著者
近野 正 菅原 澄夫 工藤 すばる
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.547-556, 1995-11-25
被引用文献数
17

本論文は,角速度センサとして使用される圧電形振動ジャイロスコープの設計指針の大綱について明らかにしたものである.まず,基本等価回路の提示とこれより導出した感度の近似式から,感度向上化のための設計指針や問題点などについて述べる.次いで,駆動側と検出側の共振周波数差と出力の関係を印加回転角速度が一定の場合と余弦的に変化する場合について考察し,双共振周波数設定に対する指針を示す.更に,不要な諸結合を考慮した総合等価回路について述べ,漏れ出力の影響を考慮した設計指針について示す.また,支持に関する設計指針についても述べる.最後に,各種ジャイロスコープの性能と利用分担範囲の一覧図を付記し,振動ジャイロスコープの角速度センサとしての位置づけを示す.
著者
佐藤 弘康 白井 宏 ヘイマン E.
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.78, no.10, pp.439-447, 1995-10-25
被引用文献数
3

等方性インパルス状線電流源によって励振された電磁波が,誘電率の異なる媒質の直線境界平面に入射して作る散乱電磁界について,STT(Spectral Theory of Transients)法によって定式化し,厳密解を求めている.こうして求められた解は,他の方法によるものと一致することが確認され,過渡散乱波を構成する空間スペクトルの特異点の重要性について述べている.更に数値計算によってインパルス波の伝搬のようすを視覚的にとらえやすい形に表現し,直接波,反射波,透過波および頭波のそれぞれの波面が伝搬するようすについて明かにした.
著者
大野 誠司 一井 麻理子 間宮 勝 大田 建久 一ノ瀬 琢美
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.81-90, 1996-03-25
参考文献数
10
被引用文献数
4

光メモリとしての応用が可能な双安定光スイッチングは光情報処理システムに不可欠な技術である. また偏光スイッチングは入力に対する反転出力と非反転出力を同時に得ることができる. これをふまえ本論文では双安定性を示すモードホッピングを有する半導体レーザ(マスタレーザ)を光源とし, 発振しきい値電流付近で定バイアス電流駆動とした別の半導体レーザ(スレーブレーザ)に対してTM偏光波注入を行う. これら二つのレーザからなる系を一つのシステムと見なしたとき, システムへの電流入力とシステムからの出力光の偏光状態の間に双安定な偏光スイッチングが実現できることを提案し, それを実験において確認した. まずこのスイッチングの原理として半導体レーザ増幅器の増幅率の注入光波長依存性, TM波注入による偏光出力の制御, モードホッピング等に関して説明し, 次いでこの原理に基づいた実験とシミュレーション結果をもとに双安定特性に関して検討した. この双安定偏光スイッチングの利点としてマスタレーザとスレーブレーザの特性に応じてON/OFF出力の差, 双安定ループの回転方向が設定可能であることを理論的, 実験的に示した. 更にスレーブレーザの多段接続が可能であることを推察した.
著者
生岩 量久 中 尚 鳥羽 良和 戸叶 祐一 佐藤 由郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.249-255, 1996-07-25
被引用文献数
39

微弱なRF信号に応じて内部を通過する光の強度が変化する電源不要な光強度変調器を用いたTV中継局用信号伝送システムを開発・試作した. 本システムを使用すれば伝送線として光ファイバを使用でき, しかも受信所側には電源が不用であり, 送受信所間を電気的に完全に分離できるため, 雷害防止に大きな効果をもつ. また, 受信所側は受動回路のみで構成できるため, 信頼性・保守性の向上と低廉化を図ることができる. 本システムにおいては, 反射型を採用するなど光変調器自体の高感度化を図ると共に, 共振による電圧増幅を実現させ, 60dBμV/m程度の低電界においても, 50dB以上のCN比を得た. また, DG (微分利得) 1.8%, DP (微分位相)は,1.2゜と良好な性能を得た.
著者
田野崎 真司 谷口 宏 Devaraj Balasigamani 稲場 文男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.366-367, 1998-06-25
被引用文献数
5

レーザ色素のエタノール溶液を米, 麦粒を用いた植物生体組織に浸み込ませ, レーザ光励起による入出力および発光スペクトル特性の測定により, 光共振器なしでのこれらの試料のレーザ発振が確認された.これは, 生体組織内の微細構造による光多重散乱の有効な帰還誘導放出効果に基づくものと考えられる.
著者
山中 英夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.261-262, 1996-07-25

本論文は定在波法による誘電率測定において, 測定試料の後面を可動短絡面とし, 短絡位置を変えたいくつかの測定値を組み合わせ, 被測定試料の前面にできる定在波比若しくは定在波最小位置の測定のどちらかのみから複素誘電率を求める方法について考察したものである.
著者
得永 嘉昭 南出 章幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.116-118, 1995-02-25
被引用文献数
6

のこぎり波レーザ断続光とディジタルBoxcar積分器を用いた新しい光音響(PA)信号の周波数依存性測定法を提案した.この方法は,測定したPA信号をFFT分析することによって従来の方法に比べて測定時間を1/5程度に短縮できる.
著者
堀之内 克彦 塩沢 俊之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.331-336, 1993-09-25
被引用文献数
23

開放型チェレンコフレーザにおいて,電磁波と電子ビームの運ぶ電力の総和が保存されるというエネルギー保存則を用いて,電磁波の電力増大の様子を数値的に明らかにし,電磁波の増大に伴うビームのドリフト速度の減少およびその影響,ならびに導波路を構成する誘電体の誘電率を変化させることによる増大特性の改善について調べている.まず,電磁波が増大するにつれてビームのドリフト速度が減少し,電子ビームと電磁波の同期がずれてくるため,初期に設定された周波数における空間的増大率が次第に減少し,電磁波の電力増大が妨げられることを示している.次に,電子ビームと電磁波の同期を維持するために,ビームのドリフト速度の減少に合わせて導波路を構成する誘電体の誘電率を電磁波の進行方向に徐々に増加させることにより,ビームのドリフト速度の減少による空間的増大率の減少を抑えることができ,電磁波の増大特性を改善できることを明らかにしている.
著者
内田 一徳 松永 利明 金 基釆 韓 卿求
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.210-216, 1996-07-25
被引用文献数
36

地下街等の分岐折れ曲がりをもつトンネル内の電波伝搬問題をFVTD法を適用して解析した. FVTD法は任意の小さい多面体セルに対して,マクスウェルの方程式を体積積分することによって離散化される差分方程式である. この方法によれば, 微小セル内の媒質定数は一定とするが, その値を各セルごとに変化できるので,不均質媒質を含む任意形状の境界値問題を比較的容易に扱うことができる. また均質媒質では, このFVTD法はFDTD法とデカルト座標系において等価である. FVTD法の応用例として, トンネル構造が解析的な手法では取扱いが難しい場合について数値計算を行った. また, FVTD法の有効性を立証するためマイクロ波シミュレーションによる実験を行い, 計算値と実験値がよく一致することがわかった.
著者
横田 浩久 平 雅文 倉薗 貞夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.77, no.10, pp.529-535, 1994-10-25
被引用文献数
16

導波路形光回路中の光波伝搬問題に対して広く用いられているビーム伝搬法は,非線形誘電体を含む光導波路や光回路の解析にも適用されている.しかし,従来のビーム伝搬法による非線形光回路の解析では多くの場合,伝搬方向の徴小区間において電界強度分布が変化しない,という仮定を用いているため,精度の高い計算を行うためには伝搬方向のきざみ幅を非常に小さく選ぶ必要があり,計算時間も長くかかる.そこで本文では,クランク・ニコルソン法を適用した差分ビーム伝搬法の各伝搬ステップにおいて,差分式を反復計算して解を収束させる数値解析法を提案し,その定式化を行った.この手法を用いて,まず,カー媒質からなるクラッドを有する誘電体スラブ導波路にTE最低次モードを入射した場合の解析を行い,クラッド部へのビーム波の放出角を求めることにより従来の手法による結果と比較を行い,本手法の有効性を示した後,ビーム波の放出角の入射電力依存性を明らかにした.更に,この導波路の非線形TE定常波をガウスビームによって励振する場合において,ビーム幅が励振に及ぼす影響についても解析を行い,興味ある結果を得ている.
著者
川上 彰二郎 花泉 修 佐藤 尚 大寺 康夫 川嶋 貴之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.296-297, 1997-06-25
被引用文献数
20

2種類の透明媒質からなるサブミクロン周期3次元構造を初めて作製し, 光学的に観察した結果について報告する. 材料系はSi(n=3.26) とSiO_2(n=1.46) であり, バイアススパッタリング法によって凹凸パターンを保存しながら積層することができた. 3次元周期構造部分のパスバンドとストップバンドが1次元のみの周期構造部分に対して大きく変化している様子が確認された.
著者
柴山 純 関口 稔 山内 潤治 中野 久松
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.9-16, 1998-01-25
被引用文献数
19

一般化したダグラス法に基づく改良形差分ビーム伝搬法(IFD-BPM)に虚軸法を適用し, 光導波路の固有モード解析を行っている。まず, IFD-BPMの定式化を偏波の依存性を含めて行う。そして, 固有モードを含む任意の入射界から固有モードのみを生成する虚軸法について概説する。次に, 本手法の有効性を明らかにするため, ステップインデックス形スラプ導波路の固有モード解析を行う。IFD-BPMを用いることで, 従来の手法に比べて精度の高い固有モード解析が可能であることを見出す。更に, 実効屈折率を評価する際に重要になる参照屈折率の選び方について, 参照屈折率を逐次更新する簡便な方法を考案している。応用例として, 本手法と等価屈折率法を併用し3次元多重量子井戸構造導波路の固有モード解析を行う。他の手法の結果とよく一致することを明らかにする。最後に, GD法に基づく交互方向陰解法を用いてグレーデッドインデックス形ファイバを解析する。実効屈折率の評価により, 直接3次元解析をした場合の有効性も示している。
著者
吉田 功 勝枝 嶺雄 大高 成雄 丸山 泰男 岡部 健明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.76, no.11, pp.422-429, 1993-11-25
被引用文献数
13

移動無線用電力増幅器に使用可能な低電圧・高効率のSiパワーMOSFETを開発した.主要な特性改善点は,サブミクロン金属ゲート構造と自己整合ドレーンコンタクト構造との組合せによるオン電圧の低減,遮断周波数の向上,出力容量の低減である.その結果,従来に比べ10%以上の付加効率の向上が図れ,1.5GHzでは出力電力1Wで付加効率60%が得られた.またディジタル変調時の50kHz離調・隣接チャネル漏洩電力50dBc,出力電力0.8Wで付加効率は53%であった.これにより,SiパワーMOSFETがUHF帯において良好な線形電力増幅特性を有することを明らかにした.
著者
中山 雄二 佐藤 明雄 吉田 彰顕
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.77, no.11, pp.640-648, 1994-11-25
参考文献数
15
被引用文献数
28

高速無線アクセスを実現するためミリ波帯が大きく注目され,屋内におけるマルチパス伝搬研究等が活発化してきている.本論文では,ミリ波帯の屋内高速ディジタル伝送特性の評価法を新しく提案している.まず屋内のマルチパス環境下における広帯域伝搬特性の測定を行い多重波構造を明らかにしている.次に多重波環境下におけるディジタル伝送特性を定量化するため,4PSK-100Mbit/sの変復調装置とマルチパスフェージングシミュレータにより10^<-4>の符号誤り率が生じるときの希望波と干渉波の所要レベル比(D/U)を評価した.その結果,干渉波の遅延時間がそのシンボル長を越える場合,符号誤り率は希望波と全干渉波のレベルの比(D/U_T)で決定され,干渉波の遅延時間には依存しないこと,干渉波数の増大と共に所要D/U_Tはその符号誤り率を与えるS/N(N:ガウス雑音)に漸近することを明らかにした.以上の結果から屋内高速無線通信におけるD/Uを用いた回線設計法を提案している.
著者
小柳 幸次郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.81, no.10, pp.602-604, 1998-10-25
被引用文献数
2

擬似位相整合アップコンバ-タを用いた光波長分割多重の分波と, ポンピング光の波長と入射角度の走査による光パス変更を考え, 非線形媒質としてLiNbO_3を用いた場合の基本特性を理論的に検討している.
著者
山尾 泰 斉藤 茂樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.76, no.11, pp.453-461, 1993-11-25
被引用文献数
17

ディジタル移動通信用の低消費電力モノリシック直交変調器を800MHz帯および140MHz帯で実現した.超小形携帯電話機への適用を考慮し,消費電力を著しく低減すると共に,調整箇所を無くしかつ外付部品の不要な完全1チップ構成として設計を行った.このため,回路構成においていくつかの提案を行った.まず定位相差形90度合成器による全体構成を提案し,回路規模およびチップ面積を大幅に削減すると共に,位相調整を無調整化した.次に変調特性の鍵を握るダブルバランスミキサ(DBM)には,アナログスイッチ形DBMを800MHz帯用に採用し,半導体製造プロセスにおける素子バラツキの影響を受けずに高精度の変調波を得ている.更に電流利用効率の高いブートストラップ形バッファ増幅器を出力段用に考案した.試作した800MHz(GzAS)および140MHz帯(Si)直交変調ICは,π/4シフトQPSK変調器として優れた性能を有することが確認された.その消費電流はそれぞれ65mWおよび32.5mWであり,従来に比べ大幅な低消費電力化を達成した.