- 著者
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本多 壮太郎
- 出版者
- 日本武道学会
- 雑誌
- 武道学研究 (ISSN:02879700)
- 巻号頁・発行日
- vol.41, no.3, pp.1-11, 2009
本研究では,剣道の国際化に伴う試合審判の問題点を,第17~21回ヨーロッパ剣道選手権に焦点を当て,試合数,審判員数,1人の審判における平均審判回数などの分析により明らかにした。また,ヨーロッパにおける剣道審判員の向上や育成に関する取り組みや課題点なども検討した。<br>ヨーロッパ剣道選手権第17~20回大会は,初日にジュニア個人戦と女子団体戦,2日目に男子団体戦最終日に男女個人戦という日程で行われてきた。この日程での1人あたりの平均試合審判回数は,初日14.24回,二日目28.95回,最終日57.01回であった。第21回大会では初日にジュニア個人・団体戦と女子団体戦,二日目に女子個人戦,男子団体戦,最終日に男子個人戦という日程で行われた。この日程での1人あたりの平均試合審判回数は,初日25.04回,二日目43.15回,最終日33.35回であった。<br>ヨーロッパ剣道選手権と同じ3日間の日程で行われた第13回世界剣道選手権大会と国内の2つの大会との比較では,ヨーロッパ剣道選手権のほうが1試合場当たりの審判員数が少なく,平均審判回数も多いという結果が得られ,ヨーロッパでの審判数の不足における審判員の負担の大きさが明らかになった。<br>英国剣道協会では,国内の審判員不足の問題を解決するために,四段以上の昇段審査を受けるものは,筆記試験において審判に関する問題を必ず選択すること,段位受験資格として,公式試合での審判経験を課す,といった制度を導入している。このような例を参考として,今後は,ヨーロッパ剣道連盟と各加盟国双方による審判員の育成への取り組み,これまでの育成法の改善などが重要な課題となる。