著者
川瀬 和也 Kazuya KAWASE 宮崎公立大学人文学部 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.37-50, 2018-03-09

ジョン・マクダウェルは、『心と世界』において、我々人間の概念能力は「第二の自然」であり、法則の領域に属さない「独特の」ものでありながら、同時に自然的なものでもあるという議論を展開している。本論文では、過激なプラトン主義、簡素な自然主義、非法則的一元論という三つの立場との違いを整理することで、「第二の自然」がどのような主張であるかを明確にする。その上で、「第二の自然」をマクダウェルの静寂主義的な傾向の発露として理解できることを指摘する。さらに、物理主義の側に立って、マクダウェルからの批判に対する応答を試みる。
著者
川瀬 和也 Kazuya KAWASE 宮崎公立大学人文学部 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.53-68, 2019-03-08

本稿では、マイケル・トンプソンが Life and Action (2008)において展開した「素朴な行為論」について、その全体像を明らかにした上で、検討を加える。トンプソンの議論はその独創性から高い評価を受けているが、他方でその独創性ゆえに、現代の行為論にとってどのような意義を持つのか、正確な評価が進んでいないという状況がある。本稿では、彼の議論を整理し、フレーゲ的方法の当否、行為間の類種関係の扱い、行為説明における心的状態の役割という三つの観点から検討する。
著者
川瀬 和也 Kazuya KAWASE
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-15, 2017-03-10

本稿は、M.ブラットマンによって展開された、現代行為論における事前の意図に関する理論が抱える存在論的な問題を指摘するとともに、この問題を解決するための指針を、『精神現象学』におけるヘーゲルの行為論の中に探るものである。これにより、事前の意図を時空間的な連続性によって個別化可能な心的出来事の一種として理解する存在論への対案を提示するとともに、行為に関するヘーゲルの考案に新たな光を当てることを目指す。
著者
川瀬 和也 Kazuya KAWASE 宮崎公立大学人文学部 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-12, 2021-03-10

本稿の目的は、行為者性に関する階層理論を整理し、その射程を明らかにすることである。現代行為論においては、心的態度の階層によって自律を説明し、これを通じて行為者性とは何かを明らかにしようとする階層理論が影響力を持っている。本稿では、H. G. フランクファートの階層理論、M. E. ブラットマンの計画理論、C. M. コースガードの実践的アイデンティティに訴える理論の三つを、心的態度の階層性に加えて何が必要だとされているかという観点から整理する。また、特にブラットマンの計画理論と、コースガードの実践的アイデンティティに基づく理論を比較し、両者において人格の同一性についての理解の違いが問題となっていることを示す。また、人格の同一性の捉え方によって、「操作の問題」への応答が変わることを明らかにする。これを通じて階層理論にとって人格の同一性をめぐる問題の重要さが増していることを明らかにする。
著者
川瀬 和也
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.68, pp.109-123, 2017-04-01 (Released:2017-06-14)
参考文献数
6

The “Idea” is, according to Hegel, the unity of the subject and object. However, as often in Hegel, his explanation of the role of the “Idea” is extraordinarily dense, and it is hard to understand what he means. In this paper, I will attempt to reveal the meaning of Hegel’s “absolute Idea” by focusing on his notion of dialectic and his favorite analogy of the circle.Robert B. Pippin argues that Hegel’s logic is the completion of Kant’s transcendental philosophy, and therefore, a kind of epistemology in itself. James Kreines, however, criticized this view in his recent book. Hegel, says Kreines, criticizes any attempt to start with the assessment of our epistemic faculties; so according to him, Pippin’s interpretation cannot be valid. I take Kreines’ critique seriously. Hegel cannot begin his philosophical system with an epistemological argument.However, it is also incorrect to start with a metaphysical argument. If we read Hegel’s argument on dialectic carefully, we can see that it is impossible for him to start with either epistemology or metaphysics. Rather, we must not fixate on where to start.Prohibiting this fixation, in Hegel’s view, shows us how to solve the problem of the gap between subject and object. And it is because of this insight, I believe, that Hegel emphasizes the analogy of the circle when he argues for a genuine method of philosophy.
著者
川瀬 和也 Kazuya KAWASE 宮崎公立大学人文学部 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-12, 2021-03-10

本稿の目的は、行為者性に関する階層理論を整理し、その射程を明らかにすることである。現代行為論においては、心的態度の階層によって自律を説明し、これを通じて行為者性とは何かを明らかにしようとする階層理論が影響力を持っている。本稿では、H. G. フランクファートの階層理論、M. E. ブラットマンの計画理論、C. M. コースガードの実践的アイデンティティに訴える理論の三つを、心的態度の階層性に加えて何が必要だとされているかという観点から整理する。また、特にブラットマンの計画理論と、コースガードの実践的アイデンティティに基づく理論を比較し、両者において人格の同一性についての理解の違いが問題となっていることを示す。また、人格の同一性の捉え方によって、「操作の問題」への応答が変わることを明らかにする。これを通じて階層理論にとって人格の同一性をめぐる問題の重要さが増していることを明らかにする。
著者
早川 正祐 竹内 聖一 古田 徹也 吉川 孝 八重樫 徹 木村 正人 川瀬 和也 池田 喬 筒井 晴香 萬屋 博喜 島村 修平 鈴木 雄大
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、従来の行為者理論において見落とされてきた、人間の「脆弱性」(vulnerability)に着目することにより、自発的な制御を基調とする主流の行為者 概念を、より相互依存的・状況依存的なものとして捉え直すことを目的としてきた。その際、行為論・倫理学・現象学・社会学の研究者が、各分野の特性を活か しつつ領域を横断した対話を行った。この学際的研究により、個別領域にとどまらない理論的な知見を深め、行為者概念について多層的かつ多角的な解明を進めることができた。
著者
川瀬 和也 Kazuya KAWASE
出版者
宮崎公立大学人文学部
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-15, 2016

本稿は、M.ブラットマンによって展開された、現代行為論における事前の意図に関する理論が抱える存在論的な問題を指摘するとともに、この問題を解決するための指針を、『精神現象学』におけるヘーゲルの行為論の中に探るものである。これにより、事前の意図を時空間的な連続性によって個別化可能な心的出来事の一種として理解する存在論への対案を提示するとともに、行為に関するヘーゲルの考案に新たな光を当てることを目指す。