著者
木村 三郎
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.73-78, 1987-03-31 (Released:2011-07-19)
被引用文献数
1 1

我国における「公園対緑地」の問題については多くの研究があり, 既に言及し尽くされた感がないでもない。果してそうであろうか。試みにいささかその視点を変えて吟味して見ると案外新しい解釈も成り立ってくることに気づく。しかもそれを造園史的な経過の中の一環として位置づけて見ることは正に重要なことと言はざるを得ない。又, 筆者のこれまでしばしば言及してきた一連の造園用語解の研究として把握してゆくことも一案と考える。
著者
植月 惠一郎 松田 美作子 山本 真司 伊藤 博明 木村 三郎 出羽 尚
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近代初期英国文学とエンブレムの関係を明らかにした。シェイクスピア劇や十七世紀英詩を対象に、キリスト教的起源の聖なる図像、モットー、警句と多神教の異教や土着の習俗起源の世俗的な図像、モットー、警句の絶妙な絡み合いから文学の豊饒な表現が生まれた過程を研究した。一方で地理的にも視野を拡大し、ドイツ、フランス、オランダなどを中心とする当時の文化的先進国のエンブレムが、英国のエンブレムに与えた影響も研究し、時間的な視野も拡げ、図像と警句の関係は、十八~十九世紀の挿絵と物語の関係にも転じ、エンブレムの時間的変移も研究した。
著者
木村 三郎
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

図像学上の写真資料の収集管理の方法については、西洋における伝統を誇る方法を研究し、その調査結果は、放送大学「美術史と美術理論」のテレビにおける放映、ならびに、市販されたビィデオという形で発表している。西洋における20世紀初頭以来の歴史的な展開を紹介し、一方で図像学研究への具体的な応用である、比較論、並びに、主題解読論を論じた。さらに、この研究の延長上で、美術史研究の世界で、特にアメリカを中心にインターネット上に様々な図像上のデータ・ベースの構築が試みられており、それが、わが国においても、自宅、研究室における研究のツールとして十分に使用可能な局面に突入している現状を確認できた。元来が、各美術館が所蔵している作品の写真資料が、現在は国際的な意味を持ったネットで公開されて来ている。この事実は、やはり「美術史と美術理論(印刷教材)」(改訂版、特に2刷)の紙上で取り上げ(Joconde,MNR,San Franciso Museum,他)、一部共同研究の形で具体的な方法の提示をした。また、こうした資料を活用した個別の学術成果としては、宗教図像研究では、聖フランシスコ・ザビエル図像学を研究した。収集した写真資料の比較研究を行ない、特に、ル・クレール作の《インドにおける布教》についての、典拠、並びにその図像学を解明した。また一方では、ザビエルの肖像画の図像展開を調査し、肖像図像のカタログを作成し、また身ぶりの図像解釈上の問題を解明した。この研究に関連した成果としては、聖アウグスティヌスの図像を、〈燃える心臓〉を中心に分析した。他方で、平行して調査を行った西洋の古代史の図像研究としては、プッサン作《ファレリーの教師》についての図像と構図の成立過程を説明しえた。
著者
米倉 迪夫 奥平 俊六 高見沢 明雄 木村 三郎 早川 聞多 林 進
出版者
東京国立文化財研究所
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1987

1.美術史研究用画像処理パッケージソフトの開発本研究で導入した画像処理システム(NEXUS6810)をパーソナルコンピュータ(NEC9801VM)より制御するソフト。NEXUS6810のもつコマンド群に習熟し、美術史研究に必要なソフトの機能を協議、画像処理の実験を重ね、ソフトの仕用案を作成した。プログラミングは、専門のソフト開発業者に依頼した。コンピュータのハード面に詳しくない美術史研究者が、研究支援の道具として画像処理技術を応用できるよう、主として次の4点に注意を払った。1)操作が手軽であること。2)画像ファイルの管理がすぐれていること。3)グラフィック及び画像処理機能が充実していること。4)研究者が手直しできる高級言語を使用していること。2.画像処理技術を応用した美術史研究の実例尾形光琳筆紅白梅図屏風(MOA美術館蔵)における制作過程と原状のシミュレーション3.画像データベース(dBASEIIIPLUSを使用)の試作文字型データベースに蓄積された文字情報とNEXUS側の画像情報とをリンクさせ、画像ファイルの検索・表示を可能にした。4.公開シンポジウムの開催本研究テーマのもとで二度の公開シンポジウムを開催し、美術史研究における画像処理技術の応用について活発な議論があった。1)第1回(10月25日) 於奈良・大和文華館西日本の美術史研究者を中心に約40名が参加。2)第2回(3月9日) 於東京国立文化財研究所。東日本の美術史研究者を中心に約60名が参加。
著者
木村 三郎
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.73-78, 1993-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
16
被引用文献数
1

最近我国造園界も中国造園界と接触を深め, 古い中国造園の実体を把握するようになってきている。しかし何分にも中国3000年という古い歴史を知る上で大変な労苦を覚悟しなければならない。更に中国語の如きも, その時代時代に就いて, 十分理解することも亦甚だ重要なことにちがいない。ところが幸いにも我国は遣唐 (隋) 使の派遣などを通じて, 古い時代の多くの文献や実像も既に知り得た筈である。従つてその間における中国造園事情も何かと知り得たにちがいない。その代表例として白楽天の白氏文集をあげることができる。その歴史的な影響を特に振りかえって見たい。
著者
伊藤 博明 田中 純 加藤 哲弘 木村 三郎 上村 清雄 足達 薫
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ヴァールブルクが晩年に取り組んだ、未完の学問的プロジェクトである『ムネモシュネ・アトラス』に所蔵された全パネルについて共同して詳しく読み解き、その成果は図書として刊行するとともに、2回のシンポジウム「アビ・ヴァールブルクの宇宙」と「ムネモシュネ・アトラス展」において公表した。ヴァールブルクの研究を批判的に受け継ぎ、文化系統学、イメージ人類学、神話の構造分析、世俗世界のイコノロジーなどについて方法論的考察を深め、その成果は7名の外国人研究者を含んだ国際シンポジウム「思考手段と文化形象としてのイメージ――アビ・ヴァールブルクから技術的イメージ・図像行為まで――」において発表した。
著者
野瀬 宰 三木 和典 木村 三郎 小川 實
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

昭和55年濾紙血によるクレチン症のマススクリーニングが全国的に行なわれるようになって多数の新生児クレチン症が発見されている一方今までわからなかった新生児一過性甲状腺機能低下症や、乳児一過性高TST血症、先天性高TSH血症、などの周辺疾患も多数発見されるようになった。しかしこれらの疾患の原因や病態は、一部をのぞいて、現在の所まったくわかっていない。そこで我々は、まず一過性乳児高TSHB症患者16例についての長期臨床予後を追跡すると共に、その下垂体ー甲状腺軸のネガティブフィードバック機構について調べた。その結果この病態は、この機構の、下垂体、又は甲状腺における感受性の未熟性がその本態をなしているのではないかと考え新生児期、乳児期、学童期にわたって、TRH負荷テストを行い、TSHの反応性を調べた。その結果、幼若な時期ほどTSHは過剰遅延反応を示し加齢と共に正常化していく事がわかった。一方日本人はヨード摂取が多いと云われており、これが新生児一過性甲状腺機能低下症や、乳児一過性高TSH血症の病態発生に関係があると思われ新生児の、尿中ヨード排泄を調べた。その結果人工栄養児では平均8.6μmol/lのヨード排泄がみられたが、母乳栄養児では平均16.4±11.5μmol/lと、人工栄養児より高い値をました。次いでマススクリーニングで発見された新生児クレチン症の尿中ヨード排泄は正常児と差がなかった。今後一過性高TSH血症児の尿中ヨード排泄を測定してその発症との関連を調べていく予定である。
著者
木村 三郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.37-41, 1991-03-30
被引用文献数
1

我国で世界に誇りうる風景観と云えば第一に富士山,その第二に瀬戸内海をあげることが出来る。そこで富士山については既に本機関誌『造園雑誌』第54巻1号(1990)に於いてその文化的価値を中心にその歴史的な考察を行ってきた。そこでその第二のステップとして,ここに瀬戸内海についても同様な観点から究明して見たい。即ち富士山が孤高の山景美とすれば正に瀬戸内海は白砂青松の海景美と云える。このような伝統美が欧米化の風潮の波に圧倒されて兎角忘れ勝ちになっていることに反発を禁じ得ないし,又その保全の手段方法についても一考して見たい。
著者
木村 三郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.79-84, 1985-03-30

摘要 筆者は昨年本學會誌第47巻第4号に「作庭記新考」と題してその特有の語句を幾つか摘出してその成立時代の推定を行った。そこでよく知られる『山水〓野形図』についても同じ方法を重視するとともに更に『作庭記』の一般論に対し,『野形図』の専ら配石排植論に終始したその補完的な後〓本としての評価を行ってみた。同時に天地人(三才)用語の使用から同時代の諸芸能における同種の用法の動向と対比してその成立時代性をも追究しその時代を14世紀後半乃至15世紀前半と推定したのである。