著者
木原 一晃 鎌田 理之 松尾 善美 橋田 剛一 川村 知裕 平田 陽彦 藤村 まゆみ 井口 和江 木島 貴志 奥村 明之進
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.267-271, 2015-08-31 (Released:2015-10-06)
参考文献数
17
被引用文献数
1

早期離床は肺癌術後周術期管理の重要な課題の1つである.私たちは肺癌術後患者の早期離床に関連する因子を,栄養指標を含む術前因子や術中因子から検討した.肺癌手術患者で呼吸リハビリテーションを施行した45例に対し,年齢等の背景因子,術前のGeriatric Nutritional Risk Index(GNRI)や呼吸機能,肺切除割合等と術後病棟歩行自立までの日数を調査した.その結果,術後2日以内に病棟歩行が自立した群(24例)は歩行が遅延した群(21例)よりGNRIが有意に高値(102±5/97±8),肺切除割合が低値(14±8%/22±10%)となった.さらに,多重ロジスティック回帰分析でもGNRIと肺切除割合は術後2日以内病棟歩行自立に影響し,ROC曲線によるカットオフ値はGNRIで99,肺切除割合で21%を示した.以上より,術前栄養状態及び手術侵襲の程度が肺癌術後患者の早期離床に影響することが示された.
著者
川村 知裕 原 宏
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.335-346, 2006-11-10
参考文献数
30
被引用文献数
3

2000年以降,日本での黄砂観測数が増加し,黄砂に対する関心が高まっている。日本の降水に対する黄砂の広域的・長期的影響を明らかにするため,10地点,1998年〜2002年の降水データを解析した。気象官署による黄砂観測記録に従って,降水を観測地点周辺で黄砂が観測されたときの降水(KR),観測地点周辺以外の地点で黄砂が観測されたときの降水(SR),日本で黄砂が観測されなかったときの降水(NR)の3つのタイプに分類した。KRはpHが高く,nss-Ca^<2+>濃度の増加が見られた。これは黄砂の主成分であるCaCO_3が降水中に溶解したためと考えられる。黄砂時の降水はnss-SO_4^<2->, NO_3^-, NH_4^+の濃度も高かった。これは,黄砂と共にNH_3, NH_4^+など大陸から輸送されたものが溶解したためと考えられる。黄砂時と非黄砂時の降水の沈着量の差から黄砂に起因する湿性沈着量を見積もったところ,nss-Ca^<2+>の年間沈着量の18%,春期沈着量の39%を占めた。また,年別では2000〜2002年,地点別では北日本および日本海側で,nss-Ca^<2+>湿性沈着量が増加し,黄砂の寄与が大きいことが示された。反対に,H^+では黄砂により降水中の酸の中和が進むため,沈着量は減少する。しかし,土壌での硝化を考慮すると,黄砂によるNH_4^+の沈着量も多いため,H^+の沈着減少効果は打ち消され,土壌酸性化の効果がある。降水化学の測定値から,pHや濃度だけでなく,沈着量を評価する必要が強調される。
著者
川村 知裕 桃實 徹 舟木 壮一郎 別所 俊哉 新谷 康 井上 匡美 南 正人 中尾 篤典 奥村 明之進
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.117-120, 2015-07-10 (Released:2016-04-01)
参考文献数
8

Because hydrogen provides potent antioxidative eff ects against acute lung injury, we hypothesized that treatment of organ donors with hydrogen during mechanical ventilation would reduce graft injury after lung transplant. Orthotopic left lung transplants were performed using an allogeneic rat model. Donors were exposed to mechanical ventilation with 98% oxygen plus 2% nitrogen or 2% hydrogen for 3 hours prior to harvest and the lung grafts underwent 4 hours of cold storage. The combination of mechanical ventilation and cold ischemia resulted in marked deterioration of gas exchange when the donors were ventilated with nitrogen, which was accompanied by upregulation of proinfl ammatory cytokines. These lung injuries were significantly attenuated by ventilation with hydrogen. Hydrogen induced heme oxygenase (HO)-1 in the grafts prior to implantation, which may contribute to protective eff ects aff orded by hydrogen. Hydrogen inhalation during ventilation prior to organ procurement eff ectively protected lung grafts from ischemia/reperfusion injury.
著者
奥村 明之進 南 正人 井上 匡美 川村 知裕 舟木 壮一郎 松浦 成昭 新谷 康 中桐 伴行
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

慢性閉塞性肺疾患COPDの新たな治療法の開発は急務であり、今回COPDに対する細胞治療を用いた再生医療を考案することを目的とした。COPD誘導マウスに対して、健常なマウスより脂肪幹細胞を分取し、経静脈的、経気管的に投与すると、移植細胞は障害肺へ集積し気腫肺を改善した。さらに、人工多能性幹細胞iPS細胞を様々な成長因子を用いて肺胞上皮細胞への分化誘導法を検討した。分化誘導した細胞を標識して、上記と同様に肺障害マウスへの移植を施行し、肺胞への生着および呼吸機能の改善を確認した。肺の再生医療を考案する上で、脂肪幹細胞やiPS細胞が重要なツールになり得ると考えらえた。