著者
本吉 勇
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.235-249, 2008 (Released:2019-04-12)
著者
本吉 勇
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1-5, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
19

私たちの多くは、目を開くだけで自分を取り囲む光景やその中にある様々のモノを即座に認識し、また多彩な形や質感に満ちた世界を体験する。この驚くべき認識能力は眼と脳の情報処理に支えられている。20世紀の視覚研究は、線画やCG立体といった人工的な視覚刺激を用いてその仕組みを追求し、脳は二次元の画像から三次元世界を復元して情景や物体を認識する、という理論を提唱してきた。しかし、この理論は複雑な現実世界の知覚を全く説明できない。森の小道、食卓の上の柔らかな花束……私たちがふだん体験しているリッチでリアルな「見える」世界は、脳のどのような情報処理により生み出されるのだろうか? 本稿では、最新の研究成果を通して、限られた処理能力しかもたない人間の脳が網膜像からどのように複雑な光景や物体を認識しているかを解説する。
著者
本吉 勇
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.304-313, 2014-09-01 (Released:2015-05-12)
参考文献数
59

Humans easily recognize objects and perceive their attributes such as shape, color,and material. To achieve these high-level functions, it has generally been assumed that the visual system must reconstruct three dimensional surfaces from the retinal image via deep neural computations. However, recent advances in computer vision and psychophysics lead to an alternative scheme that the human visual system utilizes low-level image features and their statistics directly to recognize 3D objects, scenes,materials, and even arts. This heuristics-based vision requires shallow computation,and is indeed suitable for quick and efficient comprehension of objects and stuffs in the real world. However, such a shortcut is insufficient to explain our ability of ’looking through the truth’ via careful scrutiny. The present paper reviews recent findings and debates concerned with this paradigm shift.
著者
本吉 勇
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-04-01

今年度に予定していた離散運動錯視の特性の心理物理学解析は昨年度中に概ね完了した.その結果,この錯視には4-5 Hzの周期で動作するメカニズムが深く関わっており,それが主観的な時間の連続性を支える大きな要因であるとの推察を得た.今年度は,心理物理学実験の一部について新たな方法に基づくデータを追加し結論の正しさを確認するとともに,大規模な脳波計測実験に基づき錯視の生理学的基礎を検討した.18チャンネル脳波計(Neuroscan SynAmp2 System,東京大学進化認知科学センター共用施設) を用いて,のべ25人の健常者から,離散運動錯視を引き起こす刺激と引き起こさない刺激をそれぞれ観察中の脳波を計測し,錯覚の生起と関連する成分を様々なやり方で分析した.試行錯誤の結果,錯覚が生起するときには後頭頂葉における4-8 Hzの帯域における振動成分が有意に低減することが示された.同じ分析を,視覚刺激がステップ状に現れ消失する条件とガウス状に緩やかに提示される条件で行ない,類似の結果を得た.この結果は,後頭頂葉に現れる4-8 Hz付近のいわゆるシータが,知覚の時間的連続性の成立に関与している可能性を示唆している.これらの結果を,前年までの心理物理学実験の結果と統合する形で一つの論文にまとめることに決定し,投稿を準備した.また,本研究の成果をInternational Symposium on the Science of Mental Timeおよび第16回脳と心メカニズム(統合脳WS)において講演(招待)した.上記とは別に,昨年度に採択された視覚コントラスト感度と運動座標系に関する研究成果を国際会議VSSで発表した.また,以前より進めていた視野闘争における座標系の役割に関する論文をJ. Visionに公刊した.