著者
西村 歩 新井田 統
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2H1GS3a05, 2021 (Released:2021-06-14)

従来の研究観では、経験を集合させることによって「客観性」を担保していく科学的手続きが重視されてきた。その一方でオートエスノグラフィや一人称研究に見られるように、研究者自身によるフィールドでの活動を通して得られた日常的な知覚経験から得られる経験的な知識としての「知覚的知識(Perceptual knowledge)」を語る研究も見られてきた。しかしここでいう「語り」とは元来主観的かつ文脈依存的なものであることから、研究者の「幻覚」が記述されてしまわないかとする懐疑論も根強く存在する。そこで本稿では研究者自身の経験に基づく「知覚的知識」を報告する研究の意義とは何かについて知識論における「幻覚からの議論」や「選言主義」の立場を踏まえて議論する。その上で知覚的知識に向けられる「幻覚」に由来する過剰な懐疑論を乗り越え,かつ知覚的知識ならではの強みを活用した研究活動が普及していくための条件を提示した。本稿の意義とは、これまで哲学的領域で行われてきた「知覚」に関わる議論について具体的なフィールドを舞台とした研究での適用について議論する一助となることである。
著者
大戸 朋子 吉田 悠 東條 直也 新井田 統
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.D10, 2020 (Released:2020-09-12)

本発表は、子育て期にある母親とKDDI総合研究所との共創プロジェクトを事例とし、母親にとってのサードプレイスとはどのような場所なのかを検討したものである。Oldenburgはサードプレイスを、社会的な立場や役割から解放された“私”に戻れる場所だと捉えているが、今回のプロトタイプでは、子育て期の母親にとってのサードプレイスとは、“母親としての私”が満たされる場所であることが明らかとなった。
著者
西村 歩 新井田 統
出版者
特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構
雑誌
人間中心設計 (ISSN:18829635)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.30-35, 2021-09-30 (Released:2021-10-22)
参考文献数
18

In this paper, we examined the inevitable problem in establishing a method of “systematic review” in human-centered design research: how to recognize that a design case incorporates the process of human-centered design. In this paper, systematic review is a research method that aims to create new knowledge that practitioners themselves are not aware of by collecting and integrating case reports related to human-centered design and clarifying the differences and commonalities among the cases. It is important to extract and analyze reliable cases for systematic review. However, if the collection of cases to be reviewed is done inappropriately, the reliability of the findings may be impaired. Therefore, the author points out that in conducting a systematic review in human-centered design research, it is necessary to establish clear criteria for “how to approve the cases of human centered design to be studied in the systematic review.” This paper presents three directions of criteria for case selection and discusses the merits and demerits of each.