著者
後藤 剛 Kim Minji 川原崎 聡子 高橋 春弥 河田 照雄
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.145-152, 2019 (Released:2019-09-25)
参考文献数
33

腸内細菌叢は宿主のエネルギー代謝調節において重要な役割を果たすことが明らかになりつつあるが,その詳細な分子機構は未解明な部分が多い。短鎖脂肪酸をはじめとする腸内細菌由来代謝産物による宿主代謝調節機構がその一翼を担っていると考えられる。褐色脂肪組織は低温下での体温維持に寄与する高い熱産生能を有する脂肪組織であり,その活性強度が成人の肥満度と逆相関することが明らかにされ,肥満や肥満に伴う代謝異常症の予防・改善の標的組織として注目されている。近年,腸内細菌叢と褐色脂肪組織機能の関連性が報告されつつあり,食餌由来の腸内細菌代謝産物を介した褐色脂肪組織機能調節機構の存在が示唆されている。本作用は腸内細菌叢による宿主エネルギー代謝調節機構の一端として寄与していることが推定される。本稿では,褐色脂肪組織機能および食餌由来腸内細菌代謝産物による褐色脂肪組織機能調節作用について概説したい。特に,近年同定された食餌由来不飽和脂肪酸由来の腸内細菌産生修飾脂肪酸の機能について,私達が行っている研究結果について中心に紹介する。
著者
河田 照雄
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.119-125, 2014 (Released:2014-06-23)
参考文献数
37
被引用文献数
1

肥満や生活習慣病の予防・改善のための基礎および応用への基盤研究を行った。肥満の発症において重要な脂肪細胞の形成制御機構のマスターレギュレーターである核内受容体とそのリガンドに焦点を当て研究を進めた。その結果,内因性の核内受容体のリガンドを見出すとともに,その機能について明らかにした。また,肥満から発症するインスリン抵抗性の主要因である脂肪組織の炎症反応を食品成分で抑制することにより,それらの疾患が改善することを明らかにした。さらに,生体のエネルギー代謝制御に重要であることが明らかとなってきた脂肪組織で発現する褐色様脂肪細胞の発生抑制にも炎症反応が関与することを明らかにした。本稿では,肥満に関連する疾病と生体内成分および食品由来成分の関連について脂肪細胞とエネルギー代謝の面から解説した。
著者
河田 照雄
出版者
日本脂質栄養学会
雑誌
脂質栄養学 (ISSN:13434594)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.7-15, 2014 (Released:2014-05-01)
参考文献数
40
被引用文献数
1

White adipose tissue configures body fat, while brown adipose tissue (brown fat: BAT) is the only cell in the human body engaged in specialized in heat production. Loss and depression of BAT, which actively consume fat (triacylglyceride), have been shown to cause lifestyle-related diseases such as obesity and diabetes associated with it. Food and nutrition ingredients play a dominant role in BAT thermogenesis and energy metabolism. Especially, some ingredients activate BAT via the transient receptor potential-sympathetic nervous system. These results are expected to apply on anti-obesity treatment. This article reviews the major advances in the field of diet-induced thermogenesis and food ingredients.
著者
高橋 信之 河田 照雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

これまで空腹時高脂血症が動脈硬化性疾患のリスク因子として重要であると考えられてきたが、近年、食後高脂血症の方が動脈硬化性疾患発症とより密接に関連していることが示され、食後高脂血症を予防・改善することが重要であると考えられている。しかし、これまでに小腸上皮細胞における脂肪酸酸化活性が食後高脂血症にどのような影響を及ぼすか検討されてこなかった。そこで本研究では、小腸上皮細胞での脂肪酸酸化活性を変化させる内因性・外因性因子の食後高脂血症に対する作用を検討した。その結果、内因性因子としてレプチンが、外因性因子として PPAR-alpha 活性化剤であるベザフィブレートが。小腸上皮細胞での脂肪酸酸化を亢進させることで食後高脂血症を改善することが明らかとなった。さらに PPAR-alpha を活性化する作用を有する DHA にも同様に食後高脂血症を改善する作用があることが明らかとなった。以上のことから、小腸上皮組織における脂肪酸酸化活性は、生体内への脂質輸送量を決定する上で重要であり、食品成分により食後高脂血症を改善することが可能であることが示された。