著者
堀口 俊英 谷岡 由梨 米澤 加代 小島 加代子 小暮 更紗 山内 淳 古庄 律
出版者
日本食品保蔵科学会
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.129-134, 2019 (Released:2019-11-14)

コーヒー豆の梱包資材,輸送コンテナ,保管倉庫の違いによる入港時から1年後までの成分変化の分析と併せて官能評価を行い,適切な生豆の品質維持方法について検討することとした。実験の結果,試料生豆は入港時に比べ1年後は,有意に総脂質量の低下がみられ,酸価とpHが上昇した。官能評価の結果は,入港時はいずれの試料もスコア80以上でSPの基準値を上回ったが,1年後はRC/VP/CTW保管が高いスコアを維持していたものの,DC/GS/WTC保管の評価はSPの基準値を下回った。官能評価と理化学的分析値間の相関関係について解析した結果,理化学的な分析により得られた数値の有意性は官能評価の点数をよく反映していることが明らかとなった。これらの結果から,生豆品質は1か月程度の輸送ではコンテナや梱包資材の影響は少ないと判断された。しかし,保管する倉庫の温度,湿度の影響を受け,理化学的分析値である総脂質量,酸価および焙煎試料豆抽出液のpHは経時に変化することが明らかとなった。この中でRC/VP/CTW保管は,最も成分の変化が少なく,1年間程度はSPとして使用可能な官能評価のスコアを維持した。一方,DC/GS/NTW保管の場合は風味の低下が大きく,SPとしての基準スコア80を下回ったことから,半年以内の消費が望ましいと考えられた。
著者
堀口 俊英 谷岡 由梨 米澤 加代 小島 加代子 小暮 更紗 山内 淳 古庄 律
出版者
日本食品保蔵科学会
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.55-61, 2019 (Released:2019-08-07)

市場で流通している生産地の異なるスペシャルティコーヒーとコマーシャルコーヒーのpHおよび滴定酸度,有機酸,総脂質量および酸価を測定し,それらの差異がコーヒーの風味に与える影響を官能評価と関連づけて検証した。(1) 各生産地のSPは4.75から5.00,COは4.79から5.05とSPのpHが有意に低く,また滴定酸度は高い傾向がみられ,それらが酸味に影響を与えていると考えられた。(2) 各生産地のコーヒーは,クエン酸の含有量が多く柑橘果実のような酸味を与えていると考えられた。(3) 各生産地のSPの総脂質量は,17.2~18.4g/100gであり,COの17.2~17.6g/100gに比べ多い傾向があり,風味におけるBody(コク,滑らかさ,質感など)に影響を与えていると考えられた。(4) 各生産地の酸価は,2.7~7.1の幅があり,SPは2.7から4.4とCOより有意に数値が低く,生豆の品質指標の1つになることが明らかとなった。(5) 理化学的な分析により得られた数値の有意性は官能評価の点数に反映されていることが判明した。
著者
小西 史子 香西 みどり 古庄 律
出版者
女子栄養大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

老化促進マウス(SAMP8)を、対照群、ムクナ豆粉末低投与群、ムクナ豆粉末高抗投与群の3群に分けた。ムクナ豆粉末低投与群には、ムクナ粉末を1.5g/体重kgに調製した飼料を、ムクナ豆粉末高投与群には、ムクナ粉末を15g/体重kgに調製した飼料を投与した。それぞれの飼料におけるL-DOPA含量は、0.6mg/体重kgおよび6mg/体重kgである。飼育期間は、11週齢から40週齢までである。飼育後、脳を取り出し、N-PER試薬を用いてたんぱく質を抽出、遠心後、上清を用いて、ウェスタンブロッティングを行い、タウタンパク質のリン酸化の程度を調べた。用いた抗体は、抗リン酸化タウS199,S262,T181マウスモノクローナル抗体である。その結果、タウタンパク質のセリン262,スレオニン181のリン酸化の程度には、群間で有意な差は認められなかった。しかし対照群に比べ、ムクナ豆粉末高投与群においてタウタンパク質セリン199におけるリン酸化が有意に抑制されていた。このことから、ムクナ粉末の投与は、老化によるタウタンパク質リン酸化の増加を抑制することが示唆された。ムクナ豆を用いた加工食品の調製では、ムクナ豆焙煎粉末を小麦粉に0,5,10,15,20%に添加した麺を作成した。その結果、ムクナ豆焙煎粉末の添加量の増加とともに、抗酸化能が上昇した。また、これらに重曹を添加すると中華麺になり、風味が増したが、抗酸化能は低下した。
著者
木口 智美 石原 由香 多田 由紀 古庄 律 内藤 信 日田 安寿美 川野 因
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.415-422, 2012 (Released:2012-05-18)
参考文献数
13
被引用文献数
1

学校給食は食育を行う場として重要な役割を担っているが、残食の要因についての報告は少ない。給食の喫食時間の短さは残食率の高さと関連すると考えられるが、実際に給食の喫食時間と残食の関連を検討した研究は見られないため、その関連性を検討した。自校給食の小学校で、全25 学級を対象とした22 日間の残食量および給食の喫食時間の測定、児童844 名を対象としたアンケートを行った。その結果、対象校の残食率の平均値は4 . 3± 3 . 7% であった。給食の喫食時間(片付け時間も含む)は、残食率との間には有意な正の相関を示し、アンケートで給食をいつも全部食べると回答した児童の割合との間には、有意な負の相関を示した。一方で、給食を残すと回答した児童は、給食時間が短いと感じている割合が給食をいつも食べる児童より有意に多かった。したがって、給食を全部食べる児童は食べる速さが速く、そのような児童が多い学級は喫食時間が短くなると考えられた。しかしながら、給食を残す児童にとっては、喫食時間の短さが残食の一因となっていることが示唆された。
著者
吉田 恵子 伊部 さちえ 古庄 律 四十院 成子 岡本 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成27年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.61, 2015 (Released:2015-08-24)
被引用文献数
1

【目的】現在の「調理学」の教科書に記載されている豆類の吸水率は、1983年に松元文子先生によって作成されたものがほとんどである。演者らは改めて各種豆類(大豆など7種類)について吸水率を測定し新データを作ることを目的とした。また大豆を調理するときに、0.3%重曹水中で調理するとアルカリにより大豆中のビタミンB1が減少するという記述も、多くの教科書に記述されている。ビタミンB1は水溶性であり、アルカリで分解されるというデータはあるが、大豆中のB1が重曹添加で減少するという報告はみあたらない。そこで大豆の調理方法とビタミンB1量の関連についても検討することを目的とした。【方法】吸水率の測定には、黒大豆、大豆、大福豆、金時豆、うずら豆、ささげ、小豆を用い、水に浸漬後2時間ごとに24時間吸水量を測定した。調理方法によるビタミンB1量については、丹波錦白大豆を用い、水中加熱、1%食塩水中加熱、0.3%重曹水中加熱を行った豆について、pHを測定後、ビタミンB1量を定量した。定量方法は前処理後、TSKgel Amide-80カラムを用いHPLC で定量した。【結果】吸水率:7種の豆類のうち吸水率の高かった豆は黒大豆で、他の豆類も以前のデータとは異なる挙動を示した。ささげは小豆と違い種瘤からのみではなく、表皮全体から吸水され吸水曲線のカーブも大豆に似ていた。3種の調理方法による大豆のビタミンB1量:水煮での煮豆、1%食塩水での煮豆、0.3%重曹水での煮豆ともに、生の時の約30%に減少した。この減少は添加物の影響はなく、調理することにより水溶性であるビタミンB1が煮汁などに溶出したためと熱で分解したものと推察される。
著者
古庄 律 石田 裕 谷岡 由梨
出版者
東京農業大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ムクナ豆にはL-ドーパが高含有されていることに着目し、加熱処理して可食化したムクナ摂取によるパーキンソン(PA)病の病態軽減と抗酸化作用の両面から検討を行い、次のような成果を得た。①加熱処理したムクナ豆粉末を6-OHDA処置したPA病モデルラットに与えると対照動物に比べ運動機能が改善された。②DPPHラジカル消去活性は、14.3mmol Trolox/100gだった。③ヒト肝由来細胞株を用いた抗酸化能については、H2O2濃度10μM暴露時の生存率が111%で無添加時(88%)に比べ生存率は高値であった。以上により、ムクナ豆はPA病の病態改善と抗酸化機能を有する機能性食品であることが示された。
著者
古庄 律 石田 裕 鈴野 弘子 齊藤 守史 三成 由美 徳井 教孝 印南 敏
出版者
Japanese Association for Dietary Fiber Research
雑誌
日本食物繊維学会誌 (ISSN:13495437)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.15-22, 2007-06-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
22

ウチワサボテンの一種であるOpuntia Streptacantha(OpS)より抽出した水溶性食物繊維(SDF)の食後血糖上昇抑制作用を調べるために,II 型糖尿病のモデルであるGKラットを用いてグルコース負荷試験を行った。また,CACO-2細胞を用いたグルコース透過試験を行い,生化学的な評価を行った。その結果,動物実験では2%OpS-SDFを投与した場合,顕著な食後血糖上昇抑制が認められ,いずれの血糖値測定時間においても対照群に比べ血糖値は有意に(P<0.05)低値を示した。CACO-2細胞を用いたグルコース透過試験では,0.1および0.2%OpS-SDF添加で対照に比較してグルコースの透過率は有意に(P<0.01)低下し,GKラットにおける血糖上昇抑制が小腸における糖の吸収阻害であることが推察された。次に,グルコースの拡散阻害への影響を調べたところ,0.2あるいは05%OpS-SDFの拡散阻害率は13.8%および35.8%で顕著なグルコースの拡散阻害が認められた。また,粘度計によりOpS-SDFの濃度の違いによる粘度を測定したところ2%OpS-SDFでは,純水に対して約3,000倍の粘度を示した。 これらの結果から,OpS-SDFの血糖上昇抑制は,OpS-SDFが小腸においてグルコースの拡散速度を低下させたことによるグルコース吸収遅延によるものと推察された。
著者
多田 由紀 川野 因 田中 越郎 前田 良之 高橋 英一 古庄 律 上岡 美保 日田 安寿美 新村 洋一 貝沼 章子 高野 克己 Yuki Tada Kawano Yukari Tanaka Etsuro Maeda Yoshiyuki Takahashi Eiichi Furusho Tadasu kamioka Miho Hida Azumi Niimura Youichi Kainuma Akiko Takano Katsumi 東京農業大学応用生物科学部栄養科学科 東京農業大学応用生物科学部栄養科学科 東京農業大学応用生物科学部栄養科学科 東京農業大学応用生物科学部生物応用化学科 東京農業大学応用生物科学部教養分野 東京農業大学短期大学部栄養学科 東京農業大学国際食料情報学部食料環境経済学科 東京農業大学応用生物科学部栄養科学科 東京農業大学応用生物科学部バイオサイエンス学科 東京農業大学応用生物科学部醸造科学科 東京農業大学応用生物科学部生物応用化学科 Department of Nutritional Science Faculty of Applied Bio Science Tokyo University of Agriculture Department of Nutritional Science Faculty of Applied Bio Science Tokyo University of Agriculture Department of Nutritional Science Faculty of Applied Bio Science Tokyo University of Agriculture Department of Applied Biology and Chemistry Faculty of Applied Bio Science Tokyo University of Agriculture Fundamental Arts and Science Faculty of Applied Bio Science Tokyo University of Agriculture Department of Nutrition Junior College of Tokyo University of Agriculture Department of Food Environment Economics Faculty of International Agriculture and Food Studies Tokyo University of Agriculture Department of Nutritional Science Faculty of Applied Bio Science Tokyo University of Agriculture Department of Bio-Science Faculty of Applied Bio Science Tokyo University of Agriculture Department of Fermentation Sciences Faculty of Applied Bio Science Tokyo University of Agriculture Fundamental Arts and Science Faculty of Applied Bio Science Tokyo University of Agriculture
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.322-329,

応用生物科学部1年生を対象に,食育トライアル授業として,食の生産,安全管理,健康管理などに関する10回の講義と2回の農業体験(種まき,収穫作業等)を実施し,学生の授業への出席状況及び授業前後のアンケートによって,プログラムの内容および学生の食育に対する知識,意欲等の変化を評価した。応用生物科学部全学科の学生に授業への参加を呼びかけた結果,授業の出席者は27名であり,栄養科学科の学生が20名と最も多く,参加学生の学科構成に偏りがみられた。授業の初回に行ったアンケートの回答者は24名,最終回に行ったアンケートの回答者は11名であった。授業後のアンケートでは,「食育活動への興味は深まったか」「知りたい情報は得られたか」「参加後,農業と食の関連に対する考えが変わったか」「授業として開講された場合受講するか」という問いに対し,それぞれ73~91%が「はい」と回答し,「授業への総合的な満足度」についても73%が「(非常に)満足である」と回答した。「農業」に原点をおいた食育トライアル授業によって,食べ物の成長を通した気づきと感動,生産者への感謝の気持ち,環境への配慮,栄養と健康との関連知識の習得等に寄与することができたと考えられる。今後は授業への参加者数を増やし,結果の一般化可能性について検討するとともに,授業の実現に向けた人的・物的資源の問題について検討する必要がある。We aimed to evaluate changes in both knowledge of dietary education (Shokuiku) and in motivation, in first-year students of the Faculty of Applied Biosciences who attended a voluntary Shokuiku program in 2008. The program comprised 10 lectures on food production, safety management, and health management, as well as 2 farming practicum classes (seed sowing, harvesting, etc.). Twenty of the 27 students who attended the courses belonged to the Department of Nutritional Sciences. We received responses from 24 and 11 students to questionnaires administered before and after the program, respectively. We obtained a "yes" answer 73-91% of the time in response to the following questions : 1) Was your interest in dietary education activities enhanced? 2) Were you able to obtain the information you sought? 3) After attending these courses, did your understanding of the relationship between farming and diet change? and 4) Would you take this course if it were officially offered as a class? Seventy-three percent of students replied that they were very satisfied with the courses. By placing "farming" as the central principle, these courses contributed to food awareness and appreciation, feelings of gratitude toward producers, consideration for the environment, and knowledge acquisition about the relationship between nutrition and health. Future studies should address the generalizability by examining a larger pool of participants. In addition, other issues such as human and material resources should be considered in realization of the Shokuiku program curriculum.
著者
日田 安寿美 高橋 英一 古庄 律 多田 由紀 川野 因
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.198-203, 2009-12-15
被引用文献数
1

近年,若年層の朝食欠食をはじめ食生活の乱れや運動不足が問題視されている。T大学では食の専門家を育成しており,将来的に食育活動に携わる者も少なくない。そこで本研究ではT大学1年次生を対象に食育トライアル授業を計画し,参加学生の食物摂取状況や運動習慣を把握することにより,今後の授業計画のための基礎資料を得ることを目的とした。対象者は,食育トライアル授業に参加した学生のうち,調査に協力の得られた女性13名であった。調査の結果,1日あたりの食品群別摂取量は,穀類が366g,いも類は37g,緑黄色野菜は75g,その他の野菜は112g,魚介類は44g,肉類は80g,卵類は22g,菓子類が66gであった。一人一日あたりのエネルギー摂取量は,推定エネルギー必要量とほぼ一致していた。脂質エネルギー比率は29.4%,炭水化物エネルギー比率は56.8%であった。カルシウム,鉄分,水溶性ビタミン類,食物繊維の摂取量は不足するリスクが認められた。特に鉄分と食物繊維は対象者全員で不足のリスクが高かった。食品の適切な選択方法についての知識や技術を身につけること,さらに食環境整備が必要であると考えられた。ライフコーダーにより歩行数を測定した結果,1日の平均歩行数は10,434±2,606歩であり,健康日本21の目標値を上回る人は13名中9名であった。一方,速歩や強い強度の運動時間が短かったことから,今後は健康増進のためにも運動強度を高める教育が必要と考えられた。