著者
渕上 恭子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.D11, 2020 (Released:2020-09-12)

2009年、ソウル市冠岳区の主サラン共同体教会が、未婚の父母等、産みの親が育てられない赤子を置いてゆく「ベビーボックス」を設置し、以後10年間で1,600人の棄児を保護してきた。「ベビーボックス」は、生存が危ぶまれる棄児達を救っている一方で、嬰児遺棄を助長しているとの批判を免れないでいる。本報告で、「ベビーボックス」への嬰児遺棄が増え続ける背景と、そこにやって来る未婚の父母に対する子育て支援のあり方を考える。
著者
謝 黎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B09, 2020 (Released:2020-09-12)

現在、中国では「国服」の議論が起きている。その議論の中心に「旗袍派」と「漢服派」がいて、両者の間で互いに「自分こそが正統である」と論争している。さらにこれに、APEC唐装が加わる。旗袍と漢服のような「戦い」はないものの、「漢族の伝統服」という議論において、旗袍と漢服の中間に位置する存在だと考えられる。本発表は、中国社会における「伝統」のあり方について、服飾論争のそれぞれの根拠を通して考察する。
著者
野口 泰弥
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.D16, 2020 (Released:2020-09-12)

本発表ではアイヌ民族による、河川でのサケ捕獲を伴う儀礼、「アシリチェプノミ」の変遷を事例に、サケを軸としてアイヌ民族の先住権運動史を素描することを試みる。それにより、先住権は国家に認められないながらも、社会制度や環境変化を巧みに利用しながら儀礼や、サケ捕獲を内実として実現させてきた実態を明らかにし、近年は儀礼が、先住権をめぐる権利闘争の場であると同時に、交流の場としての機能の重要性が高まっていることを分析する。
著者
池田 光穂
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.C15, 2020 (Released:2020-09-12)

先住民の権利宣言(UNDRIP, 2007)の国連総会採択以降、これまでの人類学関連分野における先住民の遺骨(主に頭蓋骨)の研究のための収集の歴史が再検証され、それぞれのケースにおける倫理的・法的・社会的含意(ELSI)において今日的な意味でのインフォームドコンセントの欠如と反倫理行為が明らかになりつつある。歴史における研究の反倫理行為を現在から断罪するだけでなく、先住民への集合的謝罪と「和解」がどのような形で可能になるのかを文化人類学の立場から検証する。
著者
松川 恭子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.D22, 2020 (Released:2020-09-12)

湾岸アラブ諸国において、外国人移民労働者は自国よりも高い賃金、整備されたインフラを享受できるが、市民権・永住権の取得が非常に困難である。本発表は、労働ビザを継続的に更新して滞在を続ける移民労働者の子どもとして湾岸諸国で生まれた2世が高等教育を受けるために渡った「故国」インドで「インド生まれのインド人」と出会い、「湾岸アラブ諸国生まれのインド人」して自らをどのように捉え直しているのかを考察する。
著者
大戸 朋子 吉田 悠 東條 直也 新井田 統
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.D10, 2020 (Released:2020-09-12)

本発表は、子育て期にある母親とKDDI総合研究所との共創プロジェクトを事例とし、母親にとってのサードプレイスとはどのような場所なのかを検討したものである。Oldenburgはサードプレイスを、社会的な立場や役割から解放された“私”に戻れる場所だと捉えているが、今回のプロトタイプでは、子育て期の母親にとってのサードプレイスとは、“母親としての私”が満たされる場所であることが明らかとなった。
著者
川口 幸大 松本 尚之
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.D18, 2020 (Released:2020-09-12)

アフリカ有数の都市ラゴスに暮らす中国系移住者と地元住民は、必ずしも互いに好印象を抱いているとは言い難いが、その関わりの端緒から双方の必要性は織り込み済みであった。よってそこでは、好むと好まざるとに関わらず両者の交わりを伴わざるをえず、手放しで称揚するほどの美談はないが、喧伝されているほど悲惨ではない、必要に迫られたやりとりが交わされている。
著者
村上 志保
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.E20, 2020 (Released:2020-09-12)

本発表では、習近平政権が宗教政策の柱として掲げている「宗教中国化」について、グローバル化とともに推移する民族・文化をめぐる解釈という視点から中国プロテスタントにおいて実際に生じている事例に基づき考察する。具体的には、活発なグローバル・アクターとなりつつある中国において、プロテスタント信者たちが経験し認識する「中国」が、「宗教中国化」示す「中国」とは大きく異なりつつある状況について議論する。
著者
中村 八重
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F12, 2020 (Released:2020-09-12)

本発表は韓国のレトロブームのなかで植民地遺産としての建築物がどのように位置づけられているのかを、建築物の観光化をめぐる現象の分析を通じて明らかにしようとするものである。植民地時代の衣装を新しいものとして消費することが若い世代で流行している。こうしたブームが、従来「生きた歴史教育の場」という役割が課せられていた植民地遺産をめぐる言説や現象に与える影響を検討する。
著者
澤井 充生
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.E21, 2020 (Released:2020-09-12)

中国国内では2016年頃から一部の極左勢力がムスリム少数民族の優遇政策(ハラール食品の認証・監督)や宗教活動(清真寺の改築、イスラーム服の着用、イスラーム学校)などに対する誹謗中傷をメディアに発信し、その結果、イスラモフォビアを意図的に拡散する言説空間が誕生している。本発表では中国国内に蔓延するイスラモフォビアの背景・経緯・影響を習近平が提唱した「宗教中国化」と関連づけて分析し、その問題点を解明する。
著者
関 一敏
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A10, 2020 (Released:2020-09-12)

(1)呪術・宗教・科学という古典的主題は、それぞれの活動を担う人物からの離床度で測定できること(科学>宗教>呪術)。(2)うち宗教の人物像は「預言者」「修行者」「老賢者」に整理できること(ウェバー、キュング)。(3)呪術研究の課題は「呪者になる」「呪力のモノ化」「半分の真面目さ」にあること(モース)。以上をふまえて、呪者の人物像問題を深めてみたい。
著者
伊藤 河聞 畠山 祥 藤賀 樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F14, 2020 (Released:2020-09-12)

本発表の目的は、タイ北部に暮らすムラブリを事例に、個人の自律性と他者との協同性をめぐる理念と実践を明らかにすることである。さらに、定住化を契機とする社会関係の質的変化を念頭に、ある程度の経済力や政治力を持つことで、図らずも従来の平等主義的な社会関係を崩しうる者の苦悩を明らかにすることである。
著者
甲田 烈
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A03, 2020 (Released:2020-09-12)

本発表では、比較思想の方法により、日本の近・現代哲学に着目し、仏教と通底するアニミズムの思想的可能性について考察する。そのさいに参照するのは井上円了(1858-1919)における「活物」の概念である。それは人間もそれを分有する世界そのものの働きを意味し、また生きとしいけるものの往還を意味することから、現代の哲学・人類学におけるアニミズムの再評価と重なるであろう。ここから、「往還存在論」を構想することができる。
著者
生井 達也
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A14, 2020 (Released:2020-09-12)

本発表では、ある程度決まった成員によって定期的にライブ・パフォーマンスが繰り返されている小規模ライブハウスにおいて、同じ出演者と客という組み合わせでもライブの盛り上がりや評価が〈その場〉によって異なるという点を取り上げ、そのような〈その場〉を立ち上がらせる差異がどのように作られているのかを検討する。