- 著者
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土屋 葉
時岡 新
渡辺 克典
- 出版者
- 愛知大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
本研究の目的は、「障害」と「女性」という異なるポジショナリティの上に置かれている、障害女性を取り囲む差別構造を明らかにすることである。平成29年度は、前年度にひきつづき、生活史法を用いて障害のある女性への聴きとり調査を行った。身体障害のある女性については、中部地区のみならず関西地区においてもネットワークを通じてアプローチした。また、発達障害および知的障害のある女性の支援者に対してパイロット調査を行うと同時に、調査方法について示唆を得た。平成29年度中期には研究会を開催した。まず「交差性(intersectionality)」概念について検討した。調査研究の課題についての認識を共有し、前年度および今年度前期に行った調査から得られた「生きづらさ」に関する具体的な事例から、知見の共有化を図った。とりわけ医療・介助場面、恋愛・結婚・生殖をめぐる問題、精神障害のある女性の経験について、これまで得られたインタビューデータから検討を加えた。具体的には、医療および介助場面において性別と障害、その他の要素がどのように「複合」しているのかを考察し、情報の不足、アクセシブルではない施設や機器、医師の偏見などがあることを明らかにした。また、恋愛・結婚・生殖の領域は必ずしも障害者差別解消法における合理的配慮の範疇にはおさまるものではないが、障害女性の生きづらさを解明する上では重要であることを指摘した。精神障害のある女性の経験については、身体症状からくる困難、女性役割に関する規範意識、雇用に結びつきづらい現状について述べた。これらに加え、障害をもった/発症した年齢や地域性、居住形態等の要素が、女性たちの生きづらさに影響を与えることを示唆した。以上について、2つの学会において報告を行った。