著者
秦 俊貴 清野 諭 遠峰 結衣 横山 友里 西 真理子 成田 美紀 日田 安寿美 新開 省二 北村 明彦
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.477-492, 2021-07-15 (Released:2021-07-20)
参考文献数
58

目的 本研究の目的は,食品摂取の多様性を向上させるための10食品群の摂取チェック表(以下,食べポチェック表)について,使用した効果を明らかにする。方法 東京都大田区において実施した2016年と2018年の郵送調査に応答した65-84歳の8,635人を対象とした。2017年7月より大田区において,協力の得られたスーパーマーケットなどの機関に設置する等の方法で普及させた食べポチェック表について,2018年にチェック経験を尋ね,「習慣的にチェックしている」,「チェックしたことがある」と回答した者をチェック経験あり群に分類した。2016年の人口統計学的変数,社会経済的変数,身体的変数,医学的変数,生活習慣関連変数および食品摂取多様性スコア(DVS)の計37の共変量から傾向スコアを算出し,チェック経験あり群となし群の比を1:1としてマッチングし,2年間のDVSの変化をチェック経験あり群となし群各876人について二元配置分散分析を用いて比較した。また,2018年のDVS 3点以下および7点以上を従属変数として,チェック経験なし群に対するあり群の多変量調整済みオッズ比(OR)を多変量調整ロジスティック回帰分析にて算出した。結果 2018年に食べポチェック表のチェック経験があると回答した者の割合は11.9%であった。マッチング後のチェック経験あり群となし群のDVSの平均値±標準偏差は,2016年ではそれぞれ3.9±2.2点,3.9±2.3点,2018年ではそれぞれ4.5±2.4点,4.1±2.4点であり,チェック経験と時間による有意な交互作用が認められた(P<0.001)。2018年でのチェック経験あり群となし群のDVS 3点以下割合は,それぞれ35.2%,43.8%であり,DVS 7点以上割合は,それぞれ21.7%,16.8%であった。チェック経験なし群に対するあり群の2018年のDVS 3点以下のOR(95%信頼区間)は0.68(0.56-0.83)であり,2018年のDVS 7点以上のOR(95%CI)は1.40(1.10-1.78)であった。結論 食べポチェック表の普及とその活用により,高齢者の食品摂取の多様性が向上した可能性が示された。ただし,チェック表を使用した場合でも,欠食や社会的孤立,社会参加がないこと,およびフレイル傾向がある場合は食品摂取の多様性は向上しにくいことが示唆された。
著者
川野 因 日田 安寿美 多田 由紀
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

運動前(最大酸素摂取量70%強度、一過性自転車30分間)に摂取するたんぱく質量の違いと心拍数変動、パワースペクトル解析で得られる自律神経活動指標、血中乳酸、主観的疲労感、血中遊離トリプトファンと分岐鎖アミノ酸の濃度(Trp/BCA)比との関わりを検討した。いずれの指標も運動開始とともに変動するが、たんぱく質摂取量の違いはこれら指標に異なる動きを誘発し、中枢性疲労指標のTrp/BCAA比は自覚的疲労感や乳酸の動きと一致しなかった。
著者
木口 智美 石原 由香 多田 由紀 古庄 律 内藤 信 日田 安寿美 川野 因
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.415-422, 2012 (Released:2012-05-18)
参考文献数
13
被引用文献数
1

学校給食は食育を行う場として重要な役割を担っているが、残食の要因についての報告は少ない。給食の喫食時間の短さは残食率の高さと関連すると考えられるが、実際に給食の喫食時間と残食の関連を検討した研究は見られないため、その関連性を検討した。自校給食の小学校で、全25 学級を対象とした22 日間の残食量および給食の喫食時間の測定、児童844 名を対象としたアンケートを行った。その結果、対象校の残食率の平均値は4 . 3± 3 . 7% であった。給食の喫食時間(片付け時間も含む)は、残食率との間には有意な正の相関を示し、アンケートで給食をいつも全部食べると回答した児童の割合との間には、有意な負の相関を示した。一方で、給食を残すと回答した児童は、給食時間が短いと感じている割合が給食をいつも食べる児童より有意に多かった。したがって、給食を全部食べる児童は食べる速さが速く、そのような児童が多い学級は喫食時間が短くなると考えられた。しかしながら、給食を残す児童にとっては、喫食時間の短さが残食の一因となっていることが示唆された。
著者
砂見 綾香 鈴木 良雄 安田 純 多田 由紀 日田 安寿美 川野 因
出版者
一般社団法人 日本食育学会
雑誌
日本食育学会誌 (ISSN:18824773)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.3-11, 2017-01-25 (Released:2017-10-17)
参考文献数
17

Diet plays an important role in the maintenance of athlete condition and performance. However, collegiate athletes rarely receive adequate dietary education in Japan. Here, we assessed associations between food intake and intake frequency for 10 food groups in order to confirm that simple questions relating to intake frequency can provide diverse information about food intake in collegiate athletes.A total of 123 collegiate athletes (67 males) completed a food frequency questionnaire and a non-consecutive 3-day, 24-hour dietary recall relating to the following food groups : meat, fish/shellfish, eggs, milk and dairy products, soy and soy products, seaweed, potatoes, green and yellow vegetables, other vegetables, and fruits. Frequencies were as follows : almost never, one or twice a week, every other day, and every day. The Jonckheere-Terpstra test, Goodman and Kruskal’s gamma, and weighted matching coefficient kappa were used to assess associations. The Mann-Whitney U test was used to compare food intake by frequency. P<0.05 was considered statistically significant.Energy-adjusted intakes were positively associated with frequencies for each food group, with the exception of potatoes (median gamma, 0.27 ; median kappa, 0.79). Comparing intakes of every day or not, significant differences were observed for fish/shellfish, eggs, milk and dairy products, soy and soy products, and other vegetables.Our findings suggest that simple questions relating to intake frequency can provide diverse information about food intake in collegiate athletes.
著者
多田 由紀 川野 因 田中 越郎 前田 良之 高橋 英一 古庄 律 上岡 美保 日田 安寿美 新村 洋一 貝沼 章子 高野 克己 Yuki Tada Kawano Yukari Tanaka Etsuro Maeda Yoshiyuki Takahashi Eiichi Furusho Tadasu kamioka Miho Hida Azumi Niimura Youichi Kainuma Akiko Takano Katsumi 東京農業大学応用生物科学部栄養科学科 東京農業大学応用生物科学部栄養科学科 東京農業大学応用生物科学部栄養科学科 東京農業大学応用生物科学部生物応用化学科 東京農業大学応用生物科学部教養分野 東京農業大学短期大学部栄養学科 東京農業大学国際食料情報学部食料環境経済学科 東京農業大学応用生物科学部栄養科学科 東京農業大学応用生物科学部バイオサイエンス学科 東京農業大学応用生物科学部醸造科学科 東京農業大学応用生物科学部生物応用化学科 Department of Nutritional Science Faculty of Applied Bio Science Tokyo University of Agriculture Department of Nutritional Science Faculty of Applied Bio Science Tokyo University of Agriculture Department of Nutritional Science Faculty of Applied Bio Science Tokyo University of Agriculture Department of Applied Biology and Chemistry Faculty of Applied Bio Science Tokyo University of Agriculture Fundamental Arts and Science Faculty of Applied Bio Science Tokyo University of Agriculture Department of Nutrition Junior College of Tokyo University of Agriculture Department of Food Environment Economics Faculty of International Agriculture and Food Studies Tokyo University of Agriculture Department of Nutritional Science Faculty of Applied Bio Science Tokyo University of Agriculture Department of Bio-Science Faculty of Applied Bio Science Tokyo University of Agriculture Department of Fermentation Sciences Faculty of Applied Bio Science Tokyo University of Agriculture Fundamental Arts and Science Faculty of Applied Bio Science Tokyo University of Agriculture
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.322-329,

応用生物科学部1年生を対象に,食育トライアル授業として,食の生産,安全管理,健康管理などに関する10回の講義と2回の農業体験(種まき,収穫作業等)を実施し,学生の授業への出席状況及び授業前後のアンケートによって,プログラムの内容および学生の食育に対する知識,意欲等の変化を評価した。応用生物科学部全学科の学生に授業への参加を呼びかけた結果,授業の出席者は27名であり,栄養科学科の学生が20名と最も多く,参加学生の学科構成に偏りがみられた。授業の初回に行ったアンケートの回答者は24名,最終回に行ったアンケートの回答者は11名であった。授業後のアンケートでは,「食育活動への興味は深まったか」「知りたい情報は得られたか」「参加後,農業と食の関連に対する考えが変わったか」「授業として開講された場合受講するか」という問いに対し,それぞれ73~91%が「はい」と回答し,「授業への総合的な満足度」についても73%が「(非常に)満足である」と回答した。「農業」に原点をおいた食育トライアル授業によって,食べ物の成長を通した気づきと感動,生産者への感謝の気持ち,環境への配慮,栄養と健康との関連知識の習得等に寄与することができたと考えられる。今後は授業への参加者数を増やし,結果の一般化可能性について検討するとともに,授業の実現に向けた人的・物的資源の問題について検討する必要がある。We aimed to evaluate changes in both knowledge of dietary education (Shokuiku) and in motivation, in first-year students of the Faculty of Applied Biosciences who attended a voluntary Shokuiku program in 2008. The program comprised 10 lectures on food production, safety management, and health management, as well as 2 farming practicum classes (seed sowing, harvesting, etc.). Twenty of the 27 students who attended the courses belonged to the Department of Nutritional Sciences. We received responses from 24 and 11 students to questionnaires administered before and after the program, respectively. We obtained a "yes" answer 73-91% of the time in response to the following questions : 1) Was your interest in dietary education activities enhanced? 2) Were you able to obtain the information you sought? 3) After attending these courses, did your understanding of the relationship between farming and diet change? and 4) Would you take this course if it were officially offered as a class? Seventy-three percent of students replied that they were very satisfied with the courses. By placing "farming" as the central principle, these courses contributed to food awareness and appreciation, feelings of gratitude toward producers, consideration for the environment, and knowledge acquisition about the relationship between nutrition and health. Future studies should address the generalizability by examining a larger pool of participants. In addition, other issues such as human and material resources should be considered in realization of the Shokuiku program curriculum.
著者
日田 安寿美 高橋 英一 古庄 律 多田 由紀 川野 因
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.198-203, 2009-12-15
被引用文献数
1

近年,若年層の朝食欠食をはじめ食生活の乱れや運動不足が問題視されている。T大学では食の専門家を育成しており,将来的に食育活動に携わる者も少なくない。そこで本研究ではT大学1年次生を対象に食育トライアル授業を計画し,参加学生の食物摂取状況や運動習慣を把握することにより,今後の授業計画のための基礎資料を得ることを目的とした。対象者は,食育トライアル授業に参加した学生のうち,調査に協力の得られた女性13名であった。調査の結果,1日あたりの食品群別摂取量は,穀類が366g,いも類は37g,緑黄色野菜は75g,その他の野菜は112g,魚介類は44g,肉類は80g,卵類は22g,菓子類が66gであった。一人一日あたりのエネルギー摂取量は,推定エネルギー必要量とほぼ一致していた。脂質エネルギー比率は29.4%,炭水化物エネルギー比率は56.8%であった。カルシウム,鉄分,水溶性ビタミン類,食物繊維の摂取量は不足するリスクが認められた。特に鉄分と食物繊維は対象者全員で不足のリスクが高かった。食品の適切な選択方法についての知識や技術を身につけること,さらに食環境整備が必要であると考えられた。ライフコーダーにより歩行数を測定した結果,1日の平均歩行数は10,434±2,606歩であり,健康日本21の目標値を上回る人は13名中9名であった。一方,速歩や強い強度の運動時間が短かったことから,今後は健康増進のためにも運動強度を高める教育が必要と考えられた。