- 著者
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林 あつみ
清水 真澄
七戸 和博
長谷場 健
木元 幸一
- 出版者
- 公益社団法人 日本栄養・食糧学会
- 雑誌
- 日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, no.6, pp.321-329, 1996 (Released:2010-02-22)
- 参考文献数
- 30
スナネズミの肝と胃における各クラスのADHアイソザイムの存在ならびにそれら組織におけるADH活性をマウス, ラット, モルモット等の超歯類と比較検討した。スナネズミは, 肝においては, 電気泳動により3本のADHバンド (A, B, C) が検出された。陰極側のバンドAは低濃度エタノールを基質とした場合に濃く染色され, 4-methylpyrazoleで強く阻害されたことから, クラスIと同定された。陽極側のバンドCはヘキセノールに対して強い活性を示し, エタノールを基質とした場合2.5Mまで活性が飽和せず, 4-methylpyrazoleにより阻害されないことより, クラスIIIと同定された。クラスとクラスIIIの間にみられたバンドBは, 肝に存在することおよびIとIIIの中間の酵素的性質を有することより, クラスIIと同定された。胃においても2本のバンド (D, E) が検出された。陰極側のバンドDは, 胃に特異的であること, エタノール1Mで最大活性を示したこと, また4-methylpyrazoleによる阻害感受性が肝のクラスI ADHより低いことより, クラスIVと同定された。陽極側のバンドEは肝のバンドCと同様の基質特異性および4-methylpyrazoleによる阻害感受性および移動度より, クラスIIIと同定された。以上のように, スナネズミのADHアイソザイムシステムは他の齧歯類と同様であった。スナネズミの肝におけるADH活性は, マウスやラットと同様, 15mMエタノールおよび5mMヘキセノールのいずれの基質でもモルモットより有意に高かった。一方, スナネズミの胃ADH活性はいずれの基質でもモルモットと同様, マウスおよびラットに比べ著しく低かった。また, 肝ADHはいずれの種においても, 15mM以上のエタノール濃度では活性の低下がみられたが, 胃ADH活性はマウスやラットにおいては逆に上昇し, 0.25M以上になると逆転し, 肝の活性より高くなった。このことは, 胃が摂取された高濃度のアルコールを代謝する場として重要であると考えられた。一方, スナネズミおよびモルモットにおける胃ADH活性は, 高濃度エタノールでも有意な活性の上昇はみられず, 低値のままであった。したがって, これらの動物種のアルコール代謝における胃の役割は小さいと考えられた。さらに, 動物種間における各ADHアイソザイム活性の相違は, とくに胃ADHのヘキセノールに対する活性で著しく, 各動物種の食性との関連が示唆された。