国 179 の道路事業の移植事例の整理・分析を通じて,移植困難種の保全に関する現状と,移植後のモニタリング結果から生活型別の活着状況を整理した.また,工夫をこらした効果的な移植方法や移植後のモニタリング手法を抽出し,整理した.その結果,移植対象となっていた移植困難種は,8 科 26 種であり,樹幹に着生している種が 4 種,岩場に着生している種が 6 種,混合栄養植物が 9 種,菌従属栄養植物が 7 種であった.移植後の活着状況は,岩場に着生している種はいずれも良好であったが,樹幹に着生している植物と混合栄養植物では,活着率がほぼ 100%を維持している種と,ほとんど確認されなくなる種に 2 分される傾向が見られた.菌従属栄養植物では,地上部が発生しない年があるために正確な生存率を評価することができなかったが,1 ~ 2 割の事例で移植後に地上部の花茎が確認された.移植後の活着率を高める工夫として,樹幹に着生している種では,移植個体が着生していた元の樹皮や枝ごと移植する手法が,岩場に着生している種では,ヘゴ棒を基盤とすることで着生を促し,植生ネットを用いて脱落を防ぐ手法がとられていた.菌根菌との共生関係にある混合栄養植物や菌従属栄養植物では,土壌ごと移植する手法やコナラ等の樹木の根元へ移植する手法などがとられていた.今後は,移植困難種の株移植についての知見蓄積・技術向上とともに,株移植に依らない種子などの散布体を用いた保全・移植技術や,持続的な地域個体群の保全手法の研究・確立が重要と考えられた.
著者
長谷川 啓一 上野 裕介 大城 温 井上 隆司 瀧本 真理 光谷 友樹 遊川 知久
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.311-321, 2017 (Released:2018-05-01)
参考文献数
32

キンラン属は、我が国の里山地域を代表する植物種群であり、菌根菌との共生関係を持つ部分的菌従属栄養植物である。全国的に、里山林の荒廃や樹林の減少に伴って生育地が減少しつつある。本研究では、キンラン、ギンラン、ササバギンランの3種を対象に、(1)樹林管理の有無とキンラン属の分布にどのような関係があるか、(2)キンラン属が生育するためにどのような環境整備が必要か、(3)ハモグリバエ類の食害はどの程度生じているのか、を明らかにし、今後、キンラン属の保全のためにどのような方策が必要かを検討した。調査は、茨城県つくば市の20.5 haの樹林において、キンラン属3種の分布と、樹林の管理状態、生育地点の林内環境(植生被度、開空率、近接する樹木の樹種と胸高直径、リター層の厚さ、土壌硬度、土壌水分)を調査した。また、ハモグリバエ類による3種の食害状況を調べ、結実率を求めた。その結果、下草刈りなどの樹林管理を行っている管理エリア(14.0 ha)では3種すべてが生育し、合計47地点で計881株が確認されたのに対し、非管理エリア(6.5 ha)では、キンランのみが生育し、その数も1地点で計3株であった。また、3種の生育株数は、微環境の違い(開空率、草本被度、土壌硬度)や、近接する外生菌根性の樹種によって異なることがわかった。他方、3種ともに、袋がけを行わなかった大半の株でハモグリバエ類による被害を受けており、食害を受けていない健全株は、キンラン1%、ギンラン12%、ササバギンラン0%であった。これらの結果から、キンラン属の保全のためには、生育環境を維持するための樹林管理に加え、ハモグリバエ類による食害対策が重要と考えられた。
著者
西山 純一 長谷川 啓一郎 吉野 利尋 鈴木 利保
出版者
The Japanese Society of Reanimatology
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.118-121, 2006-07-20

東海大学医学部付属病院において, 2004年7月からの1年間に6名の救急救命士が気管挿管実習を行った。対象総患者数184名 (男性95名: 女性89名) , 平均年齢48.5±16.0歳, IC取得率約75%, 平均気管挿管成功率89.3±6.9%, 合併症発生率1.1% (口唇損傷2例) であった。気管挿管成功30例達成までの症例数は平均30.7±0.8例, 実習期間平均46.2±13, 4日という結果であり, 実習は約一ヶ月半の期間を必要とした。全員が実習を修了し, 認定登録を受けた。実習は重大な合併症の発生なく安全に行えたが, 実習システムは, 手技主体の指導になること, 規定症例数達成までの実習期間, 症例数に制限がなく, 実習参加が修了認定と同義となっていること, 実習が麻酔科医の献身性によってなりたっていること等の問題があり, 実習施設数の増加, 指導医の業務負担軽減, 行政等による広報他, いくつかの改善策が必要と考えられた。