著者
指宿 信
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.14-20, 2020 (Released:2020-04-05)

本稿は、犯罪者の再犯防止に向けて刑罰効果よりも抱えている問題を解決することによって目的 を達成しようとする新しい司法哲学である「治療法学(therapeutic jurisprudence)」の理念の成り立ち から、この理念に基づいた司法のあり方を示す「治療的司法」概念を説明、その上に構築される具体 的制度である「問題解決型裁判所」を説明するとともに、米国を中心に世界に広がる様々な裁判所~ ドラッグ・コート、DV コートなど~の機能を紹介する。そしてわが国において再犯防止に取り組 む近年の刑事司法アクターの動きを紹介し、政府レベルや学術の世界で治療的司法と通底する多様 な動きが出てきたことに触れ、再犯防止、刑務所再入率を低下させるためには現状の施策では不十 分であることを指摘し、起訴猶予制度や出所後の支援といった現行制度を前提にした取り組みから、 問題解決型裁判所の導入によって刑事司法過程そのものを再犯防止に向けた形に変革するよう改革 することを説く。
著者
指宿 信 中島 宏 山田 直子 吉井 匡 稲田 隆司
出版者
成城大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

2016年6月に成立し3年以内の施行が予定されている我が国の「被疑者取調べ録音・録画制度」に関して、法解釈学や比較法的研究、心理学・社会学等の経験科学の見地から多面的実証的な研究を行った。その結果、被告人の法廷外の自白を記録した録画映像が判断者(裁判官ならびに裁判員)に影響を与える可能性が高く任意性や信用性の判断を歪めてしまうこと、また弁護人の立会いもなく適切な尋問技術を持たない取調官による尋問によって虚偽自白が生み出される危険性が高いこと等が明らかになった。そこで、取調べ映像を裁判員裁判で再生する際には、こうした危険を回避する法的制度的手当が不可欠であることを明らかにした。
著者
指宿 信
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.102-103, 2006-08
著者
指宿 信 安田 裕子 青木 孝之 廣井 亮一 丸山 泰弘 後藤 弘子 石塚 伸一 佐藤 達哉 中村 正
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

第一に、法学、心理学、社会学、精神医学など多様な学問領域の専門家による「治療的司法」概念の検討が多角的に進められ、刑罰重視型より更生支援型刑事司法が再犯防止に有効という海外の先行する知見が、我が国においても通用することが明らかした。 第二に、更生支援を具体的に進めるための支援や治療を提供する社会的資源となる「プロバイダー」が各所に存在し活動を進めているが、治療的司法観を共有することができることがわかった。 第三に、刑事被告人や被疑者に最も近接する立場にある弁護人が、相当程度現行の刑事司法制度の中でも治療的司法に基づいた処分や処遇を進めることが可能であることが明らかになってきた。
著者
指宿 信 佐藤 達哉 渕野 貴生 堀田 秀吾 藤田 政博
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

取調べの録画におけるカメラ・アングルがもたらす偏見や、自白調書の三次元グラフィック・ツールによる表示、公判前報道が引き起こすバイアス、評議室における裁判員・裁判官の言語コミュニケーション等について、それらの適正化に向けた法学・心理学・言語学・情報工学等の技術や知見を組み合わせた"学融的"アプローチの有効性を検証できた。